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妊娠中は、ホルモンバランスや体型の変化によって体のあちこちにトラブルが起こります。

 

なかでも、突然足がつり、ふくらはぎや足の裏などがギューッとけいれんする「こむら返り」は、半数以上の妊婦さんが経験するとも言われています。

 

妊娠中のこむら返りは、特に夜寝ている時に起こることが多く、毎晩のように痛みで目が覚めて辛い思いをしている人もいるかもしれません。

 

今回は、妊娠中によく足がつる原因や予防する方法、もし夜中に足がつってしまったら…などの対策をまとめてみました。

目次

こむら返り・足がつる、妊娠中に多い原因は?


こむら返り(足がつる)とは、ふくらはぎなど特定の筋肉が異常に激しく収縮している状態をいいます。

 

なぜそんなに激しく収縮するのか?その理由は二つあります。

 

一つ目は、筋肉が必要以上に伸ばされた状態が続き、元に戻ろうとするため。

 

サッカー選手などが試合中に足がつって応急処置をしてもらう映像はおなじみですが、スポーツ時に同じ動きを続けると、反動で筋肉が収縮して足がつると考えられています。

 

同様に、妊娠後期では骨盤が開くにつれて歩く時に筋肉にかかる力のバランスが変わることや、眠っている時も寝返りがしにくいため、どうしても長時間同じ姿勢で眠ることになりがち。その結果、伸び切った筋肉が元に戻ろうとして収縮するのだと考えられています。

 

二つ目は神経回路の異常です。

 

正常な時には、脳から脊髄→末梢神経→筋肉組織へと指令が伝わり、収縮と弛緩を繰り返すことで私たちは足を動かしています。

 

また筋肉や関節の現在の状態は、神経回路を通じて脊髄に情報が戻され脳へ伝わりますが、この回路のどこかで異常が生じると、間違った指令が筋肉へと伝わってしまい、過剰に収縮するのではないかと考えられています。

 

筋肉の神経回路が正しく働くためには、新鮮な血液によって水分やミネラル分が十分に供給されていなければなりませんが、妊娠中は大きくなったおなかが足の付け根の動脈を圧迫するので、下半身の血流が悪くなりがち。

 

また、カリウム・カルシウムといった電解質も欠かせませんが、胎児に栄養をあげている妊婦さんの体の中ではこれらが不足しやすくなります。

 

「冷え」も足がつる大きな原因。学校の水泳授業中などでもよくこむら返りを起こす子がいますが、これは「冷え」が血行不良を引き起こし、水分やミネラル不足が起こるためと言われています。

 

妊婦さんは汗をかきやすくトイレも近くなりがちなので、水分不足が血行不良につながっているケースもあります。

足がつった後、ずっと痛みが続くのはなぜ?


夜中に足がつり、なんとかおさまったものの、次の日や、時には数日間も痛みが続く…と悩んでいる妊婦さんも多いですね。

 

筋肉痛に似た痛みのことが多いですが、中にはしびれを感じる人や、「引きずりながら歩いています」というほど症状がひどい人も。

 

こむら返りは、筋肉の過度な収縮・緊張が続くものなので、それだけ筋肉はダメージを受けています。激しい運動をした後に筋肉痛が起こるのと同じ状態なので、しばらく痛みが残ることも珍しくないのですね。

 

ただ、あまりにも頻繁に足がつるとか、治そうとして強く筋肉を伸ばしすぎたような場合は、軽い肉離れを起こしていることもあります。

 

歩けないほどの痛みや、数日以上痛みがおさまらない、いつもと違う…と思ったら整形外科などを受診する方が安心。受付時に妊娠中であることを伝えておきましょう。

妊婦が足をつるのを予防するには?


