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2018年8月に、日本での製造販売が認められ、店頭で買える日が近づいてきたと思われる「液体ミルク」。

 

その一方で、災害時に寄付された液体ミルクの使用方法がよく分からずに「衛生管理が難しいので使用しないように」と自治体が使用を自粛してしまい、ほとんど使われずに終わってしまうという問題も報道され、ツイッターなどのSNSでも話題になっています。

 

今回は、この「液体ミルク」とはどのようなものか、いつから買えるのかなどを調べてみました。

目次

液体ミルクは、粉ミルクとどう違う?


液体ミルクは、名前のとおり、すぐに飲める状態に調乳されて容器に入っている赤ちゃん用のミルクのことです。

 

ペットボトルや紙パック状の容器で、手持ちの乳首を付け替えて飲ませるタイプや乳首付きのタイプがあり、海外ではスーパーなどで手軽に買うことができます。

 

北欧・イギリスやアメリカ・韓国などでは国産メーカーの液体ミルクが市販されていますが、日本ではつい最近まで製造はもちろん販売も許可されていなかったため、使いたい人は、割高にはなりますが通販などで海外から購入していたそうです。

 

日本で液体ミルクが注目されるきっかけとなったのは、阪神大震災・東北大震災などが起こった時。

 

お湯を沸かすことのできない避難所で、誰でもミルクをあげられるとして重宝され、2016年には解禁に向けての署名が12000人分も集まりました。

 

すでに東京都では災害に備え、独自に大手流通と協力してフィンランド製の液体ミルクを輸入、備蓄しているそう。

 

2016年に起こった熊本地震や2018年の岡山や愛媛の水害では、災害支援物資としてこの液体ミルクが寄付されました。

 

同じく2018年9月の北海道地震でも、東京都から現地へ液体ミルクが送られたのですが、現場では「国内で使用例がない」「説明書がなく使い方がわかりにくい」「保存に不安がある」などの理由で「キケン!飲むな」と貼り紙がされ、実際に使われたのは1本だけだった…というニュースも話題になりました。

液体ミルクのメリット


いよいよ日本で製造販売が可能となった液体ミルク、メリットとしては次のようなものがあります。

時短

時間をかけずにミルクを準備できるので、体調が悪い時や夜中の授乳などで助かりますね。双子など複数の赤ちゃんにミルクをあげる時も待たせなくて済みます。

計量が不要

祖父母など、粉ミルクを作り慣れていない人でも失敗したり量を間違ったりすることがありません。

外出中に便利

長距離の帰省などでは、持参したお湯が途中で冷めてしまうことも。高速道路のパーキングエリアでは、適温のお湯が手に入らないこともありますよね。

荷物を減らせる

外出時、必ず持っていかなくてはならなかった「粉ミルク+哺乳瓶+お湯+湯冷まし」のセットが不要になると、荷物はかなり減ります。

粉ミルクを切らしてしまった時に安心

うっかり粉ミルクを忘れて出かけてしまったり、不測の事態で外出が長引いた時などに、コンビニなどで出来上がったミルクがさっと買えるようになったら助かりますね。

衛生的

液体ミルクは、容器はもちろん、ミルクも栄養成分を損なわない方法で滅菌されています。消毒が不十分な哺乳瓶や、時間の経った湯冷まししか手元にない場合、液体ミルクがあると安心。

液体ミルクのデメリット


しかし良いことばかりではなく、液体ミルクには次のようなデメリットもあります。

温度管理が難しい

保管時の温度は、製品により異なりますが、25度前後というものが多いようです。製造国の気候風土を基準に作られていますので、高温多湿な日本では、使いにくい時期も出てきます。

 

夏場は冷蔵庫で保管が必要。反対に、冬場は室温保存では冷たすぎるので、飲む時に適温に温めてあげる必要があります。

粉ミルクと比べると値段が高い

海外では、液体ミルクは1本100円~150円程度のものが多いようです。これは同量の粉ミルクと比較すると、(国により多少異なりますが)1.5倍~2倍ほどの価格になります。

 

日本ではこれまで輸入するしか手に入れる方法がなかったため、送料も加わり、1本500円前後とさらに割高でした。今後、スーパーやドラッグストアで購入できるようになれば今より値段は下がるはずですが、粉ミルクより割高になることは確かでしょう。

消費期限が短い

「消費期限が短い」といっても、液体ミルクは未開封の状態なら3ヶ月から半年は保存できるので、牛乳のような感覚ではありません。ただ、粉ミルクは開封しなければ1年以上保存可能なので、比較すると液体ミルクの消費期限は短くなります。

開封後は保存できない

こちらも製品により異なりますが、開封して赤ちゃんが口をつけたら1時間以内に消費することが必要。それ以降は雑菌の繁殖が心配されるので、飲まなかった分は捨てなければなりません。(すぐ冷蔵庫に入れれば12~24時間まで保存OKなものもあります。)

一度に飲み切れない

現在輸入されている液体ミルクは200ml~240ml入りのものが多いですが、低月齢のうちは一度に200ml飲みきれないことも多いですよね。

 

また、よく飲む赤ちゃんだと反対に200ml1本では少し足りず、2本では多過ぎる…という場合も。

 

冷蔵保存できないタイプであれば、無駄が出てしまう可能性があります。

液体ミルクはいつから普通に買えるの?


2018年8月にいよいよ認可されたとはいえ、海外製の液体ミルクを輸入して店頭で販売しているスーパー・ドラッグストアなどの量販店は、まだほとんど見当たらないようです。

 

しかし、今後、ママタレントがSNSで「使ってます!」「いいよ!」などと発信したり、全国で需要が高まってきたりすれば、店頭に並び始めるのも時間の問題ではないかと筆者は思っています。

 

一方、国産ミルクメーカーの液体ミルクはいつから販売されるでしょうか?

 

少し前まで、食品衛生法で「乳幼児用の食品=粉乳」と限定されていたため、国産メーカーは開発に取り組んでこなかったという経緯があります。

 

今後、国内の自社で液体ミルクを製造するには専用の設備の導入が必要です。少子化で収益の見通しが不透明ななか、多額の設備投資をして国産ミルクメーカーが商品化に動くかどうかはまだ分からないですね。

 

しかし、日本の気候に合った保管方法や成分、何か分からないことがあった時のサポート体制などをクリアして、日本製の液体ミルクが販売されるようになれば、ママもより安心なのではないでしょうか。

液体ミルクまとめ


2018年秋の現段階では、まだ私たちの買える液体ミルクは海外製に限られ、インターネットなどでの販売が中心のようです。

 

しかし、温度管理や価格などを考えると毎日の使用は難しくても、母乳や粉ミルクとうまく組み合わせて使うことでこれまで大変だった外出先や夜中の授乳が少しでもスムーズになれば、赤ちゃんもママも快適に過ごせるかもしれませんね。

 

文/高谷みえこ

参考:内閣府男女共同参画局「乳児用液体ミルクの普及に向けた取組」

東京新聞2018年10月23日夕刊(社会面)