「子どもって、とにかく面白いことを言ったりしたりするじゃないですか。それを写真や動画じゃなくて、マンガみたいにノートに描いてみたら旦那がすごく面白がってくれて」

 

そんなきっかけで描き始めた子育て記録がSNS上で「笑える」と評判となり、単行本化されて大ヒットに。

 

「マンガ家を目指したことは一度もなかった」専業主婦だった三本阪奈さんは、どのようにしてインスタフォロワー数49万人のマンガ家に転身できたのでしょうか。

 

長女ケイさん(中1)、次女フミさん(小4)、長男ユキさん(年長)と夫婦の5人家族の日常を笑いたっぷりに描く『ご成長ありがとうございます』の作者である三本さんに、マンガ家デビューまでの道のりについてお聞きしました。

「ちびまる子ちゃん」好きを隠していた

── そもそもインスタグラムで子育てマンガを投稿しようと思ったきっかけは何だったのでしょう。 

 

三本さん:

以前から子育てのことを日記に書いているんですが、ふと「文字だけじゃ読み返さないかも」と思ってイラストもちょっと描いてみるようになったんですよ。

 

最初は棒人間にフキダシをつける、みたいなレベルだったんですけど、私の日記には一切興味を示さなかった旦那が、マンガ風にした途端、ちょいちょいノートを覗いてきて「面白いな」と言うようになったんですね。

 

それで実家の親や親戚にも見せるようになったら「めっちゃ面白い」と言ってもらえたので、調子に乗って下手な絵のままインスタに投稿しはじめました。

育児を綴っていた当時のノート

そのうちにありがたいことにインスタを見たいくつかの出版社さんから「連載しませんか」と声をかけていただいて、本が出て、いつの間にかお仕事になって…という流れです。運が良かったな、と思っています。

個性的な言動が多い次女のフミさん

── 過去にマンガ家志望だった、というわけでもなく?

 

三本さん:

ないです。幼稚園のときから『りぼん』を読んで、『りぼん』で字を覚えたといっても過言ではないくらいマンガが好きでしたが、ずっと読む専門でした。

 

その頃は『星の瞳のシルエット』や『ときめきトゥナイト』が大人気で周囲の子はみんなそっちに夢中でしたが、私はとにかく『ちびまる子ちゃん』が大好きで。『りぼん』を買ったら真っ先に目次で探し出して『ちびまる子ちゃん』を読んでいました。

 

でも周りに合わせて自分を隠す暗い子だったので、「どのマンガが好き?」と聞かれたときは「『星の瞳のシルエット』だよ」と答えていました(笑)。本当はずっと何も考えずに読めるギャグマンガ的なものが大好きだったのですが。

 

── 自分でストーリーマンガを描いてみようとは思わなかった?

 

三本さん:

模写したりイラストを描いたりするくらいはしていましたが、ちょっと得意だったかも、くらいの感じでストーリーのようなものは描いていませんでした。

 

でも子どもの面白い言動を自分なりにイラストで描くようになって、4コマ形式にしてみたらすごく楽しくなってきたんですよ。1、2、3コマ目まで来て「あ、ここちょっとモタッとしたな、このコマは要らんからこっちに変えよう」という流れを考えて、スカーンってオチたときってすごく快感なんですね。「これどや!」みたいな(笑)。

 

さらにそれを家族が「めっちゃ面白い」と言ってくれて、その繰り返しでマンガを描くことに目覚めていった…感じです。マンガを描く上で大事な起承転結や構成の力は、家族の4コマを描き続けたおかげで鍛えられたのかもしれません。