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新学期が始まり、緊張しながらも毎日張り切って学校に通っている新1年生のお子さんも多いことと思います。 しかし、新入学だけではなく進級時も含め、4月からGW明けにかけては「学校に行きたくない」という「登校しぶり」が始まりやすい時期だといわれています。 今回は「学校に行きたくない」という子に対し、親ができる対応にはどのようなものがあるか考えていきます。

目次

「登校しぶり」は「不登校」とどう違う?

もしかすると、「登校しぶり」という言葉を聞いたことがない人もいるかもしれません。 いっぽう、「不登校」(もっと過去の言い方だと「登校拒否」)はほとんどの人が知っているのではないでしょうか。

 

子ども自身にとって学校に行きたくない・行けないという精神状態なのはいずれも同じですが、周囲が叱ったり励ましたりしながらなんとか学校に行っている段階を「登校しぶり」、行けない状態がほぼ固定されてしまうと、一般的には「不登校」といわれます。

 

「登校しぶり」の子は、日中おなかが痛くなって保健室に通ったりすることもありますが、ほとんどの場合、登校すればあとは元気に過ごせるのが特徴。

 

ママやパパも「行きさえすれば大丈夫なのだから…」と、なんとか休ませないように心を砕いています。

登校しぶり=わがまま・甘やかしと見られがちだけど

周囲の「わがまま」「甘やかすから」の声は正しい?

小学校の登校時間に通勤する人は、時々小学生に保護者が付き添って歩いているのを見たことはないでしょうか?

 

「登校しぶり」の子でも、ママがついてきてくれると何とか登校できることも多く、学校側から「門(または昇降口)まで教師が迎えに行きますので、そこまで付き添ってもらえませんか」と提案される場合もあります。 門でママと離れるときに泣いたり大騒ぎしたりする子もいますが、そんな姿を見て、わが子が毎日元気よく学校に行けている人や、祖父母からすると「わがまま」「親が甘やかしているから」「もっとビシッと厳しくするべき」と思えるかもしれません。

 

たしかに、大人ですら時々は仕事や家事などを「今日は面倒くさいな、さぼりたいな」と思うのだから、発達途上の子どもだって、学校の勉強が退屈で「ずる休みしたい」と考えることは当然あるでしょう。 本当に「さぼりたい」だけなら、ビシッと言い聞かせたり、厳しく接したりすることで「やっぱり行かなきゃいけない」と子どもが納得する可能性は十分あります。

 

しかし、お子さんが「登校しぶり」を経験したママやパパからは、「厳しくしすぎたために、これ以上頑張れなくなって、ぷつんと糸が切れたように学校に行けなくなったのかもしれない」という声がとてもよく聞かれます。

 

これまで常に子どもの要求を通してきてしまった…という心当たりがあるならもちろん改めるべきですが、「甘やして育てたから、学校に行きたくないとわがままを言うようになる」というのは、ほとんどの「登校しぶり」の子には当てはまらないのではないでしょうか。

ママやパパから見て、わが子は「わがまま」?

登校しぶりのお子さんをママ・パパから見た場合、夜は「明日は学校に行く」と言ったのに朝になったら「やっぱり行きたくない」と、言うことが変わるのを「わがまま」だと感じてしまうかもしれません。 しかし、子どもにとっては嘘やわがままではなく、その時は本当に行こうと思っていることがほとんど。大人でも「もうお酒はやめる」「ダイエットする」と決めた瞬間は本気ですよね。

 

他にも、子どもなりにプライドや理想の自分があり、「明日学校どうする?」と聞かれると、ダメな自分になりたくないという思いから「行かない」とはなかなか言えないものです。

 

さらに、本音では行きたくなくても、親をがっかりさせたくない・怒られるのが怖い…などの理由で、前の晩には「行かない、行きたくない」と言い出せず、いよいよ家を出るという時まで本音を言えないこともあります。 これらも一概に「わがまま」とは言えないのではないでしょうか。

 

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ママ・パパにできる「登校しぶり」対応1:まずは原因を探る

嫌がらせやいじめがないかは最優先で確認

子どもが「学校に行きたくない」と言い出したら、まず最初の段階としては、明らかな原因はないか探してみる必要があります。 はっきりとしたいじめや嫌がらせがある場合は、登校しぶりの対応ではなく、トラブルそのものの解決やケアが先決です。 クラスだけでなく登下校や学童保育など、信用できる先生やママ友に様子を聞いてみましょう。

「ママと離れたくない」のが登校しぶりの真の原因なのか?

