クジラの“ソング”には流行がある!?
本編に登場するザトウクジラの神秘的な歌声、“ソング”について、渡辺監督は、クジラの声をベースに作り上げたという制作秘話を明かします。田島博士が「クジラの“ソング”には毎年流行があるんです」と説明すると、五十嵐氏も渡辺監督もとても驚いた表情を浮かべ、「どうやって流行がわかるのでしょうか?」と質問。田島博士の「誰が流行を作るのかは分かっていませんが、メスにモテるためにオスが一生懸命、今年の流行ソングを真似するんです」と解説に真剣に耳を傾けていました。他にも田島博士は「クジラもインフルエンザにかかる」など興味深いクジラの生態を教えてくれました。
五十嵐氏は「海は女性との親和性がすごく高いんです。生命を描くと女性に行き着きます」と、作品に隠されたテーマについて語ります。これを聞いた田島博士は、開催中の「大哺乳類展2—みんなの生き残り作戦」で、生殖器の展示を手がけたことに触れ「野生動物の世界ではオスが本当に頑張っています」とコメント。さらに五十嵐氏のコメントを受けて「ぜひ、そういう視点で原作を読み返したいと思います」と笑顔で語っていました。
海獣、そして生命の神秘について考えられる作品でありながら、もちろん、圧倒的な映像美や、音楽の美しさなど、さまざまな面から楽しめる作品です。映画公開前に、特別展をチェックするもよし、特別展を見てから映画を楽しむもよし、そして、改めて原作を読み直してみるのもオススメとのこと。五十嵐氏が「映画も漫画も、同じ種から生まれた兄弟のようなもの」とコメントしたように、映画ならでは、漫画ならではの表現、そして楽しみ方があるという本作。様々な角度から本作を楽しんでみてはいかがでしょうか。
取材・文/タナカシノブ