夏になると、子どもたちの間で感染しやすい病気の上位3位が 「手足口病」「ヘルパンギーナ」「プール熱」の3つ。 この3つは総称して「夏の3大感染症」とも呼ばれるほどです。
今回は、かかると長引きがちな「プール熱」をピックアップ。 前回記事にて紹介した「手足口病」「ヘルパンギーナ」とは 少し症状が異なります。
●症状は? ●自宅でのケアは? ●どれくらいの目安で登園できるの? など、それぞれの病気の特徴について 小児科医の保田典子先生に 分かりやすく解説してもらいました。
どんな症状?
「プール熱(咽頭結膜熱)」の症状
発熱から始まることが多い感染症です。特徴的なのは、目とノドが真っ赤になる症状。特に目の症状が強く、片目ずつ目やにが出たり、下まぶたの内側が赤くなるというケースが多いようです。 熱が長引くのも特徴のひとつで、5日ほど続く場合も。発熱した場合、小児科では3日ほどは様子を見るのが普通ですが、それ以上続く場合は検査の対象に。目の症状が出ない場合は検査してはじめて、「プール熱」と判明することもあります。
何が原因なの?
アデノウイルスが原因。プールでの感染に注意!
「かぜ症候群」を引き起こす主要病原ウイルスのひとつ「アデノウイルス」が原因。そのなかでもプール熱(咽頭結膜熱)と流行性角結膜炎(はやり目)は、目の炎症を引き起こすため“タチが悪い”病気とされています。 とくに咽頭結膜熱は、プールの水を介して流行が拡大することが多く「プール熱」と呼ばれています。年間を通して発生しますが、園や学校でプールがスタートする6月末頃から夏季にかけて流行することが多い病気です。 アデノウィルスにはいくつかの型があり、真夏の流行シーズンにはいくつかの型が同時に流行ることもあるため、一度かかったとしても、またかかる場合も少なくありません。
自宅での対策は?
家での“ケア”はどうすべき?「冷却シート」の効果は?
こちらも手足口病・ヘルパンギーナ同様、病気自体に効く特効薬はありません。熱を下げる解熱剤をうまく使い、できるだけ安静にしておくことが必要です。 プール熱は、高熱が続く場合が多いので、自宅でできることといえば、よく体を冷やすこと。よく聞かれるのが「冷却シート」の効果についてなのですが、これは実は、解熱効果はないというのが立証されています。さらに、おでこに貼ったものが寝返りなどでずれてしまい窒息の恐れもあるので、私は推奨しません。特に、0歳〜1歳の子には使用を控えてください。 体を冷やすのには、昔ながらの氷まくらをオススメしています。ワキのした、首のうしろなどを冷やすと効果的です。 目の炎症は、症状によっては目薬が処方されます。目やにや結膜炎(充血)には抗生剤やステロイドの点眼薬を、かゆみには、抗ヒスタミン薬やステロイドの点眼薬を使用することで、対処します。 小さな子どもは目薬を嫌がる子が多いので、コツをつかんで素早く処方を。ママのひざに頭を置いて仰向けに寝転がらせ、目をつぶらせた状態で下まぶたを少しこじ開けるようにして素早くさしましょう。目薬をさしたら「治る魔法だよ、“1.2.3.4.5”」と5秒ほど数えてあげるのもいいかもしれませんね。
家での“食事”はどうすべき?
ノドの痛みがある場合も多いので、食べたがらない子もいます。できるだけ刺激が強いものは控え、うどんや冷めたスープなど、のどごしのよいものを食べさせてあげましょう。 また、脱水症状にならないように水分はしっかりと摂取させましょう。ジュースでも構いませんが、刺激の少ない味のものがベターです。
家族感染で気をつけることは?
アデノウイルスの感染力はとても強いので、手洗い・うがいをしっかりと行うことでウイルスを体内に入れないようにしましょう。 主な感染は、飛沫感染と接触感染によります。ここで注意したいのは、「接触感染」。ハンカチやタオルの共有は避け、目やにの処理などは、ティッシュや除菌シートなどの使い捨てのものでふき取ってすぐ捨てましょう。付着したタオルは洗濯機で洗っても感染する恐れがあるので、分けて洗濯を。感染した子どもが触ったおもちゃやドアノブは、できるだけ消毒をすると、より感染を防ぐことができます。 お母さんは、おむつの取扱いにも十分注意。おむつ交換後は流水・石けんでしっかりと手洗いをしましょう。
いつ登園できる?
登園の目安は「5日〜」
発熱や、目・ノドなどの主な症状がおさまってから2日経過するまでは出席停止とされています。多くの場合、治癒して再度登園する際には、医師が記載した登園許可証が必要になることが多いです。 登園の目安や登園許可証の要不要は、園やかかりつけ医に確認しましょう。
保田先生よりひとこと
体調がすぐれないと、ウイルスに感染しやすくなります。「今日は少しグッタリしているな……」という場合は、熱などの症状が出ていなくても、プールは見学させるのもひとつの判断です。
とはいえ、夏のプールは子どもたちの楽しみのひとつでもありますよね。無駄に恐れ過ぎず、毎朝の子どもの様子を観察しながら、ママが的確に判断してあげるといいでしょう。 発熱しても全身状態が落ち着いており睡眠が取れていれば、夜間受診の必要はありません。翌朝に受診しましょう。感染症の診断がおりた場合は、小児科医や保育園に確認をし、許可証の有無を確認してください。
取材・文/松崎愛香