映画『それいけ!アンパンマン ドロリンとバケ~るカーニバル』(公開中)に登場する変身が苦手なオバケの男の子・ドロリンは、アンパンマンとの出会いにより、頑張る原動力に変化が生まれます。ドロリンの声を演じた北川景子さんの「仕事を頑張る」原動力とは?
若い頃は仕事がないことが一番つらかった
── 若い頃は、オーディションを勝ち抜くために自分を大きく見せていたとのことですが…。例えば、苦手なことを苦手と言わずにオーディションに無事合格となったとき、その苦手はどう乗り越えたのでしょうか?
北川さん:
若さなのか、怖いと感じることもなくて(笑)。それこそバイタリティーがあったような気がします。まずは受かるためにできることをしよう、それで受かれば「受かったもん勝ち!」と思っていました。
実際に現場に入って、できないことや苦手なことがあっても、平気な顔をしていた気がしますが、見抜かれていたとは思います。
だけどそこに怖さを感じることはありませんでした。できないのにできるフリをする、そのこと自体はそんなに苦しくなくて、仕事がないことが一番つらかった。
現場に行けること、自分が行く現場がある、そのこと自体がうれしい、そんな時期でした。
ガッツというのかな、怖いものも、捨てるものも何もない。だって、まだ何も持っていないから。そういう考え方って、やっぱり若さですよね(笑)。
中堅のプレッシャーと後進への想い
── 周りから中堅と言われるようになった今はどうでしょう。
北川さん:
周りの見る目は変わってきますよね。「キャリア、おありだから」みたいな(笑)。キャリアを重ね、中堅と言われるようになってからの「できるよね?」「できるでしょ?」は、かなりしんどかった気がします。
だんだん「知らない」とは言えないという気持ちになってしまい…。30歳くらいのときに、この世界にかれこれ13年もいることに改めて気づいて、びっくりしたこともありました。と同時に、後進の指導をやってもいい年齢なんだなと思うようにもなりました。
「自分を責めるのが嫌だから」先のことは考えすぎない
── 北川さんは「30代はこうしたい」「何歳までにこうありたい」など目標を立てるタイプですか?
北川さん:
すごく先のことはあまり考えすぎないようにしています。
この仕事は特殊で、来年仕事があるか分からない世界。だから10年後どうなりたいと訊かれたら、「仕事があればいいな」とは思います。
だから私は、まず今年1年を頑張るとか、目の前にある作品を頑張ろうと考えています。
ひとつひとつ作品を積み重ねていくなかで、結果として19年この世界でやってきて、「仕事があるだけでいいや」という考え方が芽生えた気がしています。
売れている人は寝る時間もない、そんな時代で育ってきたので、若い頃は3日休みがあると「やばい」という思考になっていました。
私が休んでいる3日間、作品が入っていなかったり、仕事がない時期に、何かやらなきゃと焦ることもありました。あの頃は、結婚や子どもについても全く考えたことがなかったです。ただひとつ、プライベートでいうと、「大学だけは出てほしい」という両親の希望だけは計画的に頑張りました。
4年で卒業すると決め、かなり頑張っていましたが、当時から「先のことを考えすぎてもなるようにしかならない」という考えは持っていた気がします。今日、今、与えられていることを頑張ろうと思うのは、公私ともに通じる私の考え方かもしれません。
── 考え方のベースはあまり変わっていない?
北川さん:
そうですね。考えすぎてもしょうがない、という考え方はずっと変わらないです。
もちろん、先のことを考えたりもしますが、目標を立ててしまったら、そうなっていない自分に悔しくなってしまいそうで。「こうしているはずだったのに」と、目標に届いていない、夢が叶っていないことに悔しくなったり、悲しくなって思い詰めちゃうと思うんです。
自分で設定したルールで自分を責めるのは嫌だなと思ってからは、「なるようになる」という考え方が強くなった気がします。