自分が〝夫源病〟ではないかと悩む女性は、以前より増えているのでしょうか? 最近の傾向などを教えてください。
松本先生:〝夫源病〟は正式な病名ではなく、夫との関係性が原因の「適応障害」と言えますが、診断基準もなく有病率の報告はありません。精神科や心療内科を受診した女性で「夫との関係がストレスだ」と訴える方が多いという印象は受けますが、夫の言動などが原因で体調を崩す女性は以前から少なからずいたはずなので、実際に数が増えたわけではないと思います。 〝夫源病〟という概念が生まれたことで「夫のせいで症状が出ているのかも」と考える女性が増え、結果的に増えた印象なのだと考えています。病気ではないのに言葉がひとり歩きしている、という面もあるのかもしれませんね。では、症状を予防するために、気をつけたらいいことなどはありますか?
松本先生:難しいことですが「夫と距離を置く」ことが、予防という位置づけになるでしょう。しかし「夫婦」という極めて親密な関係性では、それは容易ではありません。差し当たっては、「適度にストレスを解消する」「家事や仕事を可能な限り手抜きして無理を減らす」「周りの人につらさを話してみる」などを試すしかないかもしれません。 もし抵抗がないなら、限界を迎える前に心療内科や精神科を受診するのもいいと思います。医師やカウンセラーには守秘義務があって、第三者に悩みがバレる心配はありませんし、より適切で具体的なアドバイスをもらえる可能性も高いです。その過程で、できるだけ穏便に、一時的にでも「夫との距離をおく」ことを考えるとよいと思います。 そして「自分を責めない」こと。働くママは忙しく働きながら、妻や母という大変な役割を果たしているのですから、もう十分にがんばっているのです。自分をほめて認めて、ゆっくり癒してあげてください。<取材協力>松本拓也先生
尼崎中央病院 心療内科(http://www.chuoukai.or.jp/)
ライター:楠 ゆず
娘と夫、茶トラの猫の3人+1匹で暮らすフリーライター。思い切ってマンションを購入し、ローンパラダイスへ突入中。幼児教育にハマってしまい、興味をもった教材は手に入れないと気が済まない。おかげで家には教材の山が…。断捨離欲と収集欲の葛藤に悩む日々です。