医療を受けたとき以外で給付されることも

今述べたように、医療とは関係のなさそうなサービスも、健康保険で受けることができます。これらも実はまったく医療と関係ないわけではなく、「健康を増進させる」という目的があるのです。例えば、保養所などの利用は施設を利用することで、ウォーキングやハイキングなどをする機会になります。

 

このように、私たちが普段から利用している健康保険ですが、実際にはさまざまな役割を果たしています。

 

一番身近な例だと、健康保険証を提示して医療機関を受診するケースです。働く皆さんが病院の窓口で600円を支払うとき、実際には2000円相当の医療を受けています。かかる医療費の3割だけを負担して治療を受けられているということですね。

 

さらに、収入によってひと月の医療費の自己負担上限額が定められている「高額療養費制度」もあります。一般的には月9万円程度の自己負担上限額が意識されることが多いですが、勤務先によってはより手厚く(付加給付)、自己負担上限額が月2万円程度に設定されていることもあります。

 

医療行為以外にも、子どもが生まれた場合に支給される「出産育児一時金」。子ども1人42万円として知られていますが、自治体によっては実費で60万円までなど、上乗せされるケースもあります。

 

さらに医療から離れた印象のあるサポートを挙げると、加入者が亡くなった際の「埋葬料」や「葬祭費」などの支給も、健康保険の仕組みの中から行われます。

 

これらの給付やサポートを受けるためには、普段からしっかり保険料を納付していることが大切です。支払う保険料で受けられる保障に目を向けると、お給料から差し引かれる金額への意義も、少し感じやすくなるかもしれません。

 

PROFILE 風呂内亜矢さん

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。「つみたてNISAの教科書(ナツメ社)」など約20冊の書籍のほか、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアで「お金に関する情報」を発信している。YouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」では日常の記録にお金のTipsを交えた動画を更新。

取材・文/酒井明子