結婚する時に、「子どもは何人欲しい?」と話し合う夫婦は多いと思います。
年齢や体力・働き方などを考え「子どもは一人にしよう」と決めたはずなのに、実際に子どもを育ててみると、どちらかが「やっぱりもう一人欲しい…!」と気が変わったらどうしますか?
今回は、二人目出産について夫婦で意見が食い違った時、みんなはどうしていたのかを聞いてみました。
目次
パターン1:ママが二人目を希望、パパが難色を示す
仕事復帰の前に、やっぱりもう一人産みたい
Yさん(32歳)は、一人目出産後にいったん退職し、2歳の男の子を育てています。保育園にはそれほど苦労せず入れそうな地域なので、いずれ働くつもりはあります。
しかし、長男が成長してくるにつれ、仕事に復帰する前にもう一人子どもが欲しという気持ちが抑えられなくなってきました。
「夫とは、この子一人でじゅうぶん幸せだよね、と話していたはずなのに…。息子のお友だちに弟妹が生まれ、お兄ちゃんらしい行動をしている姿を見たり、少し大きい子たちが公園で仲良く遊んでいる姿を見たりすると、この子もきょうだいと一緒に成長させてあげたいと思ってしまいます」
「ただ、その希望を伝えたところ、夫はかなり難色を示しました。理由は経済面だといいます。今は夫の収入だけで家のローンや生活費は賄えていますが、子どもを中学か高校から私立に通わせることになったら、習い事や塾・部活などで赤字になる可能性が高く、もし医学部や留学を目指すとしたら、私がパートに出たくらいでは、到底子どもを二人持つことなんて無理じゃないのかと」
金銭面の不安解消には、まずは試算を!
たしかに、今の時代は非正規雇用の人も多く、正社員でも突然リストラに遭ったり給与がカットされたりすることも珍しくない世の中です。今は生活に余裕があっても、それがずっと続く保証はないので、家計を支える側として夫が慎重になるのも分かりますよね。
金銭面での不安が原因で二人目は考えにくい…という場合、漠然と「私も働くから大丈夫」と言うだけでは、なかなか夫に納得してもらうのは難しいでしょう。
例えば、概算でも良いので、子どもが一人の場合にかかる費用と二人になった場合の差額を計算してみて、妻が働いた場合にいくら収入が増えるのか、両方を比較したものを数字で示してみましょう。
必要な金額に多少足りないだけなのか、大きく開きがあるのかが分かり、どちらにしても夫婦ともに納得できるのではないでしょうか。
ただ、一人っ子なら金銭の心配がないとも限りません。
老後は子どもの世話にはならないと決めていても、病気の治療費や、親戚の保証人などの金銭トラブル、詐欺や犯罪に巻き込まれて財産を失う高齢者も実際にたくさんいます。
親への金銭的援助の可能性を考えると、むしろ一人っ子の方が負担が大きくなる場合もありますので、「一人なら安心、二人以上は大変」と単純に考えていないか、話し合って確認しておきましょう。
パターン2:パパが「やっぱりもう一人」、ママは「無理!」
夫がもっと自覚を持てなければ、二人目なんて…
Nさん(29歳・1歳のママ)は、結婚当初は特に子どもは何人とは考えていませんでしたが、妊娠中や長女が生まれて育児で大変な時も、夫は変わらずに飲み会に出かけ、家事はほとんどせず週末も自分の趣味で出かけることの繰り返し。
「でも、最近、当然のように“男の子もいいよな~”なんて言うんです。子どもは可愛いけど、家事や育児をまったくやる気のない夫。生まれたらさらに大変になることは分かり切っているので、とても賛成できません。そのことを伝えても真剣に聞いていないし、信用できないのでピルの服用も考えています」
「兄弟いないとかわいそう」よりも、不自由させる方がかわいそうでは
Sさん(27歳)夫婦も、一人目の出産後に夫の気が変わり、「やっぱり子どもにはきょうだいが必要」と二人目を希望し始めたそうです。
「私は、子どもの頃家庭にお金がなくて困ることがたくさんありました。みんなが持っている流行のモノは買ってもらったことがありませんし、習い事もガマンしていました。夫は、一人っ子だと将来親がいなくなった時にかわいそうだと言うのですが、子どもだってその頃には自分の家庭を持っているはず。仮にきょうだいがいても、離れて暮らしていたり疎遠になっている人だってたくさんいます。それよりも、この子が成長するまでお金の心配をかけずにしっかり育ててあげる方が大切なのでは?」
マイナス面が許容できる範囲かどうかがポイント
子どもは一人で…と考えているママは、子どもや育児そのものが苦手だという人は少数派で、子どもを可愛いと感じている人が大多数です。
ママが心配しているのは、二人目・三人目が生まれた時に直面する「家事や育児が回らない」「子どもにじゅうぶんな教育をしてあげられない」などのマイナス面。
他にも、
「私は社内で目指しているポジションがあり、キャリアを中断するのは一年が限界。今二人目を産むとしたら、人生設計をすべて変えることになる」
という人や、
「もう一人家族が増えたら、このマンションを売って引っ越ししないといけなくなる」
「一人目を30代後半で出産。二人目は、何らかの障がいを持って生まれるリスクもある。そこに、両方の親の介護が重なってくる可能性を考えると、夫が二人目を希望しても踏み切れない」
と、二人目出産による今後の生活の大きな変化を心配する声もありました。
夫の気持ちや、きょうだいがいることのメリットは分かっていても、マイナス面が許容できる範囲かどうか…というのが、ママが二人目出産を決断するポイントとなりそうです。
「子どもの人数、当初の予定から変わった」その後の気持ちは?
