日本だけでなく、世界でも話題の葉っぱ切り絵アーティスト・リトさん。自身が発達障害(ADHD)であることを公表しながら、活動を続けています。「アーティスト活動を始めたのは、発達障害であることを知ったのがきっかけ」とリトさん。葉っぱ切り絵を始めるまでの経緯を伺いました。

 二度の転職も「上司の期待に応えられない」

—— 現在、アーティストとしてどのような活動をされているのですか?

 

リトさん:

葉っぱを使った切り絵作品を制作しています。ほぼ毎日、InstagramやTwitterなどのSNSにつくった作品をアップしています。

 

ありがたいことにテレビでもたびたび取り上げていただき、昨年は作品の書籍を2冊上梓し、8月には3冊目が出ます。東京をはじめ、横浜や京都、大阪、福岡、沖縄や北海道でも展示会も行い、多くの方に足を運んでいただいています。

葉っぱ切り絵アーティストのリトさん
葉っぱ切り絵アーティストのリトさん

—— そもそも、なぜ「葉っぱ切り絵アーティスト」になったのですか?

 

リトさん:

僕自身の発達障害(ADHD)に気づいたことが、この道に入るきっかけとなりました。もともとは社会人になってから、要領の悪さや周りとの足並みの合わなさから、さまざまな挫折を感じていました。

 

どん底のなか、会社を辞め、発達障害についてみんなに知ってもらいたいとツイッターで発信するように。そのなかで、発達障害の特性のひとつつである過集中を生かすために「葉っぱ切り絵」というアート活動を始めました。

 

—— 発達障害とわかったのはいつですか?

 

リトさん:

診断されたのは、社会人になってからです。社会人として8年以上働いてから、診断を受けました。

多くの反響を呼んだ初期作品「葉っぱのアクアリウム」(『いつでも君のそばにいる』(講談社))
多くの反響を呼んだ初期作品「葉っぱのアクアリウム」『いつでも君のそばにいる』(講談社)

—— 発達障害と診断を受けるまでの経緯を教えてください。

 

リトさん:

大学卒業後に、学生時代からアルバイトをしていたチェーン店の寿司屋に就職しました。アルバイト時代は呼びこみや値札貼り、レジなどの単純な作業がメインでした。

 

しかし社員になってからは仕事の幅が増え、販売、接客、寿司づくりに加え、まわりの人に指示を出す立場に。そうやって働いていると、ひとつのことに集中するあまり、自分がまわりに合わせることができない、みんながうまくやっていることがどうしてもできない、指示を出そうとしてもわからないということが増えたんです。

 

つまずいてしまうと、いつまでたってもそこから抜け出すことができませんでした。

「緑の上の砂漠」(『いつでも君のそばにいる』(講談社))
「緑の上の砂漠」『いつでも君のそばにいる』(講談社)

—— そこではどれくらい働いたのですか?

 

リトさん:

7年間働いて辞めました。接客業が向いていないのかもしれないと思い、2社目はダンボールの製造工場へ。そこもあまり自分には向いておらず、その後に、飲食店でのキャリアを認めてもらえて、店長候補として和菓子製造会社に就職しました。

 

しかし、店長候補として採用されたものの、上司にやるべき業務を一生懸命教えてもらっても期待に応えられない日々が続きました。怒られて自分なりに努力をするものの、解決できない…のループで、どうしたらいいかわかりませんでした。

 

そんなときに、他にも自分と同じ悩みを抱えている人がいるはずだ、と思い立ち、解決方法をインターネットで調べるうちに、「発達障害」という言葉に出会ったんです。

 

—— そこで初めて発達障害のことを知ったんですね。

 

リトさん:

そうです。インターネット上で発達障害かどうかを診断するチェックテストをしたら、すべての項目に自分が当てはまりました。それで病院に行き、初めてきちんとした診断を受けたんです。