以前は料理人としてがむしゃらに働いていた過去を前回「志麻さんが料理人から家政婦に転身したワケ」でお届けしました。料理人の業務用キッチンから、今では家政婦として家庭のキッチンで腕をふるう志麻さん。どんなキッチンでも瞬く間に十数品の料理を仕上げる志麻さんが考える、使いやすい調理道具について伺いました。
志麻さんの調理道具
おすすめメーカーは「Misono」
── こだわっている調理道具はありますか?
志麻さん:フレンチの料理人というと色々持っていると思われるのですが、こだわりがあるのは包丁だけ。レストラン時代から日本の調理刃物メーカー「Misono」のものをずっと愛用しています。海外の料理人たちも買い求めるプロ仕様の包丁ですが、強化木の持ち手が馴染みやすいので主婦の方々にもおすすめです。切れ味が悪いものを使うより、食材を切る作業はとてもラクになります。また、忙しい日の料理には、ペティナイフを使うのもいいです。かぼちゃのような固い野菜以外は、これ1本でたいてい料理は作るんですよ。
キッチンに必要な道具は
包丁以外、たった7点
── 包丁以外で必要なのは?
志麻さん:料理人時代、家で料理する時間はなかったので、包丁以外には…鍋とフライパンが大小で2つずつ、100円均一で買ったザルとボウルが1セット、小さなまな板。この7点くらいしかありませんでした。それでも家庭料理を作るには十分なんです。
大事なのは鍋の大小がそろっていること。大きな寸胴タイプの鍋はパスタをゆでたり、煮込み料理をムラなく作れます。いっぽう、小さな片手鍋は混ぜやすいのでこげつきにくく、炒めて甘さを引き出してから作るスープなどに最適です。
── 100円均一のものを使っているとは意外でした。手軽なものでもいいんですね
志麻さん:意外と100円均一のステンレス製のザルがいいんです。目がこまかいから水きり以外に、野菜を漉すのにも使えます。離乳食もこれ一つでほとんど作れました。高価なパンチングザルより、幅広く使えます。
── この基本の調理道具以外で、働くママが料理の時短に役立てられるものってありますか?
志麻さん:貝印のせん切り器です。私はおもにキャロットラペなどを作るときに使いますが、これなら料理が苦手な人でもせん切りが苦じゃなくなりますよ。せん切り器はいろいろ試しましたが、結局これにたどり着きました。
塩とこしょうが味つけの基本
たいていの家庭料理は作れるんです
── 家政婦として一般の方のご自宅に行く機会も多い志麻さんですが、使いやすいキッチンの条件ってなんだと思いますか?
志麻さん:道具の話もそうですが、特にフランスの家庭料理でいえば、調味料だって多くを必要としません。野菜をじっくり炒めて甘さを出し、生クリームのコクやホールトマトの酸味を活かすフランス料理では、塩とこしょうが味付けの基本です。だから、自分好みのものだけが並ぶ、シンプルなキッチンで十分。時間がないなかで料理を作らなきゃとあせって、物を買いそろえたり、がんばったりしなくてもいいんです。むしろ気負わないことで、自分らしいキッチンに整えられると思いますよ。
家に帰ってから改めて自分のキッチンを見たら、前よりちょっと好きになれた気がします。志麻さん、今回はいろんなお話をありがとうございました!
Profile 志麻さん
連日満席のフレンチレストランやフレンチビストロで約15年間、シェフとして腕をふるう。2016年に家事代行マッチングサービス・タスカジに登録すると「レストランの味が家で食べられる!」と予約殺到。家にある材料で作る、フレンチメインの作りおきおかずが評判となり、テレビや雑誌に多数出演。それぞれの家庭のライフスタイルに合わせて、好みの味に仕上げてくれる。
志麻さんも登場するレシピ本『伝説の家政婦が教える 魔法の作りおき』(主婦と生活社刊)については、コチラもご覧ください。
取材・文/さくまえり 撮影/中垣美沙