最後に、「夫婦どちらかの希望を聞き入れ、子どもの人数が当初考えていたのとは変わった」という人たちが、振り返ってみてどう感じているのかを聞かせてもらいました。
最終的に夫の希望を叶えて良かった
40代のHさんは、「子どもは一人で」と思っていたのに、夫がどうしてももう一人子どもが欲しいと折に触れて提案してきたそう。当時のことをこう語ります。
「当時、夫は転職したり、仕事上のケガで入院したりと、経済的に見通しが立たない中での育児でした。私の職場もかなりブラックな環境でしたが夫がそんな状態なので辞めるわけにもいかず、この状態で二人目なんて無理!と断り続けていました」
一度は夫も納得したものの、徐々にお互いの仕事も安定した頃、ふたたびHさんは「やっぱり、もう一人欲しい」と言われたそうです。
「夫にとって、よほど強い願いなんだなとその時感じて、根負けする形で、妊活することにしました。ただし、期間を半年と決めたんです。するとギリギリ半年目に妊娠!二人目が生まれました。年の離れたきょうだいになりましたが、上の子はとても妹を可愛がっていて、今となっては、夫の願いを聞き入れてあげられて本当によかったと思っています」
あきらめたけど、今は幸せ
Jさん(35歳)は、ママがどうしても二人目を欲しかったのですが、結局断念した経験があります。
「夫は、自分の兄姉とは不仲で、実家にいる頃は成績を比べられたり、あまりいい思い出がないそう。私は一人っ子だったので、きょうだいに憧れがあり、子どもは一人がいいと言う夫にしつこく二人目を迫りました。ところが、その影響で夫はEDになってしまったんです」
そこまで夫を追い詰めていたのかと、Jさんは結局二人目はあきらめたそうです。
「でも、あれから5年経ちますが、娘を丁寧に育てることができ、経済的にも時間的にも余裕のある生活。3人で仲良く暮らせていて、とても幸せですよ」
もう孫もいるけど、本音は今でも残念
50代のUさんにもお話を聞いてみました。
「息子に孫が生まれて、よく家にも顔を出してくれるのでとても楽しい日々です。ですが、本当は当時女の子がほしかったんです。産み分けをしてでももう一人…と夫に希望しましたが、夫は最初に子どもは一人と決めたのだし、無理だと。たしかに、女の子が生まれる保証もなかったし、もし次も男の子だったらどうするんだと言われると引き下がらざるを得ませんでした。でも、今も心のどこかで、娘が欲しかったという気持ちはずっと残っています。あの時、もう少し粘っていたら…と」
「二人目が欲しい」のまとめ
「今いる子がかわいいから、この子だけでも十分」
「今いるこの子に、お金の苦労をさせたくない」
「一人でもこんなにかわいいのだから、もう一人いたらもっと幸せ」
「かわいいこの子に、きょうだいがいる幸せを味わわせたい」
…どの気持ちも分かりますよね。
「きょうだいは一生の友達」
「二人なら上下関係が学べる、三人なら社会性が学べる」
などの言葉もありますが、一人っ子にもきょうだいにもそれぞれの良さがあり、夫婦の価値観も家庭ごとに異なるのが当たり前。どれが正解で間違いというものではないと思います。
大切なのは子どもの人数ではなく、「お互いが納得できるまで話し合った結果かどうか」ではないでしょうか。
文/高谷みえこ