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少子化がますます進み、大学の定員よりも子供の数の方が少ない時代。 そのいっぽう、AIの発達やグローバル化の影響で社会や企業のあり方が大きく変わり、学校のテストや受験で高得点を取って一流大学に入れば必ず大企業に入れて安定した暮らしができる…という、これまでのモデルが通用しなくなると言われています。 そんなこれからの時代を生きていかなければならない子どもたちにとって、いま必要とされているのが「非認知能力」と呼ばれる力。 今回は、忙しいママ向けに、子どもたちにぜひ身につけてほしい「非認知能力」とは何かを分かりやすく解説します!

 

「非認知能力」ってどんな力なの?


これまで重視されてきた、IQで示せるような「テストの点数」や「知識がどれだけあるか」などを「認知的能力」といいます。 それに対し「非認知能力」は、別名「非認知的能力」「非認知スキル」ともいわれ、近年、世界的に注目が集まっています。

 

パッと聞いただけでは意味が分かりづらいと思いますが、ママやパパが仕事をしていて、「この人、仕事ができるなあ」と感心する相手には必ず備わっているような、「目標に向かって頑張れる」「他の人とうまく関われる」「感情をコントロールできる」…といった、点数や数字で表せない能力のことなんです。

 

日本でも、2017年3月に改訂された「学習指導要領」で、”幼児期におけるいわゆる「非認知的能力」の重要性”ということばが組み込まれ、以前までの「テストでよい点が取れる子」ではなく、「自分で考えられる子」「工夫ができる子」に育ってほしいという方針に変わってきています。

 

それに合わせて、入試のしくみも大学→高校→中学と変わってきているので、いま小さい子を育てているママにとっては、まさにこれからわが子に直接関わる話だといえます。

 

就職後が本当の勝負。企業はどう考えている?


戦後の数十年間は、増え続ける人口や経済成長に伴う消費の拡大に応えるため、均質な商品やサービスを生産するための人手が必要でした。 そのためには、一律のテストに合格できる能力を持ち、人と違ったことをしないような人材を採用していればよかったのです。 その結果、企業が求める人材や採用基準が「認知能力の高さ」に偏ってきたといいます。

 

しかし、今後、世界の国々や移民を相手にビジネスをする必要に迫られてくると、今までのように「一定の成績をクリアしてきた」だけでは対応できなくなり、企業は、自分の考えを持ち多様な局面に柔軟に立ち向かえるような人材を求めるようになってきています。

 

もちろんこういったとらえ方をしている企業ばかりではなく、いまだに旧来の価値観が強く残る企業ももありますが、上記が今後の主流になっていくのは間違いないと言われています。 また、日本ではまだ新卒や若くして起業する人の数は少ないですが、今後は欧米のように起業する若者が増えることが予想されています。

 

起業すれば、その人を評価するのは会社や上司ではなく、クライアントやユーザー。当然、会社勤め以上に「意欲」「創造性」「対処能力」といった非認知能力が必要とされるでしょう。

 

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どうすれば「非認知能力」が身につく?


学校でも会社でも、これまで長い間、知識や読み書き能力が評価され、「言われたことを素直にやる」「自己主張より協調性がだいじ」とされてきたのに、今になって「知識よりも活用する力が欲しい」「自分の意見を持て」と言われる…勝手な話だなあと思わなくもありませんね。

 

しかし、就職や賃金だけの話ではなく、生きていくうえで「非認知能力」が高い方が、よりイキイキと仕事も人付き合いも楽しめるはず。 そこで、どうすれば子ども時代に「非認知能力」が身につくのかを研究データから紹介します。

 

過去にアメリカのミシガン州で、入学前に幼児教育を受けた子どもたちと受けなかった子どもたちの成長後の生活を追跡した研究によると、成績の差は入学直後だけでやがて関係なくなってしまったのに対し、「高校を卒業したかどうか」「犯罪・逮捕歴」「離婚率」「生活保護」「年収」「持ち家率」など、その後の生き方に明らかな差が見られたということです。

 

この差を生んだのが、「自制心」「粘り強さ」「やる気」などの非認知能力であり、それは幼児教育を受けていた(園に通っていた)ことで身についたと考えられています。

 

また、「非認知能力」は人から言われてやらされることよりも、自分が夢中になって取り組むことの中で身につきやすいことが分かっています。

 

そう考えると、非認知能力を育てるには特別な学習などは必要なく、毎日家や保育園・幼稚園などで好きなことに一生懸命取り組むだけでもプラスになっていることが分かりますね。

 

「非認知能力」は、お金をかけなくても育つ!


小学校や中学校から私立の名門校に通うのは、一部の天才タイプの子をのぞいては、高額な塾通いや親の長時間のサポートがないと無理…などとよく言われますが、非認知能力を伸ばすための工夫は、家が裕福でなく、共働きやシングルマザーで忙しくても、少しだけがんばればできそうなことばかり。

 

日本でも、平成29年に行われた「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」にともなうアンケート調査で、以下のような家庭の子は、親の所得に関わらず非認知能力が高いという結果が報道されました。

 

  • 毎日朝ごはんを食べている
  • スポーツ・習いごと・趣味など、熱中できるものがある
  • ボランティアや地域活動など人の役に立つことを重視している
  • 「努力」「最後までやり抜くこと」を大切にしている

 

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まとめ


最近、注目が集まっている「非認知能力」について、なんとなくイメージできたでしょうか? 「人とコミュニケーションをとる」「目標に向かってがんばる」などは、本来、子どもが子どもらしく遊んだり人と関わったりしていれば、自然と身につく力だとも言えます。 「将来のため」と構えすぎず、子どもの好奇心や興味関心を上手に受け止めながら、非認知能力を伸ばしてあげたいですね。

 

文/高谷みえこ

参考:文部科学省 学習指導要領 資料6「幼児教育に関する現状について」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/057/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/04/07/1368680_06.pdf

シカゴ大学 ジェームス・ヘックマン教授論文「INVESTING IN OUR YOUNG PEOPLE」 https://www.nber.org/papers/w16201

「家庭の経済格差と子どもの認知能力・非認知能力格差の関係分析」 https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/ending_child_poverty/img/5.pdf