生理について考えるのは女性だけ。なんとなくそんな考え方がいまの日本では定着しています。しかし、男性が生理について学ぶのは恥ずかしいことではありません。なぜ男性は生理に対して疎いのか、夫として、父親として、職場の仲間として、最低限知っておくべき生理の知識について、医師の上原桃子さんに話を聞きました。
「ピル飲めば?」心許ないひと言を言わないために
—— 男性が生理に対してイマイチ踏み込めないのは、日本の性教育の遅れが関係しているような気がするのですが、いかがでしょうか?
上原さん:
日本には、「性教育=生々しくて隠すもの」というイメージがありますよね。
いやらしいもの、恥ずかしいものというふうに捉えてしまう人も多いのが現状です。オープンな話題ではなく、隠すべきものという風潮が根づいているのかなと思います。
現在の義務教育における性教育は、妊娠・出産の経過について表面的にしか取り扱わない方針になっているようです。
実生活でも、「お父さん、子どもはどうしてできるの?」と聞かれたときに、どう答えていいか分からないケースはありますよね。その部分の話を包み隠そうとすると、性教育ができなくなってしまいます。
それに伴って、生理についても深くは勉強していません。小・中学生の頃に生理の話をするのは難しい部分もあるので、それが日本の性教育の現状かなと思います。
—— 教育を受けずに大人になる男性がほとんどということですね。そういった環境の中で、男性が「最低限知っておくべきこと」はありますか?
上原さん:
はい。「大人になった男性がどう生理と向き合うか」ということですが、まず生理や妊娠についての事実を知ること。
生理を学ぶことは恥ずかしいことではない、というスタンスでいてほしいと思っています。
生理は女性ホルモンの変化に伴って起こることであって、女性の体を維持するのにとても大切です。
期間もきっちり「何日ごと」に来るわけではなくて、体調などで簡単にずれてしまうこともあります。
そうすると、思いがけなくイライラすることもあって、女性側もコントロールができないことを知っておいてほしいですね。
さいわい生理を軽くしたりコントロールするための選択肢として、ピルがあります。
ピルは経口避妊薬というイメージが強いですが、月経痛やPMSの改善、生理日の移動など女性の生活の質を向上させる役割もあります。
ただ、「じゃあ、飲めばいい」ということではありません。ピルは現在、購入するのに処方箋が必要ですから、市販薬のようにドラッグストアで気軽に買えるものではありません。
また、スケジュールを決めて毎日飲む必要がありますし、副作用として血栓症のリスクもあります。
単に飲めばいい、それでラクになるわけではないということは、おさえておいてほしいかなと思います。
もう一つ重要なのは、生理中は妊娠しないわけではないということですね。勘違いしていらっしゃる男性が多くいる印象です。
また、生理中は子宮の中の膜が剥がれていく状態で、いつもより感染に弱いです。
性生活はお互いの同意があれば大丈夫なのですが、菌などに感染しやすい状態であることは、男女ともに気をつけていただきたいと思います。