低学年の子は、自分でも学校に行きたくない原因が分からないことも多いもの。 「どうして学校に行きたくないの?」とたずねると、表面的に思いついた理由を口にすることもあります。

 

なかでも多いのは「お母さんと離れたくない」というもの。カウンセリングや小児科では「母子分離障害」と言われることもあります。

 

もう少し小さい子の場合、純粋に「ママと離れたくない」という理由だけで登園を嫌がることは珍しくないですが、小学校になると、実は自分で言い表せない別の理由や不安があることも多いと言われています。

普通に思えることが、本人には大きなストレスという場合も

いじめや嫌がらせなどの明らかな被害ではなくても、以下のような状況は、ある子には平気でも別のある子には大きなストレスとなっていることもあります。

 

  • 立ち歩く子や騒ぐ子が気になる
  • 他の子のケンカや、叱られている声が怖い
  • 習いごとなどが多く、体力的に負担が大きい
  • 給食が多い・苦手でも食べないと叱られる・早く食べないといけない
  • 窓際で光がまぶしい
  • 学校のザワザワした雰囲気や、突然鳴るチャイムなどの音
  • 集団行動
  • 興味がなくても勉強に取り組まなければいけない
  • 慣れない初めての活動
  • 席替えなど、ひんぱんに環境が変わること
  • 担任の先生が怒鳴るなど今まで接したことのないタイプ

 

これらをすべて取り除くのは不可能ですが、周囲がそのことを理解しておくだけでも大きな違いとなるでしょう。

頑張りすぎでオーバーヒートしている場合も

真面目な子ほど、すべてにおいて手を抜けず常に全力を出してしまうので、気づかないうちに心身の疲れがたまり、SOSとして「行きたくない」と言い出すことも。 またプライドが高く周りに恰好悪いところを見せたくないタイプの子は、「明日も失敗しないために頑張り続けなければいけない」というプレッシャーを常に感じていて、病み上がりなどパワーの落ちた時に「学校に行きたくない」と言い始めることがあります。

 

こういう傾向がみられる場合、「疲れたら休んでもいいんだよ」「失敗したくないから頑張るのはえらいし尊敬する。でも、もし失敗してもママやパパは何も恥ずかしいと思わないし、そのままでもぜんぜんダメな子じゃないよ」といったメッセージを繰り返し伝えていきましょう。

軽度の「発達障害」が影響しているケースも

先に挙げた「光がまぶしい」「ザワザワした雰囲気や突然鳴るチャイム」「慣れない初めての活動や席替え」などは、特定の発達障害やその傾向がある子にとって、とても苦痛に感じられることがあります。 ごく軽度の場合、園では目立たなかったのが小学校の生活の中で苦痛な音や光、行動が繰り返しクローズアップされてきて、次第に学校に行くのを嫌がるようになる可能性も。

 

発達障害の診断は専門家のもとで受けなければならず、この記事だけでは判断することはできませんが、診断によって最適な接し方や配慮するべきことが分かり、ずいぶん毎日が過ごしやすくなった…という体験談も少なくありません。

原因の多くは「不安」「パワー不足」が多い

子どもは、なかなか自分ではっきりと学校に行きたくない理由が分からない・言えないことも多いですが、ママたちの経験談を総合すると、「不安」「パワー不足」に集約されそうです。 学校生活を送るには、勉強にせよ人間関係にせよ、相当のエネルギーが必要。未知の環境に入る不安が強ければ行きたくないと感じても不思議ではありません。

