近年、「自主学習」を導入する学校が増えていますが、残念ながらお子さんがみずから学習に取り組む様子が見られず、頭を抱える親御さんも少なくないようです。教育家・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生が、その背景や取り組むべきことについて語ってくださいました。

【Q】宿題の自主学習って何をやらせたらいい?

小学2年生から宿題に「自主学習」がでるようになりました。何をやったらいいのか子どもはまったくわかっておらず、やったとしても10分で終わってしまう計算問題ばかりをやっています。

 

「30分はやらせるように」と学校から言われていますが、正直無理です。小学2年生が30分取り組むことができる自主学習はどのようなものをやればいいのでしょうか。学年が上がるにつれて、自主学習の時間も増えると思うと頭が痛いです。

大人たちが「主体的な学び」について勉強しなければいけない

今、ご相談者様のお子さんの学校だけでなく、自主学習を推進する学校は多いですね。なぜなら、新しい学習指導要領が「探究」の学びを大事にする方針へと変わっているからです。

 

だから学校も、与えられたものを覚えてこなす力ではなく、主体的に学ぶ意欲や力を育てていきたいと考え、その手段として自主学習を宿題としても出しがちなのです。

 

学校や担任の先生の期待としては、自主学習を課すことによって子どもたちが興味関心を発見し、その事柄について調べたり問題を解いてみたり、みずから学びを深めていって欲しいという思いがあるのでしょう。

 

しかし、ただ単に「自主学習」という名の宿題を出すだけというのは、教育手法としては全くナンセンスです。子どもたちの能動的な学びを誘発していくには、さまざまに必要な要素があるからです。残念ながら、そうした必要要素を理解できている学校の先生はまだまだ少数派ですから、自主学習を探究的な学びにつなげられている学校は非常に少ないというのが現実です。

教育委員会から自主学習について報告を求められている学校では、自主学習ノートを提出させるだけの形式的な「なんちゃって自主学習」に陥ってしまっているところも少なくないようです。

 

これでは勉強嫌いの子が増えるでしょうし、自主的な学習が起こらないのも無理はありません。保護者もよくわからないからといって「調べたことを写せばいい」なんてアドバイスをしていると、「勉強はコピぺでいい」と考える子も増えかねません。

 

つまり、うまくいかないのは子どものせいではなく大人側の問題なのです。先生も保護者も主体的な学びについて勉強不足であり、私は社会問題とさえ思っています。

 

前述のように教育現場にも問題はありますが、新しい学習指導要領に基づいた教育は、学校のなかだけでどうにかなる内容ではありません。国が推進している今の教育改革は、家庭における「学びの関わりの変革」も迫っているのだということを、親御さんたちも自覚していただきたいと思います。

 

確かに今の親御さんは大変です。夫婦共に仕事が忙しく、子どもに関わる時間もままならないというご家庭がむしろ普通。しかも昔と比べて今の小学生に要求されている学習の難易度は格段に上がっており、ご相談者様のように悩んでいる親御さんは非常に多いですね。しかし、今の学習指導要領が主体的な学びを求めている(これは、社会の変化からの国民的な要請があった結果です)以上、なんとかして大人たちが学びへの寄り添い方を勉強し、変えていくしかありません。

 

だから親御さんも、何でも学校や先生まかせにするのではなく、先生と一緒に連携し、チャレンジしていくような気持ちで子どもの学びに関わっていく意識を持ちたいですね。