今を生きる子どもにたくさんの「経験」を

—— 同じような障害を持つ保護者から、相談を受けることもありますか?

 

リトさん:

僕のSNSをフォローしてくださる方のなかには、発達障害のお子さんを育てていらっしゃる方も多いのですが、大多数の方が発達障害について知ろうと努力されていて、本当に頭が下がります。

 

SNSや展示会での出会いなどを通して「子どもをどう育てたらよいかわからない」という悩みを相談されたり、「リトさんの活動を見て希望を持てた」などのコメントをいただくことがあります。子どもの将来に不安を抱いている保護者の方も多く、僕自身は自分の障害を公表することで、なにか力になればと思っています。

「いつでも君のそばにいる」(『いつでも君のそばにいる』(講談社))
「いつでも君のそばにいる」『いつでも君のそばにいる』(講談社)

—— 改めて同じ障害を持つ保護者の方に、アドバイスがあればお願いします。

 

リトさん:

発達障害とひと言で言っても、社会との壁(=障害)があるかどうかは環境に大きく左右されます。

 

例えば僕の場合は、接客業のなかでは大きな壁を感じていましたが、葉っぱ切り絵のアーティストになってからは壁を感じることなく生きています。環境次第で、障害が障害ではなくなると肌身を持って感じました。

「今夜はお月見」(『いつでも君のそばにいる』(講談社))
「今夜はお月見」『いつでも君のそばにいる』(講談社)

発達障害の特性のひとつと言われている過度な集中力や強いこだわり、多動性などは「弱み」と捉えられがちですが、これは、捉え方やその子がいる場所を変えれば「強み」にもなり得ます。

 

お子さんに尖ったところや夢中になれることがあるならば、きっといつかそれが「強み」になるはず。開花を待って希望を持って育てることも大切だと思います。

どのような体験が将来に繋がるかわかりません。僕自身も、友達との遊びやゲーム、読書、両親に連れていってもらった場所の思い出など、さまざまな体験が今の作品のアイデアに繋がっています。まずは今、子どもが楽しいと思う経験を大切にしてほしいです。

 

PROFILE リト@葉っぱ切り絵

リト@葉っぱ切り絵

葉っぱ切り絵アーティスト。1986年生まれ。神奈川県出身。自身のADHDによる偏った集中力やこだわりを前向きに生かすために、2020 年より独学で制作をスタート。国内メディアから、米国、英国、イタリア、フランス、ドイツ、ロシア、イラン、タイ、インド、台湾など、世界各国のネットメディアでも、驚きをもって取り上げられる。8月に新刊『葉っぱ切り絵絵本 素敵な空が見えるよ、明日もきっと』が発売予定。

『葉っぱ切り絵絵本 素敵な空が見えるよ、明日もきっと』

取材・文/酒井明子​ 撮影/キムラミハル