 

また、期待に胸をふくらませて入学したものの、実際は誰かに意地悪されたり、思い通りに活躍できなかったり、雰囲気になじめなかったり…と、楽しいことばかりではないですよね。 2年生から登校しぶりが始まる子が意外と多いのも、1年生でそんな現実を知ったからこそ。 「体力的にハード」「仲良しの子とクラスが離れた」などで立ち向かうエネルギーが足りない時に、登校しぶりが起きるのではないでしょうか。

 

親にはどうにもしてあげられない時もありますが、たとえば習いごとを減らす、自然の中に連れていくなど、できることは実行していきたいですね。

ママ・パパにできる「登校しぶり」対応2:登校時の工夫

いじめなど、明らかに登校すると子どもが危険な場合は休ませる方がいいこともありますが、なんとなく不安・パワー不足だけど学校に着けば元気に過ごせるという場合、登校時の工夫で乗り切れることも。 あるママはこんな経験談を話してくれました。

 

「一時期は毎日のように学校に行くのを嫌がり、母親の私が登校に付き添っていたのですが、ある時、体調不良で寝込んでしまい、夫が付き添って行ったことがあります。そうしたら、恥ずかしかったのか、学校につくとサッと離れて入っていったそう。パパの付き添いは数日続きましたが、ある日、明日はパパもママも来なくていい!と宣言して、一人で出ていくようになりました」(匿名さん・39歳・当時2年生の女の子のママ)

 

また別のママは、朝から楽しい時間を作るようにしていたそう。

 

「学校の準備や着替えは、自分だけでやらせるとグズグズしてしまうので、目をつぶって手伝っていました。準備をさっと済ませた分、外でボール遊びなどをして楽しい時間を作り、そのまま”じゃあ行こうか!”と出発していました。仕事もあるし、家事もしたいし、私の体力的にも大変な数か月間でしたが、その後進級して、相性のいい担任の先生に恵まれたこともあってか、いつしか必要なくなりました」(匿名さん・34歳・当時1年生の男の子のママ)

ママ・パパにできる「登校しぶり」対応3:相談先をいくつも作る

子どもが「学校に行きたくない」という場合、まっさきに思い浮かぶのはクラスの人間関係ですが、ここまで述べてきたように、はっきりとした被害を受けているのではなく「不安」「パワー不足」が原因の場合は、担任の先生にも決め手となる対応が浮かばないこともあります。 そんな時は、ママだけで悩んでいても答えが出ず「自分の育て方が悪いのかも」と自分を責めてしまう可能性もありますので、できるだけいろいろな相談先を見つけておきましょう。

 

国では、平成31年度までに全公立小中学校の「スクールカウンセラー」配置を目標としています。スクールカウンセラーからは、担任の先生とはまた違った視点でのアドバイスが受けられることも。 また、自治体主催の発達・教育相談が広報誌やホームページに掲載されていたり、地域の特別支援学校で一般の学校に通っている子の発達相談を受け付けていたり、小児科や病院でカウンセリングの情報を教えてもらえることもあります。

 

学童保育の担当者や習いごとのコーチなど、日頃お子さんの様子をよく見ている人に相談できれば、きっかけになる出来事を教えてもらえるかもしれません。 忙しい毎日の中ですが、できるだけ普段からコミュニケーションを取っておくと、いざという時に相談しやすいですね。

登校しぶり まとめ

登校しぶりや不登校に関しては、その子の性格や環境などで、どのやり方が正解とは言い切れない面もあります。 励ましたり付き添ったりして何とか行かせ続けた末、ある時ふっと行けるようになる子も、早めに休ませたからこそ元気を取り戻して自分から行けるようになった子もいます。 わが子がもし「学校に行きたくない」と言い出したら、まずは本人の様子によく目を向けて、けして追い詰めることなく、一番合った対応を探してあげたいですね。

 

文/高谷みえこ
参考:
文部科学省「文部科学省における平成31年度児童虐待防止対策関連予算要求について」