妊娠中のこむら返りを完全に防ぐことは難しいですが、少し工夫することで、夜中に痛みで目が覚めてしまう回数を減らせたらいいですよね。予防には次のような方法があります。

 

ミネラル分の多い食材を食べる

神経回路の異常を防ぐのに欠かせない各種ミネラルは、以下のような食材に多く含まれています。バランスよく毎日の食事に取り入れてみて下さい。

  • カルシウム…乳製品、骨ごと食べられる小魚、高野豆腐など
  • カリウム…バナナ、プルーンなどのフルーツ、アボカド、豆類、イモ類
  • マグネシウム…大豆製品、海藻類など
  • 亜鉛…貝類、レバー、切り干し大根など

 

ナトリウムとカリウムのバランスが崩れると、こむら返りだけでなく、むくみ・高血圧などの原因にもなるため、検診時の指導などに従い塩分量にも気をつけましょう。 

眠る時の体勢にもひと工夫

妊婦さんの安眠におすすめとよく紹介される「シムスの体位」。身体の左側を下にして、横を向いて眠る体勢です。 

 

身体の右側に大きな静脈があるので、ここを圧迫しないことで血流がよくなり、こむら返り防止や安眠に効果的だと言われています。

 

また、足を伸ばしたままで眠ると反動で収縮するリスクが高まるので、軽く曲げた状態のほうがこむら返り予防には良いと言われています。 

ソックスで血流促進

市販のむくみ防止ソックスや着圧ソックスは、血液が末端に滞ることを防いでくれます。ただし圧の高すぎるものは血流を阻害してしまい逆効果なので、ほどほどのものを選ぶのがポイント。

冷えを防止

「冷え」も足がつる大きな原因になるので、靴下・レッグウォーマー・湯たんぽなどで温めるようにしましょう。「おやすみ前に足湯をすると、足がつらずに眠れた」という先輩ママの声も。

湿布や薬は、産婦人科で確認を

こむら返りのあとが痛くて湿布を貼りたくなることがあるかもしれませんが、市販の湿布に含まれる「消炎鎮痛剤」の中には、お腹の赤ちゃんの「動脈管収縮」という危険な状態を引き起こすものもあります。

 

産婦人科では妊娠中でも安全な湿布を処方してもらえますので、まずは相談してからにしましょう。

 

妊婦さん同様よくこむら返りが起こるお年寄りに対しては、安眠のために神経系に作用する薬が処方されることもありますが、妊娠中にはこれらは通常使われません。

 

産院によっては、芍薬甘草湯や五苓散など、こむら返りに即効性がある漢方薬を取り入れているとこともありますが、いずれも自己判断でなく、医師に相談した上での使用が必須です。

それでも足がつってしまったら?


臨月が近づいてくると、もし足がつってしまっても、大きなお腹が邪魔をしてつま先をつかんで引っ張る動作ができないですよね。そんな時は、壁に足裏をつけてグッと押すだけでも、何もしないよりは効果があります。

 

さらに効果的なのがパパに「妊娠中は足がつりやすい状態だから、夜中に手当てをお願いするかも?」と前もって頼んでおくこと。

 

男性は、「察して」「気をきかせて」と言われるより、具体的に何をしたらいいか事前に分かっていると張り切る傾向があり、困りごとが解決してほめられることが大好きなので、「助けて!」と頼めば喜んでやってくれる確率は高いですよ。

 

痛みを翌日にできるだけ残さないため、こむら返りがおさまってからも、やさしくマッサージしておくとより効果的です。強くもんだり引っ張ったりすると、もともとダメージを受けている筋肉をさらに傷めてしまう可能性がありますので気をつけて下さいね。

妊婦が足をつるまとめ


今回は、妊娠中のマイナートラブルで辛いもののひとつ、「足がつる(こむら返り)」について特集しました。

 

幸い、出産後、ほとんどの人がこむら返りの症状は消えるそう。今、足がつって苦しんでいる人は、今回紹介した方法もぜひ取り入れながら、あと少しの期間を乗り切って下さいね。

 

文/高谷みえこ 

参考:獨協医科大学越谷病院神経内科教授 宮本智之「こむら返り」 

日本産婦人科学会「漢方療法シリーズ  妊娠と漢方」