education201901

「完ミ」ともいわれる「完全ミルク」の育児。

 

理由はさまざまですが、産院でも検診でも「できるだけ母乳で育てましょう」と言われるなか、新生児期や月齢の低いうちから完全ミルクで何だか肩身の狭い思いをしているというママもいることと思います。

 

でも、本当に完全ミルク育児はそんなに良くないのでしょうか?

 

今回は、完全ミルク育児でママたちが最も気になっているデメリットを調査。そして実際に完全ミルク育児だったママたちはどう感じていたか聞いてみました。

 

「母乳で育てたい」とはみんなが思っているけれど


厚生労働省が平成27年に発表したアンケートによると、妊娠中に「ぜひ母乳で育てたい」「母乳が出れば母乳で育てたい」と考えている女性は93.4%と、全体の9割を超えているそうです。 しかし、実際には生後1か月の時点で完全母乳のママは約半数の51.3%。ミルクとの混合の人が45.2%とほぼ半々ですが、この時点で完全ミルクのママも3.6%存在します。

 

次に生後3か月時点を見ると、完全母乳の割合が少し増えて54.7%。母乳の出かたと赤ちゃんの飲みかたがマッチしてくるまでには1~2か月かかると言われているので、安定してくるのがこの頃なのでしょう。 そして生後3ヶ月時点で完全ミルクのママは10.2%と、10人に1人は完全ミルクになっています。

 

ちなみに、今ママである世代が生まれた昭和60年代には、生後3ヶ月で3人に1人近くが完全ミルクでした。 意外にも最近の方が母乳の割合が高いのは、近年WHO(世界保健機関)の勧告をうけて母乳育児の支援体制が整ってきたことの表れといえるでしょう。

 

しかし、そんな「母乳で育てよう」という世の流れの中で、色々な理由により完全ミルクで育てているママは、必要以上に焦りを感じたり「ママ失格」の烙印を押されたようで辛い気持ちになっているのではないでしょうか?

 

完全ミルク育児のデメリット、ママが最も気にしているのは


産後、完全ミルクになりそうなママや、すでに完全ミルクで育てているけれど「これって大丈夫なのかな?」と心配しているママが気にしているデメリットとは、どんなものがあるでしょうか?

 

新生児期から完全ミルクは免疫がつかない?

インターネット上で、よく検索されているワードを調べてみると、「完全ミルク 新生児」や「完全ミルク 免疫」というものが非常に多く、母乳から赤ちゃんに免疫を受け渡せないことを心配しているママが多いのが分かります。

 

しかし、免疫は100%母乳から受け渡されるのではなく、おなかの中でも赤ちゃんはママから“グロブリン”などの免疫物質をもらっています。

 

また、抗菌・抗ウイルス作用が高い免疫物質の“ラクトフェリン”が特に多く含まれる「初乳」は、通常産後3日~5日間だけ分泌されると言われていて、ほとんどの人が出産後の入院中には多かれ少なかれ飲ませることができているのではないでしょうか。

 

その後に出る通常の母乳(成乳)にも、もちろん免疫物質は含まれているものの、初乳と比べるとその量は100分の1程度と言われます。

 

このほか、赤ちゃんがお母さんからいったん受け取った免疫機能は生後半年くらいまで有効だとされていますが、ここがごっちゃになってしまい「生後半年までは母乳で育てないと免疫が不足する」と勘違いしている人も中にはいるようです。

 

夜中の寝かしつけは母乳にかなわない?

「陥没乳頭で母乳がなかなか飲ませられず、生後1か月経たないうちに完全ミルクに切り替えました。よく飲む子だったので、標準のミルク量は必ず飲み切っていました。でも、夜中はよく泣くんですよね。空腹なのか、他の理由なのか分からなくて、いちおう3時間は飲ませないで、あやしたり抱っこして歩き回ったりしてました。夫から、おなか空いてるんじゃない?ミルク飲ませればいいのに、と言われるのもストレスでした。こんな時、欲しがるだけ飲ませてもOKと言われる母乳はいいなぁ…と」 そう話すTさん(28才・1歳のママ)。

 

真冬の夜中は調乳も授乳も寒くて大変なので、この時ばかりはお布団の中でさっと飲ませられる母乳がうらやましいと感じるママが多いようです。

 

ただ、卒乳が近づいてくるとこれが逆転することも。

 

「子どもが1歳になる頃に保育園のママ数人で話をしていたら、口々におっぱいがないと寝付かないので困ると聞きました。うちの子は添い乳を知らないので、夜中に目を覚ましてもしばらく抱っこするか、トントンたたいてあげるだけで再び寝てくれて、それはありがたいなと思っています。」(Kさん・29歳・1歳のママ)

 

「粉ミルク代がかかる」「ママも赤ちゃんも太る可能性」なども

そのほか、完全ミルクのママに「デメリットだと思うこと」を聞いてみたところ、

 

「唯一のデメリットは、粉ミルクの費用です。母乳だとママの食べる量も増えるけど、それを差し引いてもミルクとフォローアップミルク合わせたら10万円超えるので、完母だったら今ごろ温泉旅行くらい行けたよな~とは思いますね(笑)」(Aさん・30歳・1歳のママ)

 

「一人目はほぼ母乳で育てましたが、二人目は母乳の出が悪く、生後2週間あたりから完全ミルクに。パパに授乳もお願いできて良かったのですが、上の子と大きく違ったのは私の体重でした。母乳をあげてると苦労しなくてもするする体重が戻ったのですが、ミルクだとかなり苦戦しましたね。というか、今も戻ってないです(泣)」(Hさん・33歳・3歳と0歳のママ)

 

「うちの子は、ミルクを8割くらい飲んだところで、いったん口を離すんですね。でも、片付けようとすると泣くので、まだ足りないのかな~とくわえさせたら飲む。私もなんとなくキリがいいとか、ちゃんと飲んでゆっくり寝てほしいとか、捨てるのがもったいないとか色々な理由で最後まで飲ませていたら、検診でちょっと体重オーバー気味って言われちゃいました…」(Uさん・27歳・0歳7か月のママ)

 

などの声が上がりました。

 

そして印象的だったのが、「結局、母乳育児でないとダメと思い込んでいる人から、かわいそうだと非難されることが最大のデメリット」という声がいくつも上がっていたことでした。

 

今、日本で市販されている粉ミルクは栄養も問題ないですし、母乳でもミルクでも、大切なのはママを含めた周りの大人が愛情を持って赤ちゃんと触れ合っているかどうか。

 

特に、完全母乳で育てた経験のある女性が、完全ミルクのママを見下したり批判したりすることは絶対に避けたいですね。

 

まとめ


今回は完全ミルクのママが気になるデメリットをあげてみましたが、「粉ミルク代がかかる」ことをのぞいては、ほとんどが対処できそうなことばかり。

 

また、どのくらい飲んだか分かりやすい・夜間の授乳回数が抑えられママがフラフラになることなくお世話ができる・他のきょうだいの相手もしてあげられる・ママ以外の人にも預けやすいなど、メリットもたくさんありますので、ぜひ負い目を感じることなく育児を楽しんでほしいと願っています。

 

関連記事:液体ミルクはいつから市販?メリットやデメリットは?

 

文/高谷みえこ

参考:厚生労働省「平成 27 年度 乳幼児栄養調査結果の概要」