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インターネットで育休に関する手続きなどを調べようと検索したら、「育休」に並んで「迷惑」「うざい」などのワードが出てきてショックを受けたことはありませんか?

 

育休復帰したママは、そんなにも職場で「迷惑」と思われているのでしょうか…?

 

今回は、育休からの仕事復帰後、実際に職場で心無い言葉を言われた先輩ママに話を聞き、迷惑だと言われてしまう理由や、そう言われないためにはどうすればいいのか、対策について考えてみました。

 

育休明けのママに投げられる非情な言葉…


時短勤務で、他の人が忙しそうに働くなかデスクを片付けて「お先に失礼します」と帰るのは、全く問題ないはずなのに、既定の仕事を済ませていてもまだまだ肩身が狭く感じてしまう世の中。

 

まして子どもの急な病気で仕事をお願いして帰るとなると、「気にしないで早く帰ってあげて下さいね」と言ってもらっても、内心迷惑がられているのでは…と不安になってしまいますね。

 

しかし、ママたちに聞いてみると、内心どころではなく、はっきりと「迷惑」と非情な言葉をかけられた経験がある人も少なくありませんでした。

 

「数年前、育休制度が導入され、それまでほとんどの人が辞めるしかなかったのが、少しずつ復帰して働く人が増えてきました。うちの部署では私が初の育児休業取得者。復帰後、気を付けていましたが、1歳の息子はやはり何度も熱を出して、2~3日休むことが続きました。ある時、たまたまSNSでフォローしている同僚つながりで、後輩の書き込みを見てしまったんです。そこには、”また休みだって。正直迷惑…”とおそらく私のことが書かれていました」(Uさん・30歳・1歳児のママ)

 

「独身時代、昼休みに年上の女性社員同士が、育休復帰した別の女性のことを”私たちの時は産休しかなかったのに、今の人は育休に時短でしょ。担当の仕事を外されても当然。贅沢よね”って噂しているのを聞いたことがあります。自分はこんなに大変だったんだから…という、いわゆる姑根性ですが、育休を取って復帰した今、きっと私も陰で言われているんだと思います」(Sさん・29歳・1歳児のママ)

 

「私の職場は、得意先の締め日などの関係で月のうち何日かが特に忙しくなります。まだ子どもがよく熱を出すので肩身が狭く、繁忙期だけでも夫に早退して迎えに行ってほしいのですが、”子どもが熱を出して早退する男性なんて職場に1人もいない””評価が下がるから休めない”と。でも、私のほうは、先日一番仕事が忙しい日に子どもが熱を出してしまい、休むと電話したら上司から”給料泥棒にならないように早く出て下さいね”って言わたんです。評価なんてゼロじゃないかと」(Kさん・34歳・0歳児のママ)

 

海外では、男女問わず家族の病気のケアで仕事を休んだり突然お店を閉めたりしても「当たり前」ととらえられる国がたくさんあります。

 

せめて子どもが病気の時に夫婦で休みを折半できればママの肩身の狭さも少し軽減するのでしょうが、日本では、男性が育児で仕事を休めないという雰囲気の職場がまだまだ多いのも事実です。

 

「育休明けは迷惑」と言われる本当の理由


ところで、ママたちの体験談を聞いていると、「育休明けは迷惑」と言われる理由には、どうやら2種類あるようです。

 

1つは、

 

  • 過去に育休復帰の事例がなく、子どもがすぐに熱を出すことなどへの理解がない
  • 人員配置がうまくいっていないため、周囲に過重な負担がかかっている
  • 代わりに業務を負担した人へ、会社からの評価や報酬がない(または少ない)

 

といった職場側の問題。

 

いっぽう、

 

  • 遅刻が多く、子どもの病気などやむを得ない事態以外でも育児をいいわけにする
  • 時間内にやれるだけのことをしっかりやる姿勢が見られない
  • 急なお迎えなどで早退するときの引継ぎが不十分
  • 仕事を替わってもらった人への感謝の言葉がない

 

など、周囲への配慮が欠けていることに原因がある場合も見受けられました。

 

仕事の対価としてお給料を受け取る以上は、それに見合う結果が求められます。

 

復帰早々は誰だって心身ともに余裕が持てないものですから、だからと言って、必要以上に無理をして一人で背負いすぎることはありません。ただ、決して楽な仕事などないなかで、復職ママに関わらず自分の業務でいっぱいいっぱいになっている同僚がいるのも事実。

 

「がんばっているのに、迷惑と言われるなんて」と思う場合、職場の同僚の立場で周囲に配慮が足りているのかなど、振る舞い方を見直し、誰にとっても気持ちよく働ける環境作りに取り組む姿勢が必要なのかもしれません。

 

さらに、育休前にバリバリ働いていた人がやってしまいがちなのが、「決定権や発言権を必要以上に求める」「時間に制限があるので、やりたい仕事だけやって雑用を避ける」などの働き方。

 

育休や時短勤務と関係なく、事務作業に時間を取られて業務の進行に支障をきたすような場合は上司に改善を求めることも必要ですが、以前と違って時間の制限がある中で「成果を出したいから雑用は残業できる人がやって」「でも大事なところの決定権だけは私!」という姿勢は周囲の反感を買うといえるでしょう。

