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出産のための入院で病院や産院に支払う費用は、平成22年には全国平均406,081円、平成24年には416,727円(産科医療保障制度分・個室差額・祝い膳などは除く)と、年々増えている傾向に。

 

この費用をまかない、すべての妊婦さんが安心して出産に臨めるようにと支給されるのが「出産育児一時金」です。

 

2019年現在、なんらかの健康保険に加入している人ならば一律42万円を受け取ることができます。

 

しかし、初めての出産では、出産育児一時金を受け取るためにいつどんな手続きをすればいいのかわからない…という人も多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、出産育児一時金について、これだけ知っていればOKという基本的な知識と、うっかり忘れがちな要注意ポイントなど、ママの疑問に答えていきます。

目次

出産一時金の申請方法は?いつ、どこで手続きしたらいい?


「出産育児一時金」は略して「出産一時金」といわれることが多いですが同じものです(この記事でも、以下、一般的によく使われる「出産一時金」と表記します)。

 

夫の扶養に入っている場合は「家族出産育児一時金」という呼び名になりますが、こちらも金額や内容は同様です。

 

悲しいことですが、死産や流産などでも妊娠期間が85日を超えていれば「出産育児一時金」として支給されます。行政手続き上仕方ないのかもしれませんが、できれば名称を変えてほしい気がしますね…。

 

なお、出産一時金とよく似た名称の「出産手当金」もありますが、こちらは、出産分娩費用のためではなく、出産で休業した人に対する収入の代替として支払われるもの。

 

いわゆる「産休手当」のことであり、支給額は給与の額などにより一人一人異なります。支給条件も、保険加入期間や退職日など色々制約がありますので、各自で健康保険組合(または職場の担当部署)へ確認が必要です。

 

出産一時金はどこから支給される?

出産一時金がどこから支給されるのかは、以下のように分かれています。

 

  • 引き続き今の勤務先で働く場合→勤め先の健康保険組合(協会けんぽ、共済健保など)
  • 扶養に入る(入っている)場合→夫の勤め先の健康保険組合
  • 自営業の人など→国民健康保険(自治体)

 

どの場合でも、収入の上限などの条件や審査はなく誰でも一律に受け取れますが、自分の勤務先と夫の勤務先などで重複して受給することはできません。

 

出産と同時に退職して夫の扶養や国民健康保険に入る場合は、新しい健康保険組合へ申請するのが基本ですが、健康保険によっては「退職後6か月以内なら支給します」という規定があることも。

 

さらに「付加給付」など、プラス数万円~10万円以上の手当てがもらえる会社もあります。自分がどこへ申請できるのか、条件なども含めてよく確認しておきましょう。

 

出産一時金の申請は、いつどこへ?

出産後も同じ勤め先で働く場合は、産休に入る前に、上司や総務など担当の部署に申し出て、所定の手続きをすることになります。

 

もともと夫の扶養に入っている人は、同じく夫の勤め先の担当部署で受け取った書類や必要な証明書などを揃えて提出します。

 

国民健康保険の加入者ならば、自治体の役場窓口で申請します。

 

時期はそれぞれ異なりますが、おおむね、出産予定日の2か月前から申請可能なことが多いようです。

 

なお、申請は事前にできますが、「入院に備えて先にお金を受け取っておきたい」ということはできませんので注意してください。

 

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産院へ直接42万円が支払われる「直接支払制度」と「受取代理制度」


出産一時金として基本的に42万円が誰でも受け取れるとはいえ、病院への支払いのためにまとまったお金を準備するのは大変。

 

そこで、この42万円を健康保険組合から産院などへ直接支払うことで、出産する人や家族が現金を用意しなくてもいい…という仕組みが「直接支払制度」や「受取代理制度」です。

 

どちらも支給額は同じですが、「受取代理制度」では、事前に妊婦さんと産院の間で代理申請書を作成しておくため、健康保険組合から産院に費用が支払われるまでの期間がやや短くなり、産院側で経営や事務の負担軽減となります。

 

そのため、おもに小規模な産院で「受取代理制度」が導入されていることが多い傾向があります。

 

妊婦さん側は、「直接支払制度」を導入している産院であれば用意された書類に記入するだけでOKですが、一部の産院では「受取代理制度」しか利用できないので、その場合は健康保険組合に連絡や書類提出が必要となります。

 

ただし、出産一時金42万円と入院代の差額には注意しよう


退院時に多額の現金を用意しなくてすむ「直接支払制度」は便利ですが、ひとつ注意するべき点があります。

 

特に地方の産院では、退院時に支払う費用の総額が42万円より安くすむことがあります。

 

しかし、直接支払制度(または受取代理制度)を利用した場合、差額分は請求しないと手元に戻ってきません。

 

産後しばらくは、出産の疲れや赤ちゃんのお世話、ホルモンバランス変化の影響などで、手続きのことまで頭が回らないかもしれません。

 

可能であれば、出産前に受付で

「退院時の支払い額はだいたいいくらになりそうですか?」

と聞いておいたり、母子手帳などに

「退院時の領収書確認、42万円以下なら請求手続き」

などのメモを書いておくのがおすすめです。

 

申請を忘れてた!出産一時金がもらえない?


出産前後バタバタしていて申請手続きができなかったら、出産育児一時金がもらえないのかというと、そうではなく、出産後でも申請すれば問題なく42万円を受け取れます。

 

最近は、産院への支払いにクレジットカードを利用してマイルやポイントを貯め、あとから自分で申請して出産一時金を振り込んでもらうという人もいますが、振込みまでには1~2か月かかることが多いようですので、引き落としの残高不足には気をつけて下さい。

 

そして、出産から2年以上経過してしまうと出産育児一時金は支給されませんので、落ち着いたら…と思っているうちに忘れてしまわないようにだけは注意して下さい。

 

そのような事態にならないためにも、「直接支払制度」または「代理受取方式」を選んでおく方が安心かもしれませんね。

 

まとめ


十数年前に筆者が長女を出産した当時の出産一時金はたしか30万円くらいだったと思いますが、現在の支給額は42万円と知り、いいなぁと思っています(笑)。

 

しかし出産費用の方も、首都圏を中心に年々上昇が続いているのも事実。

 

基本的な手続きは、早めに職場に申請または産院でサポートを受けられますが、よりスムーズに利用できるよう、この記事も参考に必要な手続きを確認しておいて下さいね。

 

文/高谷みえこ

参考/厚生労働省 平成26年 第78回社会保障審議会医療保険部会資料より「全国の平均的な出産費用について」

協会けんぽ「出産育児一時金について」

厚生労働省「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度」実施要綱