みなさんは「出生前診断」についてどうお考えでしょうか? ダウン症をはじめとする染色体異常が明らかとなる出生前診断。妊娠初期に胎児の染色体異常を見つけることができることから「命の選別につながるのでは?」と賛否両論。

 

今回、この出生前診断を受けたことのあるママに、当時の心境や覚悟、検査内容について話をうかがいました。新型出生前診断(NIPT)を行なっているクリニックの取材も、あわせてお読みください。

 

妊娠15週目「クアトロテスト」を受けました(早苗さん/39/飲食店勤務)

結婚して2年目、34歳のときに妊活をスタート。幸いにも、すんなり妊娠することができました。ただ、初めての赤ちゃんなので不安もあり…病院から特に勧められることはなかったのですが、妊婦さん向けの雑誌に「出生前診断」のことが載っていたため、旦那と相談して、一緒にカウンセリングを受けることにしました。

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どんなことがあろうと産むつもりでしたが、心の準備や何かあった時の環境を整えるためにも、できる限りのことは事前に知っておきたいと思ったのです。

 

妊娠15週目に私が受けたのは、血液中の成分を調べることでダウン症や開放性神経管奇形の可能性がわかる「クアトロテスト」というもの。検査精度は80%と決して高いわけではありませんが、「どのような結果であっても産む」と決めていた私たちにとっては、費用の安さと血液検査のみでできる手軽さはとても魅力的でした。

 

血液検体はアメリカで検査するとのことで、結果が出るまで待つこと2週間。赤ちゃんに異常がある可能性は低いとのことで、ひと安心しました。生まれてきたのも、元気な男の子でした。

 

精度の高い「羊水検査」を受けました(睦美さん/38/事務員

35歳になってすぐ、3人目を妊娠しました。高齢出産ということもあり「クアトロテスト」を受けたのですが、残念ながら「ダウン症の可能性が高い」との結果が出ました。出生前診断については「命の選択はすべきでない」という声もありますが、実際に育てるのはその子の家族。とても大きく、重い選択です。

 

うちにはすでに小さな子どもが2人、フルタイムの共働きである私達夫婦の元に障害のある子どもが産まれたら…仕事を辞めることになるかもしれないし、そうなると生活はどうなるのか…思い悩んだ末、本当に異常があるのかどうか調べるため「羊水検査」を受けることにしました。

 

羊水検査はお腹から針を刺して、羊水を直接採取して調べる確定診断です。クアトロテストにくらべると、かなり精度の高い検査とのことでした。ただ子宮へ針を刺すため、感染症や、最悪の場合流産等のリスクがあるとのこと。

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不安もありましたが、看護師さんが「流産はあくまでも可能性であって、そうなる確率は限りなく低い」と優しく説明してくれました。分娩室では、お医者さんが丁寧に説明をしながら慎重に検査を進めてくれました。15分程度で終わり、痛みもありません。ただ、検査後2時間は自分で歩くのは禁止でした。

 

2週間後に出た結果では、染色体異常はないとのことでひと安心。クアトロテストは偽陽性だったようです。子どもたちも新しい家族が増えるのを楽しみにしてくれていたので、本当によかったです。

 

 新型出生前診断(NIPT」を受けました(紗良さん/40/公務員)

妊娠がわかると新しい家族が増えることが楽しみになり嬉しい気持ちになる反面、元気に産まれてきてくれるかどうかも不安になりますよね。私が2人目を妊娠したのは37歳のときでした。高齢出産であるため、少し高額な検査にはなりますが、母体の血液から赤ちゃんのDNA断片を測定する「新型出生前診断(NIPT)」を受けることに決めました。

 

同じ血液検査で費用の安い「クアトロテスト」と迷ったのですが、受けたことのあるママ友から「NIPTは検査精度が高いから、陰性だったら安心して妊娠生活を送れるよ」と教えてもらったのが決め手でした。

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ただNIPTは実施している病院が限られており、適応の条件も厳しめ。自身で病院を探し、仕事が休みの日に予約を入れました。検査自体はすぐに終わったのですが、検査結果が届くまでは頭の中が検査結果のことでいっぱいで、朝晩ポストを見る日々でした。結果は「低リスク(陰性)」とのことで、ひと安心。

 

NIPTは赤ちゃんの性別もわかるので、さっそく翌日からベビー服を買いに行ったりグッズを揃えたり。待っている間は不安でしたが、受けてよかったと心から思いました。

 

医師に聞いた「出生前診断」の心構え

東京・銀座で新型出生前診断(NIPT)を行っている「A CLINIC銀座」の佐藤玲史医師にお話をうかがったところ、「新型出生前診断(NIPT)」の魅力は99%以上を誇る「診断精度の高さ」と、血液採取のみで行えるため「流産や感染症のリスクがない」ことだと言います。

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「高齢出産が増えるなか、不安な気持ちを抱きながらマタニティライフを送る女性は少なくありません。『検査を行ったことで心穏やかに過ごすことができた』と言う妊婦さんもいれば、『妊娠中に異常がわかったことで心の準備ができた』という妊婦さんもいます。どのような結果が出るにせよ、大切なのは検査をする前から自身とご家族の意思を固めておくことではないでしょうか」(佐藤医師)

 

今回は出生前診断を受けたことのあるママ3人に話を伺いましたが、それぞれ「障害があっても産んで育てる準備をするため」「妊娠中に安心して過ごすため」そして「異常が見つかったら中絶をするため」とそれぞれの意思を持って検査を行っていたのが印象的でした。

 

生まれてきた赤ちゃんを育てるのは他の誰でもなく、お母さんとお父さんです。佐藤医師が言うように、検査前に旦那さんと話し合い、気持ちをひとつにしておくことが重要かもしれません。妊娠したすべての女性が、健やかな妊娠生活を送れますよう!

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<取材協力>

A CLINIC銀座 佐藤玲史医師

ライター:芳野美穂