子どもを産み、育て、母となったことで実家の母と接することは多くても、父との距離って、相変わらずだったりしませんか?だからこそ、来たる6月17日の「父の日」に普段いえない感謝の気持ちを、形にして伝えたい。
いざなにかを話そうとすると、どこか気恥ずかしい。近い存在であるのに、積極的に会話をすることがない父親。“忙しい”という言い訳でつい見過ごしてしまう、父の日。だからこそ、今年こそ。父の日に、普段言えない“ありがとう”を。
今回の「父の日、私のストーリー。」特集では、“父への贈りもの、何がいいかな”と考えたときに思い浮かぶモノにまつわる仕事をする女性が登場。
ご自身の父親とのエピソードや贈りたいモノの話を聞きました。
[EPISODE3]
オンラインショップkokoshi café・白鳥裕美さんの「私と父親」
“父への贈りもの、何がいいかな” そう考えたときに思い浮かぶモノのひとつに「器」があります。普段の食卓で、幾度となく手にする器。そのたびに「娘にもらったな」と、顔を思い出してもらえたらうれしいものです。
そこで今回は、「器」に詳しい女性にインタビュー。手しごとが光る器をセレクトしたオンラインショップ「
kokoshi café」のオーナーであり、9歳の女の子と7歳の男の子のママでもある白鳥裕美さんに、お父さんのことや父の日に贈る器のお話、聞いてきました。
|子どものころはずっと遠い存在だった父
子どものころは父の仕事が忙しく、なかなか父の日に何かをするという習慣がなかったですね。改まって「ありがとう」というのが気恥ずかしく、今思えば、父とゆっくり話したことすらなかったのかも……と思います。
仕事一筋だった父だったので、尊敬の気持ちが大きくずっと遠い存在でした。だから、何をあげたら喜んでくれるのかすらわからず、わからないまま見過ごしてしまったように思います。
贈るとしても、さらっとあげられるものを今まではあげることが多かったです。コーヒーが好きだから、「おいしいコーヒーみつけたよ」と贈ったり。今では歳もとったので、「体にいいもの」「疲れがとれるもの」を見つけると、父の顔がよぎります。
|子どもを産んで、父との距離が縮まった
自分に子どもが産まれたことで、子どもを介してようやく「ありがとう」の気持ちを伝えられるようになりました。
今まで、父親とは離れて暮らしていてもメールも電話もしなかったんです。あらたまると何を話していいのかわからなくて。それが、孫ができたことで、気難しい父親がやさしい父親のイメージに変わりました。
だから、子どもたちからの絵や手紙を添えつつ贈りものをすると、やはりいちばん喜んでくれますね。それだけで親孝行している気になります。
毎年恒例での贈りものは、カレンダー。お気に入りの写真12枚で簡単に作れる「TOTLOT」の卓上フォトカレンダーを贈っています。その月に撮った子どものベストショットを選ぶので、ちょうど一年前の子どもたちを見られるのが好評。両方の両親とかわいがってくださる親戚に配っています。
|子どもたちからパパへの「父の日」
私には2人子どもがいるので、「父の日」というと、子どもたちがパパに何を贈るのか、も気になるところです。去年のわが家では、子どもたちがパパにスナック菓子の「じゃがりこ」を贈っていました(笑)。
家族旅行で車を運転しながらパパが子どもたちに「パパのガソリンは“じゃがりこ”だ」と言っていたことを子どもたちが覚えていて、運転席のドリンクホルダーにじゃがりこを置く……これが恒例になっていたんです。そんなこともあり、父の日には“いろんな味があったよ”と、たくさんのじゃがりこを贈り、一緒に食べることで楽しい時間を共有していました。
そんな子どもたちの様子を見ていると、普段の何気ない会話から、相手が何か欲しいかを考えるのって、あらためていいものだなあと。さらに、自分も一緒に楽しめるっていうのは素晴らしいと思うんです。
私は器を仕事にしているので、父にもその趣味を共有できると楽しいのかな、なんて思っています。
手仕事のセレクトショップオーナーが父の日に贈りたい器
|「引き継げる」器を選びたい
わが家の両親は、終活を意識しているのか、あまりモノを多く持ちたくないようで。器って残るものなのでモノが増えても……と思い、今まであまり贈っていなかったのですが、残るものだからこそ、自分や子どもに引き継げるのかな、と最近は考えかたが変わりました。
贈って喜んでもらえるような、次の世代に引き継げるような「器」の贈りものがいいのかなと思っているんです。
|祝い事に使える「勝村顕飛」さんの器
とっておきの器としてオススメなのが、勝村顕飛さんという作家さんのもの。真っ白い器に、干支や名前をデザインしてくださるので、たったひとつのオリジナルです。木箱にもメッセージを書いてくださるので、特別感たっぷり。
いつかいつかと思いながら、何もないときにおくるよりも、節目がいいなと。白い器なので、お祝い事にもぴったり。お正月に集まった時にみんなで使ったりと、思い出が紡いでいける器です。
|台所に立たない父へ。地元広島の「若狭祐介」さんのコーヒーカップを
いまのママの父親世代って、台所に立たないという人がほとんどですよね。料理は母親まかせという感じで。だから、コーヒーカップなら愛着が湧きやすいと思います。お皿よりも、お父さんが自ら気分をかえて使ってみようかなと、セレクトして使いやすいアイテムでもあります。
どんなデザインのものを贈ろうか迷ったら、ゆかりのある土地でつくられている作家さんのものなどはどうでしょうか。器って、土壌の特色がそれぞれ出て面白いんです。住んでいても実は知らない作家さんなども多く、話のネタになるような気がします。
私が父に贈りたいのは、実家である広島の作家さんのもの。瀬戸内海を望むアトリエで作陶されている若狭祐介さんの作品は、海の色を思わせる優しい色合い。奥様である蓮尾寧子さんの素朴な表情の器もまた素敵なんです。地元生まれの器を愛用することで、地の利をあらためて父親にも感じてほしいですね。
量産のものではなく、てしごとのうつわのいいところは、1点1点表情が違うところ。喩薬のたれ具合、ムラなどで、すべて違う1点もの。どれがお父さんぽいかな……と探すのも楽しいですよね。
白鳥裕美さん
9歳の女の子と7歳の男の子の子育てのかたわら、日本の手仕事をセレクトしたオンラインショップ「kokoshi café」を運営。忙しい毎日でつい「時短」がテーマになってしまいがちな小さな子どものいる食卓が、“器選びによって楽しいものになってほしい”という思いで「うちの食卓で普段に使えそうなもの・使いたいもの」をセレクトし、販売。最近では金継ぎにも興味がある。
取材・文/松崎愛香 撮影/斉藤純平