「迷惑」といわれないために…先輩ママがやっていたこと


どんなにがんばっても、子どもの病気だけは避けられないし、予測もできません。

 

先輩ママは他の部分でこんな工夫やフォローをしていたそうです。

 

「本来の仕事以外に、持ち回りで備品のストック確認作業やストーブの灯油入れ替え作業などがあるのですが、休んでしまったら、後日自分の分プラス替わってくれた方の作業を引き受けていました。そんなことしなくていいよ!大変だね、がんばって、と逆に言ってくれる人も多く、コミュニケーションが円滑になったと思います」(Mさん・37歳・4歳児と2歳児のママ)

 

「子どもの行事はできるだけ早く日付を把握、仕事を前倒しで進めるようにしています」(Aさん・36歳・7歳児のママ)

 

「急に子どもの病気で休みになった場合、誰が見てもわかるように、常にデスクに明日の作業一覧とそれぞれの期限を書いたノートを置いて帰るようにしています。自分の頭の整理にもなって一石二鳥です」(Hさん・31歳・1歳児のママ)

 

「外線の電話で、9番はお客様からの問い合わせや苦情が入ることが多く、皆が嫌がる番号なのですが、日頃急に休んだり早退したりで迷惑をかけることもあるので、率先してその番号をとるようにしています」(Uさん・33歳・0歳児のママ)

 

その他にも、「会社では子どもの話はできるだけしない」「入力ミスなど、時短以外のことで絶対に迷惑をかけないと思いながら仕事をする」などのママの声が寄せられました。

 

覚えておきたい、先輩ママの「育休明けのマインドセット」


「仕事も家庭もがんばる」と誓って復職したものの、いざ始まってみると想像以上に風当たりが強くて心が折れそうになることがあるかもしれません。

 

そんなときのため、先輩ママたちがどんなマインドセット(心構え)を持っていたのか、一部を紹介します。

 

「子どもって必ず熱を出すけど、いまの会社の仕組みは子どもが熱を出すことを前提に作られていない。理不尽だし大変。でも、私はいつも、これは期間限定なんだと自分に言い聞かせています。種をまいて水をやり、いつか子どもが大きくなった時にはしっかりと働けるように。ほめられたことではないですが、持ち帰りで仕事を仕上げることもあります。求められる内容をキープしつつ辞めずにいれば、そのうち世の中がリモートワーク当たり前の社会になったり、条件のいい会社に転職できる可能性もあるので」(Hさん・36歳・2歳児のママ)

 

「育児と仕事の両立は、肉体的にも精神的にもハード。自分のためだけでは、とてもじゃないけどやってられないです。でも、自分だけじゃなく誰かのためにもなると思うと、少し踏ん張りがきく。もちろん、子どもに十分な教育資金を残してあげたいという目的もありますが、会社の中でも、今後出産する後輩や親の介護で同じ立場になった人のため、さらには娘が将来働くママになった時のために”だから育休明けはダメなんだ”って言われないような行動・態度を目指しています。」(Yさん・34歳・1歳児のママ)

 

そして、こんな声もたくさん聞きました。

 

「迷惑をかけないために…といくら頑張っても、必ず悪く言う人は言います。それをなくすことはできないので、本当に自分に問題があっての言葉なのかを見極めるスキルを身につけなくては。そのうえで修正すべきは修正し、あとは割り切って耐えることも必要です。産休・育休に入る同僚や後輩のフォローがこなせる頃になれば、誰も何も言わなくなりますよ」(Eさん・39歳・10歳児のママ)

 

「育休明けでキビキビ働けない、よく休む…それを内心迷惑だと思っても、言わずにいてくれる人、顔に出さずにいてくれる人もたくさんいます。それがわかる想像力が、私は一番大事だと思います。そうすれば自然と感謝をもって対応できるのではないでしょうか」(Wさん・35歳・7歳児と3歳児のママ)

 

「復帰直後は大変だけど、育児中って優先順位をつけて行動しないと何もできないので、私はずいぶんそのスキルが培われました」(Nさん・40歳・11歳児と7歳児のママ)

 

というママの声も印象的でした。

まとめ


今回ご紹介したのは、あくまでアンケートに応募された方々の体験談です。実際には、復職ママを応援してくれる職場の上司・同僚もたくさんいるはずなので過度に不安視する必要はありませんが、残念な声が寄せられたことも現代の日本社会の現状です。

 

産休・育休に伴う人員配置や目標調整などのフォローが整っていない状態で現場に対応を押し付けていれば、当然、業務負担にひずみが生じ、不満の矛先(ほこさき)が育休中や復帰後のママに向かってしまうことが予想されます。

 

これは少子化問題の大きな原因として社会全体で取り組むべき課題なので、ママが1人で今すぐ解決できることではありませんが、少なくとも、急に休む場合の引継ぎ不足や、育児を理由にして面倒な仕事を断るなど、不用意に周囲に負担をかけるようなことは避けるようにしたいですね。

 

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文/高谷みえこ (アンケート実施時期:2019年1月~2月)