親は我が子を探究し、先生とも連携を

前置きが長くなりましたが、ご相談者様が悩んでおられる自主学習も、難易度の高い新たな取り組みのひとつです。小学校低学年の子がいきなり自主的に学習できるわけがありません。

 

そもそも、どんな子もいきなり興味が生まれることはありません。たくさんのものに出合うなかで「これが好き」というものを発見するのです。そのためには、大人がいろいろなものと出合わせてあげなければいけません。

 

だから親御さんに今求められているのは、まずはお子さんが「これが好き」と思えるものを見つけるためのお手伝いをすること。

 

たとえば図書館に一緒に行っていろんな本のタイトルを見る、テレビや動画で子どもが何か興味を示したときに「そういえばこれは知ってる?」と関連する知識を渡すなど、学びを生み出すきっかけを見つけてあげることが大事になります。

 

そしてお子さんが興味関心を見つけたら、調べ方を教えてあげましょう。たとえばお子さんが鳥に興味があったなら、図書館や本屋で専門書のコーナーなど大人向けの棚も見せてあげてください。特定の鳥に関する本や環境問題につながる本などを通じて、さまざまな研究対象の存在を知ることができると思います。

 

そして、お子さんが実際に図鑑などで調べものを始めたら「なんで鳥のくちばしは長いんだろうね」など問いかけて問題発見の入り口をつくってあげましょう。探究の学びで重要なのは、子どもの心がどう動いているか、親が興味を持つこと。つまり、「我が子を探究する」ことなんですね。ぜひお子さんの興味関心のあるものについて一緒に不思議がり、楽しんであげてください。

 

親御さんがスマホでもっと詳しい情報を探して「こんなことが判明しているみたいだよ」と見せてあげたり、「キーワード×書籍」で検索したり、調べる手段がいろいろあることを教えてあげるのもいいですね。

 

このように大人のサポートを得ながらお子さんが興味関心を見つけて探究の手段を理解した結果、30分を超える学びになるのが、本来の自主学習の在り方です。「30分やらせよう」という発想から始まるのは間違いです。

 

また、できれば担任の先生と個人面談の機会を設けていただきたいです。自主的な学びを仕掛けるために、先生側ではどう動機づけをし、家では何をするとうまくいくのか、チームミーティングのつもりで打ち合わせるのです。

 

昔は問題集などのタスクを子どもたちに与えればよかったので、ある意味大人は楽でしたが、主体的な学びはそれを引き出すための技術が大人側に求められます。ぜひ学校の先生も保護者も学びをアップデートし、連携を取っていっていただきたいなと思っています。

 

PROFILE 小川大介さん

教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。

取材・構成/佐藤ちひろ