「生理=人前で話してはいけないこと」ではない
—— 男性の生理への価値観を変えていくために、どんなアクションを起こしましたか?
元田さん:
まずはひたすら、生理について男性の友達や知人に話すということを始めました。「生理って知っているか?ただ血が出るだけじゃないんだよ」と。
その反応は大変鈍いものでした。そもそも男性の興味のなさはつきまとっていて、そんなときにボードゲームを使って子どもたちに勉強を教えている方に出会ったんです。
ボードゲームはロジカルシンキングの練習に使えると言われ、「生理の悩みもボードゲームを使って体験するのはどうか?」とアイデアが生まれて。試行錯誤しながら完成させたのが「つくよみゲーム」です。
—— とても斬新な試みですね。ゲームなら男性も興味を持ち、入りやすいのではないでしょうか?
元田さん:
本来、男性が生理を知るのに適している時期は子どものときです。性教育では一般的に3歳のときから生理について教えて、伝えていくことが理想的だといわれています。
今の日本は家庭でも学校でもそれができていない。だからこそ、大人の男性には「きっかけ」が必要です。
そのきっかけに、「つくよみゲーム」がなればいいという思いで活動を続けています。
—— 「つくよみゲーム」で、どのように生理が理解できるかが知りたいです。
元田さん:
女性には平均28日間の月経周期というものがありますよね。私は、ホルモンの影響で女性の心と体の状態が変わっていくリズムを学び、まるで季節みたいだなと思いました。
女性は1か月で4回季節が変わるんだ、と。そこで実生活で、4つの時期に合わせてパートナーとの過ごし方を変えてみました。
「生理中」「生理明け」「排卵日前後」「生理前」というサイクルなのですが、「生理中」はキャンプや運動は避けました。
サイクルに合わせて、経験を一緒にする。この「一緒にする」ということが大切です。
とにかくパートナーの心と体に合わせて、一緒にどう行動するか、デートはどうすればいいかも考えました。そして「これをゲームに落とし込もう」と思ったんです。
—— 月経周期に合わせて、デートプランを考えるというゲームですね?
元田さん:
男女2対2の4人がやりやすいゲームですが、女性3人と男性1人でもいいし、全員が男性でもいいんです。
例えば女性が彼氏役をすると、「自分がこうしてほしい」という目線での回答ができますよね。
男性が彼女役をすれば、自分ごととしてとらえることもできる。そういう疑似体験を男性にしてもらうのが目的です。
—— 男性も女性も、相手の気持ちを考えられるゲームになっていますね。実際にワークショップなどで体験した人からはどんな声が届いていますか?
元田さん:
男性からは、「生理は知っていたが、1か月でここまで女性の心と体に変化があるとは知らなかった」という声が多いですね。
生理のことが理解できるようになると、パートナーにとって「特別な存在」になれると思います。
男性に言いたいのは知識があるだけではダメで、知識を生かしてふだんの生活で「寄り添う」ことが大切なんです。
生理の知識をデートプランに落とし込むことができるようになったら、パートナーとの関係性が変わります。ハッピーな信頼関係を築けるはずです。
PROFILE 元田享兵さん
月経ジェントル研究所所長。女性の「月」経を理解し、先を「読」み行動できる紳士を増やしたいという思いから、生理学習ボードゲーム「つくよみゲーム」を考案・製品化。ワークショップやセミナー活動を精力的に行う。
取材・文/高田愛子 画像提供/元田享兵