大人が抱えやすいモヤモヤについて、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺いました。今回は、発達障がいのグレーゾーンと判明した息子の療育について、夫や両親の理解を得られないと悩む女性の相談にお答えします。
【Q】 子どもが療育に通うことに賛成してもらえない
周りの子と多少の違いや育てにくさを抱えながら長男の育児をしてきました。念のため病院で診てもらったところ、発達障がいの確定診断はつかないものの、多少なりとも特性を持っている、いわゆる「グレーゾーン」であることが判明しました。
必要ならば療育に通うことができるそうです。私は担当医の話を聞いて、子どもが社会で生きていくために療育に通わせたほうがいいと考えています。しかし、夫や両方の両親に相談すると、「療育に行く必要はない」と、誰も向き合ってくれません。どうしたらよいでしょうか?
将来を見据えて子ども目線で考えてみる
私はこの質問を拝見して、まず、「受診」という一歩を踏み出したご相談者さんが素晴らしいと思いました。お子さんに代わって私から「お母さん、ありがとう」とお礼を伝えたいくらいです。病院にかかるまでにも、相談者さん自身、さまざまな葛藤を抱えたのではないでしょうか。その行動に自信をもっていただきたいです。
実はこの一歩を踏み出せない人が多いんです。ご相談者さんのように、周囲に相談すると「気のせい」と言われてしまったり、初めての育児で何が正しいのかよくわからなかったり、さまざまな理由で病院に連れていくことをためらう親御さんも少なくありません。
相談者さんはこれまでも「育てにくさ」を抱えていたとのこと。私は臨床心理士として、ずっと「その育てにくさは放置しないでほしい」と、一歩を踏み出す勇気の重要性について発信してきました。
発達障がいの特性を「個性」ととらえる世の中の風潮がありますが、「個性」と片づけて、療育(障がいを持つ子どもへの支援等)につながらないまま成長すると、結局子ども自身が困る可能性があります。
療育は基本的に一人ひとりの特性をアセスメント(評価・分析)した上で、必要なスキルを獲得するためにおこなうものです。療育施設との相性の問題はありますが、通ってよかった感じる方が圧倒的に多いようです。
療育では、コミュニケーションの取り方やソーシャルスキルなどを学びます。療育で学ぶことで、将来、人間関係のトラブルを回避できる力がつくかもしれません。
人間関係で辛い経験をすると、そこからトラウマやうつ、適応障がいといった二次障がいにつながるケースもあります。そうならないためにも、療育とつながることは、とても大事ではないでしょうか。