現役東大生チームと最強芸能人チームがクイズで勝負するTBSの人気クイズ番組「東大王」。“大将”として東大生チームを率いるのは、“東大医学部のプリンス”とも称される水上颯さんです。チーム最後の砦として、次々と難問に正解する姿には、ただただ驚くばかり。「かっこいい」と憧れる小学生も少なくありません。さらに、“天才”とは思えないほど謙虚な姿勢に好感を持つ人も多いのではないでしょうか。 どんな子ども時代を過ごしたら水上颯さんのような頭脳も性格も素晴らしい人間が作られるのか、子育てのヒントをいただきたく、ご本人にインタビューしました。
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水上颯さんの経歴・子ども時代の過ごし方とは?
―――瞬時に難問を解く姿にはいつも本当に驚かされます。どういう子ども時代を過ごされてきたのか気になります。まずはこれまでの経歴を教えてください。
水上さん:
生まれたのは山梨県で、地元の保育園に通った後、山梨大学附属小学校に入りました。そこは小中一貫校だったんですけど、兄さん姉さんが通っていたので、僕も同じところに行こうかなって。中学卒業後は東京の開成高校に行きました。その後、東京大学理科三類に入学し、現在医学部の6年生です。
―――すごい学歴ですね。東大はもちろんですが、開成高校といえば、全国的にも有名な超難関進学校ですよね。やはり小学生の頃からかなり勉強してたんですか?
水上さん:
いえ、本当に勉強してなかった…ように思います。理由としては、集中力があんまり持たないタイプだったので。短期集中で、細かく時間を区切らないと勉強ができなかったということなんです。長い時間集中して勉強するのは苦手だったし、好きではなかったんですよね。 学校でもそんなに激しく勉強させられることはなかったし、小中一貫校で中学受験もほぼない学校だったので、休み時間はキックベースとかばっかりやって遊んでいました。宿題もおざなりに(笑)。 授業もあまり聴いてなかったです…。小中はとにかく授業中、暇で。ノートは内申点に影響するので一応とっていましたが、授業中は出さなきゃいけないワークなどを4月とか5月のうちに自分で1年分やっちゃってました。最初にワークをやってしまえばもう1年の範囲は大体わかるじゃないですか。例えば中学で習う因数分解なら、最初は「因数分解ってなんだそれ?」ってなるけど、ワークを問いてみたらなんとなくわかる。指を動かしたらだんだんできるようになっていくんです。勉強って、人から聞いて学ぶ楽しみもありますけど、自分でできるようになっていくっていうのも快感なんですよね。
―――1年分のワークを最初にやれてしまうなんて、すごいですね。では、高校受験までは全然苦労しなかったんですか?
水上さん:
苦労しなかったというのはちょっと語弊があります。開成高校を受験する時に困ったのは、学習指導要領の範囲外からも結構出題されること。そういうのを全然やったことがなかったので、どう対応すればいいのかなって。それで地元の書店に行って“ハイレベル高校受験”みたいな本を買ってきて自分でやったりしてみたんですけど、それはなかなかタフだったかなと思います。
東大王・水上颯さんの勉強法とは?
―――ポイントを押さえて自分で学ばれていたんですね。ちなみに、水上さんについても触れられている『東大脳の育て方』という書籍で、東大生にリサーチしたところ、83%がリビングで勉強していたという結果もありますが、水上さんもリビング学習でしたか?
水上さん:
僕の家は父親がテレビ好きで、だいたいリビングではテレビがついていたので、テレビを見ながらパソコンいじりながらゲームをやる、みたいなことはやってましたけど、勉強をするときは没入したいですよね。その環境として、僕にとってリビングは不釣り合いだなと考えていたので。勉強をちゃんとするなら基本的に無音の世界、音がない応接間とかで1人で勉強してました。
―――短時間で集中して勉強されてきたから効率もよかったんでしょうね。今は小学生のうちから熱心に塾通いする子も多くいますが、水上さんは塾に通われていましたか?
水上さん:
週に1回くらいのペースだったと思いますが、塾には行っていました。きっかけは、3つ上の兄が中学生くらいになって行き始めたのでちょっと羨ましくなって。でも勉強した記憶はあんまりなくて(笑)。友達と一緒にいることを楽しんでたって感じです。塾の先生って一般的にはあまり怒らないと思うんですが、友達としゃべって塾講師に怒られるという、なかなかレアな体験をしましたね。 というわけで、小学生の頃は全然勉強やってなかったんで、塾に行っていたというのも“カッコ笑い”みたいな感じです。
水上颯さんの長所って?
―――家とか塾で何時間も勉強するというのではなく、短時間でも必要なことを自ら学ぶことで知識を身につけてこられたんですね。水上さんは読書好きでも知られていますが、読書量も成績に関係していると思いますか?
水上さん:
読書も僕にとってはあくまで暇つぶしでしたけど、それが今、自分のストロングポイントになっているのは否定しません。 本が好きになったのは小学校に入ってからですが、小学校には図書室があるじゃないですか。そこが学校の中で一番静かな場所でしたし、環境として非常に好きだったんです。放課後に図書室に行って本を読むのが日課で、1日2冊借りて帰って家で読むみたいな。読むこと自体が楽しかったので、ジャンル問わず、なんでも読みました。結局、図書室の本は全制覇したので、読む本がなくなっちゃいましたけどね。
―――全制覇ってすごいですね!
水上さん: あとは、家に置いてあったので、図鑑もよく見ていました。例えば外を歩いていて植物とか見たときに、その植物の名前や植生、1年草かどうかなど、そういうことを知っているかどうかで世界の解像度が全然違うと思うんですよね。その解像度を高めるために、これはオオバコだな、これはオオイヌノフグリだなとかっていうのを世界にタグ付けしたかったんです。なので、知らない植物や鳥とかを見つけたら自分の辞典で調べたりしてましたね。 世の中にわからないことが多いと、なんとなくおぼつかなくないですか? まぁわからないことばかりなんですけど、僕の場合はちょっとでも自分の手が届く範囲が広い方が生きやすいというか。世界はせっかく広いので、関わらないともったいないですからね。
―――確かに。昨日と同じ世界でも、知識を得ることで解像度が上がって違う風景が見えてくると思ったら、学ぶ意欲が生まれてきそうですね。図鑑の中でも特に好きなジャンルはあったんですか?
水上さん:
植物の図鑑が好きでしたね。親が使っていたカメラのお古をもらって、植物とか花とか、あとは蝶々とかも撮って、自分なりの図鑑を作ったりもしました。あとは魚も好きでした。山梨に水族館は少なかったんですけど、好きで。今でも年間パスをいくつか持っています。興味が持てないものはすぐに飽きちゃうんですが、昔から凝り性なところがあって。今のクイズなんか、その最たるものだと思っています。
「東大王」では、かなりマニアックな問題や幅広いジャンルの問題もいとも簡単に正解される姿に驚かされますが、幼い頃からの世界への飽くなき探究心と自分に必要な知識の積み重ねによってその頭脳が作られていることがわかりました。
【後編】「東大王・水上颯さんに聞く!子どものために親がすべきこと」では、水上さんの親御さんの子育て法を中心にお伝えします!
PROFILE
水上颯(みずかみ・そう)
1995年山梨県生まれ。私立開成高等学校卒業、現在東京大学医学部6年生。高校時代には第32回全国高等学校クイズ選手権に出場し優勝。公益財団法人孫正義育英財団の財団生(平成29年度以降)にも選ばれており、その「異能」は孫正義も認める逸材。TBS「東大王」にて東大王チームとしてレギュラー出演中。
取材・文/田川志乃 撮影/masacova!