ボタンを押す子どもの姿がヒントに
—— 工場見学をスタートしたのはいつからですか?
大森さん:
2018年からです。最初は今とは内容が異なっていて、まだ「1000のボタン」はありませんでした。工場で職人がモノづくりをしているところと、過去の納入実績がある展示エリアを見学できるだけでした。
ただ、納入製品の展示エリアには、昔懐かしのボタンから近代的な洗練されたボタンまでさまざまなボタンがたくさん展示されているのですが、そこを通ると、子どもたちが嬉々としてボタンを押し始めるんです。
どうしてなのかはわかりませんが、エレベーターのボタンをはじめ、バスの停止ボタンも横断歩道のボタンも、なぜか押したくなります。でも、むやみやたらと押すものではありません。
大人たちに「押してはダメ!」と言われているお子さんも多いと思います。ふだん押してはダメと言われているエレベータボタンを、自由に押しまくれるというのが子どもたちには楽しかったのではないでしょうか。
—— そこからいま話題の「1000のボタン」のアイデアを得たのですか?
大森さん:
そうです。見学に来てくださる人たちは、ボタンを押すことにとても喜びを感じていました。こんなに喜んでくれるなら弊社にしかできないことをやってみようと、2020年9月に壁一面にボタンをずらりと並べた「1000のボタン」コーナーをつくり、工場見学の内容を一部リニューアルしました。
話題になったのはTwitterがきっかけです。弊社のTwitterに、工場見学でお子さんが押してくれた「1000のボタン」の写真をアップ。子どもが手の届く範囲なので、ちょうど下半分の約500個のボタンをきれいに押した写真でした。瞬く間に約20万件のいいねがついて、工場見学のお問い合わせが一気に増えました。
—— 工場見学だけでなく、現在はグッズやアプリもバズっていますね。
大森さん:
カプセルトイのエレベーターボタンのキーホルダーやマグネットを作ったところ、非常に人気がでました。カプセルトイはオフィスの入り口にあります。工場見学に来たついでではなく、わざわざ会社まで買いに来てくださる方もいます。現在は、通販でも買うこともできるようになっており、遠方のお客様からもご好評をいただいています。
スマホアプリ「レッツ・エレベーター」は、実は、ボタン好きのお子さんの保護者の方が「ぜひ作りたい」とプレゼンしてくださって実現しました。
アプリ製作もその方にお願いしました。アプリのなかには、「1000のボタン」を押す体験ができるコンテンツがあります。ボタンを押したくなったらいつでも、どこでも、時間が許す限り楽しめますので、ぜひ試してみてください。
取材・文/酒井明子