「もしも」のときの支えになる公的保障。誰もが頼れると思いきや、人によっては頼れないケースも。頼りになる公的保障と頼りにならない公的保障は何なのか?あまり知られていない「公的保障の現実」をファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに聞きました。
公的保障は主に7つ「もっとも使えるのは…」
公的保障は多岐にわたります。主には、遺族年金、健康保険、傷病手当金、障害年金、雇用保険、介護保険、老齢年金の7つが挙げられます。
聞いたことはあっても、内容を詳しく知らない人は多いのではないでしょうか。
公的保障の詳細を見ると、「誰もが頼れる」保障と、「対象が限定される」保障があります。
保障の充実度合いにも違いがあり、公的保障でもすべてをカバーするわけではありません。
7つの公的保障のうち、対象が幅広くて保障が手厚いのは「遺族年金」と「健康保険」でしょう。
遺族年金は、公的年金の加入者が亡くなった際、生計をともにしていた遺族の生活を支えるために支給される年金です。
亡くなった人が国民年金加入者なら遺族基礎年金、厚生年金加入者なら遺族厚生年金の受給対象となります。
遺族基礎年金を受け取れるのは、子どもがいる配偶者とその子ども。支給額は子どもの数によって変わり、原則として子どもが18歳を迎える年度末までが受給期間となります。
一方の遺族厚生年金は子どもがいない配偶者も受給できます。支給額は本来、支給される厚生年金の4分の3相当。受給期間は対象者の年齢や子どもの有無などで変わってきます。
次に健康保険。会社員の場合は健康保険(会社の組合保険や協会けんぽなど)、自営業者などの場合は国民健康保険に加入し、病気やケガなどの治療にかかる医療費の自己負担額は3割で済みます(満69歳まで)。
加えて、公的医療保険の高額療養費制度もあります。ひと月にかかる医療費が一定の金額を超えた場合、超えた金額分が支給される制度です。
自営業者、フリーランスは不利なのか?
その他の公的保障はどうか。ひとつずつ見ていきましょう。
まず「傷病手当金」は健康保険に加入する会社員を前提とし、病気やケガなどで仕事を休んだときの生活を保障する制度です。
給料の約6割が最長1年6か月間にわたって支給されます。しかし、その恩恵を受けられるのは会社員のみ。
自営業者などは病気やケガなどで休んでも一般的には傷病手当金は手にできません。
「障害年金」も病気やケガにからむ生活保障の制度です。こちらは会社員のほか自営業者なども対象となり、生活に支障をきたす場合、厚生年金加入者は障害厚生年金、国民年金加入者は障害基礎年金を受け取れます。
ただ、該当要件となる“障害の程度”は相当重いレベルとなるため、受給するハードルは高いと思ったほうがいいでしょう。
病気やケガなどに関係なく、会社員の生活を守ってくれるのが「雇用保険」。企業の倒産やリストラなどで職を失ったら基本手当(失業手当)、会社で働いているときには育児休業給付金や介護休業給付金などを雇用保険で受けられます。
会社員に限らず、パートやアルバイトでも要件を満たせば雇用保険に加入できますが、自営業者は基本的にその恩恵を受けられません。
そして「介護保険」は高齢者などの介護を保障する制度。健康保険、国民健康保険加入者それぞれ40歳から保険料を納めます。
原則65歳から利用開始となり、要介護などの認定を受けたら、かかる費用の一部が給付される仕組みです。
手厚いサービスですが、要介護度が進むと公的な介護保険の費用だけでは賄えないことも少なくありません。
一方で近年、介護保険の利用者の増加に伴い、保険料の徴収を40歳以上から30歳以上へ引き下げる議論が起きていて、財源が不安視されています。