子どもの風邪症状の感染症の1つに、「RSウイルス」があります。 そういえば、保育園で感染者が出たという貼り紙を見た…… と、思い当たるママもいるのではないでしょうか。 RSウイルスは冬場の流行りだけでなく、 夏の終わりから初秋にかけて流行り出すこともあるようです。 そこで、病気の特徴について、 小児科医の保田典子先生に 分かりやすく解説してもらいました。
どんな症状?
「RSウイルス」の症状
生後1歳までにほぼ半数の子どもが感染し、2~3歳までにほぼ全ての子どもが経験する乳幼児の代表的な疾患です。秋〜冬に流行のピークがありますが、夏の終わり〜初秋に出始めるので、注意が必要です。 咳、鼻水がメインの風邪症状が出ます。他の風邪に比べて、鼻水が多いのが特徴です。大人がかかると軽い風邪で済むことが多い場合や、「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」といって感染していても症状が出ない人もいます。 しかし、2歳未満の小さな子では、喘息のようなゼイゼイとした呼吸や鼻水、鼻づまりの症状が出ることも多いので注意が必要です。そのような症状が出ると、呼吸が苦しくなって寝られなくなったり、おっぱいやミルクが飲めなくなったりします。 特に生後半年までの赤ちゃんでは症状がひどくなることが多く、細気管支炎、肺炎の症状が出ると入院が必要な場合も多いので、経過をよく観察しましょう。症状が出始めて4〜5日くらいが症状のピークのことが多いですが、小さな子だと咳や鼻水が長引く場合もあります。
何が原因なの?
風邪の一種のウイルス「 RSウイルス」が原因。接触、飛沫感染に注意!
「RSウイルス」という、風邪の一種のウイルスが原因です。残念ながら、一度かかると免疫がつくということはなく、複数回感染していしまいます。 主な感染源は、接触、飛沫によるもの。感染した人は、くしゃみや咳などにより周囲1〜2メートルの人に感染させるおそれがあるので、マスクの着用が必須です。
自宅での対策は?
家での“ケア”はどうすべき? 鼻水をこまめに吸ってあげて!
特にRSウイルスに効く特効薬はなく、「対症療法」といって症状に対する治療をしながら本人の力で治していくしかない病気です。鼻水が多い病気なので、こまめに鼻水をとってあげると、子ども自身は楽になります。呼吸が苦しくないようであれば、鼻かみや拭いてあげるだけでいいですが、咳がひどかったり鼻づまりで苦しそうな場合は、鼻水を吸ってあげましょう。特に「食事の前」「お風呂の後」「寝る前」に鼻水を吸ってあげると有効です。 また、寝る際は「布団をしっかりかけてあげて暖かく」と思いがちですが、咳がひどいときは体が温まると咳がひどくなり、眠れなくなることがあります。寝入りは涼しめの格好をさせ、タオルなどで頭を高くしてあげると、寝つきやすくなります。寝入ってから冷えないように布団をかけてあげるとゆっくり眠れる場合も多いので、試してみてください。 空気が乾燥している場合は、加湿に気をつけてあげると、呼吸が楽になることが多いようです。
家での“食事”はどうすべき? お風呂は?
食事は食べられるものをあげましょう。 咳がひどい場合は、少し固めの食事だと咳き込みの刺激で吐いてしまう事があるので、やわらかく食べやすい食事を心がけてください。雑炊やうどん、子どもが好きなゼリーなどでもいいでしょう。 お風呂は、熱がなくて元気があれば普通に入浴して大丈夫です。ただ、咳が多いときは体が温まると咳がひどくなることがあるので、シャワーで済ませたほうがいいかもしれません。
家族感染で気をつけることは?
兄弟がいる家庭では、部屋を分けるなどの隔離をしないと感染を防止するのはむずかしいです。手洗いの徹底や、子どもがよく触るものを消毒することで予防ができます。大人が感染して重い症状になることは少ないので、親はマスクなどで予防をし看病をしてあげましょう。 一番注意すべきは、親から赤ちゃんにうつしてしまうこと! 親は軽い風邪だと思っていたのに、赤ちゃんに感染したらとても悪くなってしまった……ということが少なくありません。特に生後すぐの赤ちゃんがいるご家庭は、「親の健康管理と感染対策」はとても大事です!
いつ登園できる?
登園の目安は「熱が下がって咳が落ち着いたら」
熱が下がって咳がある程度落ちついていたら、登園可能です。RSウイルスは保険診療で検査できる子は限られているので、多くの患者さんは診断されていない事が多いです。
保田先生よりひとこと
RSウイルスと診断されていても、ただの風邪と診断されても、対策は変わりません。 しかし、生後半年未満の小さなお子さんの場合は重症化することが多いので、「風邪症状がひどいな……」と感じたら受診して相談してみるといいでしょう。大事なのは、「鼻水をしっかり吸う」こと。コツをつかめば家庭でもしっかり取れます。電動の鼻水吸引器などもあるので、利用してもいいでしょう。家庭でのケアもしっかりしてあげると、少しでも楽に乗りこえることができますよ。
取材・文/松崎愛香 撮影/斉藤純平 トップ画デザイン/山本めぐみ(el oso logos) イラスト/岡村優太