「働く女性が多数となり、ワーママは誰かを手本にするのではなく、個々人で働き方を模索する時代に突入した」

 

そう話すのは、キャリアコンサルタントで、自身も二児の母である岩橋ひかりさん。

 

仕事を続けるか辞めるか、転職するか決められない…そんなワーママ迷子を抜け出すための、思考整理術を伺いました。

周りの期待に応えようとしていないか

── 「本当はどうしたいのか」「何を目指すのか」を明確にすることが自分のキャリアと向き合う出発点。ですが「自分が求めているものがわからない」「目の前のことをこなすのに必死で先のことなんて考えられない…」という場合もあります。

 

岩橋さん:

「自分の本当の気持ちが分からない」という人は、実は少なくないんです。それを知るにはまず、“思い込みを取り払う”ことから始めましょう。

 

── 思い込みですか?

 

岩橋さん:

私たちは知らず知らずのうちに、親や友人など、たくさんの人たちから「世間の常識」を刷り込まれてきています。

 

そのため、自分自身も“ママだからこうあるべき”“こうでなくてはダメ”という思考にとらわれ、周りの期待にも応えようとしてしまう。そうすることで、本当の気持ちが隠れてしまい、“私には無理…”と思い込んでしまうんですね。

 

それは、「世間の常識であって自分の本心ではない」と気づくことが大切です。

「嫌なこと」から自分のワーママ生活を振り返る

── どうすれば、自分の気持ちに気づくことができますか?

 

岩橋さん:

自分自身と向き合うには、“書く”ことが、効果的です。まずは、「自分にとって嫌なこと」「やりたくないこと」をできるだけたくさん書き出してみましょう

 

── 「やりたいこと」を見つけるのに、「やりたくないこと」を書くのですか?

 

岩橋さん:

最終的には「目指すゴール」や「なりたい自分」について、できるだけ具体的に、解像度を高く言語化できるようになることがとても大切です。ですが、なかなかすぐにできるものではありません。まずは、そのための練習が必要です。

 

「やりたいこと」「理想の自分」について、いきなり書き出すのは、かなりハードルが高い作業。それよりも、自分にとって「嫌なこと」のほうが、すぐに思い浮かびませんか?

 

── 確かに…。あふれるように出てきます(笑)。

 

岩橋さん:

今、自分のことが分からなくなっている人にとっては、ワーママ生活の何が嫌だと感じているのか、自分の気持ちを自覚することにも繋がります。

 

まずは、“身の回りの嫌なこと”を思い浮かべ、どんどん書き出していきましょう。どんなに些細なことでも構いません。

 

例えば「排水口につまった髪の毛を取り除くのが苦痛」とか「いつも自分ばかりトイレットペーパーの芯を補充するのがイラっとする」「子どもが食べこぼすたびに、周りを汚すのが地味にストレス」「上司のあのときのあの言い方がムカついた」など何でも。

 

誰かに伝えたり、どう改善するかということはいったん抜きにして、思いのままに書いていきます。

 

── そんなに身近な不満でいいのですね。

 

岩橋さん:

むしろそのほうが取り掛かりやすいですし、状況も浮かびやすいので解像度高く、言語化しやすいと思います。

 

そうして書き出していくうちに、自分の「モノの見方の傾向」や「思考の癖」に気づいていくんです。

 

「私って、意外とたいしたことのないことで悩んでいるな」とか「上司のあのときの発言は、単に業務上の確認がしたかっただけかも」とか「いつも思いを伝えずに内に秘めてしまうから怒りを溜めてしまうんだな」とか。

 

ゴチャゴチャと混乱した自分の状況を客観視できたり、「こんなに嫌なことが重なっていたら、そりゃつらいよね。頑張ってる、私!」と自分を労われるようになればバッチリです。