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生まれた直後だけの特別なギフト「赤ちゃんの匂い」

生まれたばかりの赤ちゃんは、なぜかとてもいいにおいがします。出産後に赤ちゃんを抱っこして、その不思議な良い香りにびっくりしたママも多いのではないでしょうか?

 

ベビーパウダーやおしり拭きなど、赤ちゃんの身の回りをケアするアイテムの香りと思っている人も多いこの「赤ちゃんのにおい」。経験したことのない人にとっては実感がわきにくいため、疲れからくる幻や誤解なのでは、とすら言われてきました。ですが実は、この不思議ないいにおいは本当に赤ちゃん自身のにおいなのです。

 

この赤ちゃんに独特のにおいを感じられるのは、生後6週間程度までというとても短い期間。本当に生まれたての赤ちゃんからしかこのにおいは発せられません。

 

この「赤ちゃんのにおい」、どう感じるかは人によってそれぞれなよう。表現の仕方も様々で、ミルクのようなにおいに感じる人もいればおひさまのようなにおいと言う人もいます。ともあれ、ママにとってとても良い香りに感じられるという点では共通しているのが特徴です。

 

人間の体臭は、体から分泌される何種類もの化学物質によって決まります。ただ、においに対してどの化学物質がどのように関わっているのか、具体的なところを知るのはなかなか難しいこと。さらにこの赤ちゃんのにおいは生後6週間程度でなくなってしまうもの。体臭の中でも特に調べることが難しいことも手伝って、一体何がそのにおいの元となっているのかはいまだによくわかっていません。

 

一説には、赤ちゃんに残った羊水のにおいではないかとも言われています。その他、生まれてくる赤ちゃんの肌を覆っている胎脂のにおいという説もありますが、どちらも定かではありません。

 

「赤ちゃんの匂い」の特別なパワーとは

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原因はまだはっきりわからないとはいえ、「赤ちゃんのにおい」が実際に存在するのは確かなこと。そして、赤ちゃんからいいにおいがするのにはちゃんと理由があるのではないか、とされる研究結果も見受けられます。

 

カナダのモントリオール大学で、ほぼ同世代の新生児のママ15人、子どもがいない女性15人を集めた観察実験が行われました。脳波をチェックしながら赤ちゃんのにおいと干した洗濯物の良いにおいをそれぞれ嗅いでもらい、どちらが好きかを選んでもらうという実験です。同時に、ふたつのにおいを嗅いだときの脳の動きについても調べられました。

 

その結果、被験者女性30人全員が赤ちゃんのにおいの方が好きだと回答。赤ちゃんのにおいを嗅いだときの脳の状態を調べてみると、新生児のママ15人の脳には明らかな変化が認められたのだそう。

 

その変化とは、脳内にドーパミンが分泌されるというもの。ドーパミンは快楽物質とも呼ばれていて、ストレスを軽減し、気分を高揚させてくれるという効果があります。普通なら誰かと楽しく笑っているとき、おいしいごはんを食べたときのように幸福感を感じたときに分泌されるホルモンなのですが、赤ちゃんのにおいを嗅ぐことでもママの脳にはドーパミンが一気に分泌されるというわけですね。赤ちゃんのにおいを嗅ぐだけで、気分が良くなりやる気が出てくるという変化があらわれるのです。

赤ちゃんもいい匂いで育児をサポートしてくれている

出産後、ママは身体的にも精神的にも強いストレスにさらされることになります。出産という大変な出来事を乗り越えた体のダメージはすぐには回復しませんし、初めての子育てであればその苦労やプレッシャーもひとしお。生まれたばかりの赤ちゃんはしょっちゅう泣いていますし、夜だって長い時間ぐっすり眠ってくれることもなく、数時間ごとに目をさまして元気よく泣きます。きちんとした睡眠も取れず、わんわんと泣き声が響く中すっかり疲れ果ててしまうことも珍しくはありません。生まれたばかりの赤ちゃんからは特に目も離せないので、緊張に耐えきれなくなることだってありますよね。

 

でも、たくさんのお世話が必要な赤ちゃんだって本当はママの味方。家に赤ちゃんとふたり、他に誰の助けも望めないような状況でも、赤ちゃんはそのいいにおいでママをサポートしてくれているのです。

 

赤ちゃんのにおいによって分泌されるドーパミンは、ママのストレスや疲れを癒し、イライラしがちだった気持ちを落ち着けて元気な気分にさせてくれます。気持ちに余裕が生まれれば大変な育児に取り組むモチベーションも出てきますよね。赤ちゃんに対しても疲れから義務的に接してしまうことだってありますが、そのいいにおいを嗅げば元気が回復、もう一度愛情をもって接することができるようになるはずです。

 

これはもちろん、赤ちゃんの方にとってもメリットのあること。ママから手厚いケアを受けなければ赤ちゃんは無事ではいられません。自らのにおいでママを癒し、ママが赤ちゃんを愛し、気分よくお世話ができるようにと工夫してくれているんですね。

 

ママと赤ちゃんはお互いに代わりのいない存在ではありますが、産んだら自動的に愛着関係を築けるというものでも実はありません。悲しいことではありますが、嫌なことばかりではたとえ自分の赤ちゃんであってもなかなか愛せないものです。赤ちゃんのいいにおいは、そんな悲しい親子にならないための赤ちゃんからの手助けでもあります。子育てにはつらいこともたくさんありますが、赤ちゃんとふたり支え合って頑張っていきたいものですね。