「それはあかん」と注意された唯一の口癖

── 自分の「正解」や「正しさ」を相手に押しつけない。パートナーシップにおいては大切なことかもしれません。

 

三本さん:

あ、でも数年前に一回だけ、夫にすごい注意されたことがあるんですよ。

 

私が子どもを怒るときに「なんでこんなことするの?普通はこうやろ」って口癖みたいに言っていたら、夫が「『普通』はこうやろ、っていう言い方は使ったらあかん。口癖になっているから危険やぞ」ときっぱり言ってきたんです。

 

言われてみればそのとおりで、「普通」って自分にとっての「普通」でしかないじゃないですか。自分はこだわりがない人間だと思っていたけど、自分の「普通」を無意識のうちに子どもに押しつけていたんやな、と気づいてゾッとしましたね。あれはすごく反省しました。

 

他にもここぞというときには注意をしてくれるし、いつも本当にありがたいと思っています。

夫の発言に感謝することも

子どもたちに願うことは「楽に生きてほしい」

── 「こだわりがない」夫婦として、3人の子どもたちに何か望むことはありますか。

 

三本さん:

「ちょっとでも楽に生きてほしいね」という話は夫婦でよくしています。生きていくうえではしんどいこともいっぱいあるじゃないですか。

 

長女のケイなんかは私に似てネガティブ思考というか、最悪の場合をめっちゃ考える子なんですよ。だから大変なことも多いかもしれないけど、それぞれがどんな形でもいいから、とにかくちょっとでも楽に生きてほしい。それが叶うなら、子どもたちがどんな道に進もうが、どんな学校に行こうが、どんな職業に就こうが、口出しをするつもりはないです。

 

あとは、私自身が好きなことをずっとやって生きてきたので、好きなことを早めに見つけてやってくれたらなっていうぐらいですね。

 

── 「自分とは同じ失敗をしてほしくない」という思いから、つい安全な道へ誘導したくなる親心もあるかと思いますが、三本家は「見守る」方針なんですね。 

 

三本さん: 

誘導したくなる気持ちも、もちろんわかるんです。子どもが悩んでいる姿をはたから見ていると「しょうもないことで悩んでるな〜」と思っちゃうし、口も出したくなるんですが、でもそれは本人にとっては今、自分で乗り越えるべきところだと思うので。

 

夫が黙って見守っているタイプなので、私もなんとか口は出さんとこうってすごく抑えているつもりです。それでも「うるさい」って言われますけど(笑)。

子育てマンガを描く葛藤もある

── シリーズ最新刊『ご成長ありがとうございます おとしごろ編』では長女ケイさんが小学校を卒業するエピソードも収録されています。子どもたちの成長をどこまで描き続けられるか、という問題もあるかと思いますが、今の時点ではどう考えていますか。

 

三本さん:

今のところは子どもたちに許可を取って描いていますが、「もう描かんといて」と子どもら本人が言うようになったら潔くそこでやめるつもりです。

 

やっぱりマンガのなかでは、どうしても子どもたちの珍発言や失敗談が多くなっちゃうんですが、親としては子どもたちのいい部分や褒めたいところを描いてあげたい気持ちもある。でも、読者の皆さんが私のマンガに求めるのはそこじゃない、ということもわかっているので…そこは難しいですね。

 

── いつか三本さんの描くフィクションも読んでみたいです。

 

三本さん:

ありがとうございます。いつかはフィクションを描いてみたいな、という欲もすごくあります。とはいえ、今の私の狭いキャパでは2作品を並行連載するようなことは絶対無理なので、今はまだ頭のなかで「こんな話を描きたいな」と妄想しているだけですが…。でもいつか描けたら嬉しいですね。

 

PROFILE 三本阪奈さん

関西在住、3児の母。2019年1月より5人家族の日々を描いたコミックエッセイをInstagramに投稿、たちまち大人気になり『ご成長ありがとうございます~三本家ダイアリー〜』として単行本化される。最新作はシリーズ第4弾『ご成長ありがとうございます おとしごろ編』。 

取材・文/阿部花恵