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公園や育児支援センターなど、小さい子の集まる場所で必ず起こるのが「おもちゃの取り合い」。

 

他の子が遊んでいるおもちゃを使いたいけど「貸して」が言えなかったり、反対に今使っているおもちゃを「貸して」と言われても「いいよ」と貸してあげられなかったり…。

 

状況は色々ですが、子ども向け番組やDVDなどでは「貸して」「いいよ」「どうぞ」がお約束のようになっているので、わが子がその通りにできないと焦ってしまいますよね。

 

「今使い始めたばかりなのに“どうぞ”って正しいの?」とモヤモヤしているママもいるかもしれません。

 

今回は「貸して」「いいよ」は必ず言えないといけないの?というママの疑問を、以前話題になった教育番組の意外な回答なども参考にしつつ考えていきたいと思います。

「いいよ」と言えなくていい?!話題になったNHKの番組とは


2016年1月に、NHKの教育テレビ「すくすく子育て」で放送され大きな反響を呼んだのが、次のような視聴者の質問に対する井桁容子さん(保育専門家)の回答でした。

 

息子は友だちと遊んでいても「ありがとう」「ごめんね」「おもちゃを貸して」などを自発的には言えません。また、友だちがおもちゃを貸してほしいとお願いしてきても、貸そうとしません。おもちゃを貸してあげられるような「思いやり」を育てるには、どのような言葉がけをすればいいのでしょうか?(2歳9か月の子をもつママより)

 

相談者は、おもちゃを貸せない理由を「思いやり」が育っていないからだと考えていましたが、井桁さんの回答は少し意外な内容でした。

 

  • 子ども自身が納得していなければ、「いいよ」と言えなくていい
  • 納得していないのに親が「いいよ」と言わせると、将来自分の気持ちをちゃんと言えなくなる
  • 「これは大事だから今は貸せない」と自分の気持ちを言える方がいい

 

…と、「子ども自身の気持ちが守られてこそ、人の気持ちも大切にできる」というお話をされたのですね。

 

また、少しドキッとする表現ですが、「貸して」は「今すぐそれをよこせ」という、一種の恐喝だとも。 多くのママが、「貸して」に必ず「いいよ」と答えさせるやり取りにモヤモヤするのは、こういう部分かもしれません。

「貸して」「いいよ」と言えるかは年齢がポイント


子ども同士おもちゃの取り合いが起こり始めるのは赤ちゃん時代からですが、保育士さんにたずねてみたところ、「貸して」「いいよ」というやり取りが成立するのは、3歳がひとつのターニングポイントのようです。

 

上でも述べたように、3歳までは「自分はこれが好き、大切」という気持ちを表現できることの方が重要なのに加え、3歳以降の子には未来の見通しができる能力が育ってくることも理由のひとつです。 もちろん個人差はありますが、2歳台までの子にとって「貸す(手放す)」ことは二度と戻ってこないことを意味しています。

 

しかし、3歳を過ぎると「また戻ってくる」という見通しが立てられるようになるのですね。

親が介入しすぎた場合の悪影響も


「貸して」と言われていつでも「いいよ」と渡すように子どもに教えてしまうのは、将来、周囲のいいなりになる可能性以外にもデメリットがあります。

 

大人が、「“いいよ“は?」「早く貸してあげなさい」と声を掛けるのをグッとこらえて見守っていると、子どもは「もっと遊びたいのに貸すのは嫌だな、どうすればいいかな?」と考えたり、貸してもらえなくて悲しかった経験から、次に自分が貸してと言われたら相手があの時の自分と同じように感じていることを理解できるようになったります。

 

また、「今使っているみたいだから終わったら貸してもらおう」と考えることで、客観的に周囲・他人の状態を判断する訓練にもなります。

 

毎回親が介入して、「ほら、“いいよ”って言おうね」と言い聞かせていると、こういった貴重な体験・学びの機会を失ってしまうのですね。

ママやパパにできる関わり方のポイント


とはいえ、実際におもちゃの貸し借りでもめている現場に立ち合ってみると、なかなか見守るのは難しいもの。

 

特に、公共のプレイルームなど初対面の相手だと、「しつけができていない親」と思われたくないという親の都合で子どもに無理な要求を呑ませることになりがちです。 そうならないために、ママやパパにできることや、おすすめの声がけをまとめてみました。

 

「貸して」と言われた時の対応


「貸して」と他の子に言われた時、本人が納得して「いいよ」と渡せたならもちろんそのままでOKですが、そうでない場合、子ども本人にどうしたいか聞いてみるのも良い方法です。

 

今遊び始めたばかりでもっと遊びたいなら、相手の子に「まっててね」と伝えたり、ある程度遊んだもののまだ興味があるなら、いったん渡して「あとでまた貸してね」と頼んだり…「いいよ」以外の選択肢があることや、貸せない時も「イヤ」だけではなく、どうしたらいいのか相手に示すように教えていきましょう。

貸してほしい時の対応


これまで、「貸して」と言っていたなら、少し変えて「つぎ、貸して」に変えてみると、相手の子も納得してくれやすくなります。

 

それでも断られたり、いつの間にか別の子に渡っている…というのも、子ども同士ではよくあることです。でも、結局思い通りにならなかったとしても、ママが「残念だったね」「遊びたかったよね」と共感してあげることで、子どもも意外と気が済んだり、次への糧にしたりできるはず。

 

また、いつもよく遊ぶ子どうしでたびたび取り合いになってしまう場合、あらかじめママ同士で話し合って、危険がないところまでは見守るという方法をとっている人もいます。

子どもの気持ちに寄り添いながら見守ろう


小さいうちはアニメや絵本のように、いつでも「貸して」「いいよ」させる必要はないことが分かって、少しほっとしたママも多いのではないでしょうか。

 

もちろん、貸し借りがスムーズにできるようになるのが子どもたちにとっても楽しく遊べる環境なのは間違いないですが、それまでにはまだまだ時間が必要。子どもの気持ちも大切に、適切にフォローしながら見守っていきたいですね。

 文/高谷みえこ

参考:NHKエデュケーショナル「すくコム」 https://www.sukusuku.com/contents/qa/27398