子どもを保育園に預け、いざ職場復帰。意気揚々と臨んだものの、あれ、なんだか、、居心地が悪い……!?そんなふうに感じることが多くなったら、「転職」を意識してみても、いいのかもしれません。

 

今回は、ハードルが高いといわれる「ママの転職」を結果「幸せな転職」に成し遂げた2人のママの「リアル転職事情」をインタビュー。

 

1人目は出産を機にそれまでの会社を辞め、異なる職種への転職を果たした 西さんのエピソードです。

【子育てと両立できる未経験の仕事へ転職】

出産を機に、あえて職種を変えて転職した理由


現在はネットショッピングサイト「LUXA」を運営する株式会社ルクサの企業人事部にて、労務の仕事を担当している西さん。今でこそ人事や労務というフィールドで活躍をしているが、出産前は「まったく異なる職種」である、イベント制作会社で企画運営の仕事をしていました。

 

「前職はとにかく勤務時間が不規則で、徹夜や休日出勤も厭わない働き方をしていました。復職後の時短勤務も認められず、悩んだあげく子育てとの両立を重視し、キャリアチェンジを決意しました」

 

それ以外にも、出産をきっかけに労務に関する法律に触れたことでもっと労務の知識を得たいという思いや、これから子育てをしていくなかでのキャリアのリスクヘッジを考えたときに、「どんな会社でも通用するスキルを身につけたい」という思いがあり、人事のフィールドへの転職を決めたそうです。

 

未経験分野ということもあり、まずは非正規雇用からスタート


会社と話し合った末、育休半ばで退職し、東京しごとセンター、ハローワーク、マザーズハローワークなどに子どもを連れて通い、職を探した。

 

「未経験でも人事の経験を積める環境がある会社を選びました。そのため、正規雇用にはこだわらずパート採用での再スタートとなりました」

 

ただ収入が安定せず、祝日の多い月は収入が激減するというリスクもあったそう。

 

「まずは経験を得るための修行期間ととらえ、収入については、多少は目をつぶりました。とにかく人事の経験を積むことに必死で、ある程度経験を積んだら子どもも大きくなるだろうし、次のステップとして正社員として職務に就くビジョンはありました」

 

 

人事部での年間業務を 2回り経験した後に、社会保険労務士事務所へフルタイム勤務の正社員として転職。産後2回目の転職となりました。

 

「産後初の正社員勤務ということもあり、残業も見越し、自宅から近い職場を探しました。フレックスタイム制の職場だったため、平日の保育園行事にも参加でき、子どもの通院などがある日は勤務時間をずらすなど柔軟な対応ができたと思います」

 

人事というフィールドでのキャリアアップのため、現在の会社に転職


社会保険労務士事務所では様々な会社の給与計算や社会保険事務に携わることで経験を積めたが、外からだと見えない部分が多く、もどかしさや疑問を感じる部分もあったそう。

 

「ステップアップしたいという気持ちは常にありました。将来的に人事という分野で労務以外の分野にもキャリアを広げたいという思いもあり、在職中にキャリアカウンセリングを定期的に受けていたんです。そして、自身が担当していたクライアントとの契約が終了するタイミングで事務所に相談し、転職エージェントを通して転職活動を始めました」

 

転職にあたり大切にしたのは「会社の風土」。

 

「いまの職場は、組織としてまさに成長ステージだからこそ、新しいアイディアや提案ができる環境です。これから切り拓いてみたいことが色々と浮かび、日々忙しいですが充実しています」

自分の時間、子どもとの時間。最善なバランスを常に模索。


3度目の転職で選んだのは、フルタイムで、かつ自宅から離れた場所にある会社。これまでになく帰宅時間が遅くなり、平日子どもと一緒に夕食を食べられる日は、ほとんどないという。

 

「日々葛藤はありますが、自分の年齢と将来のこと、家族に囲まれ恵まれた今の環境を考え、働ける今だからこそチャレンジすべきと自分を奮わせキャリアアップの道を選びました。 保育園のお迎えや日々の家事の多くを家族で協力し合っているからこそ、私は思い切り働くことができています。家族への感謝を忘れずに、家族に誇れる良い仕事をしたいと日々思っています」

 

現在は子どもも5歳と大きくなり、より家族と連携して一日のタイムスケジュールをこなすことができるようになった。

 

「平日は子どもが寝るまで、休日はたっぷりと。子どもと一緒に遊んだり話をしたり、共に時間を過ごすことを、家では最優先にしています」

 

【現在の西さんの1日のタイムスケジュール】


4:00 起床、自分の趣味や勉強

 

「夜は早く寝てしまうため、朝は早く起きます。読書や裁縫、勉強、ストレッチ、インターネットでの調べものなど、自分時間は朝に確保します」


5:00 家事

 

 

「朝食と自分のお弁当だけでなく、同時に夕食の下ごしらえもします。掃除や洗濯も朝に行います」


6:00 子ども起床、朝食、子どもと自分の身支度 
7:30 保育園へ送る
9:30 出社 
18:30 退社
19:45 帰宅、夕食
「帰宅後は工作、お絵かき、ゲームなど。その日子どもがやりたいことを一緒にします
20:30   お風呂

21:00 寝かしつけ

 

 

「毎晩必ず、一緒に本を読んで寝ます」


22:00 就寝
「基本的に、自分の勉強や趣味は朝に集中型。仕事から帰ってきてから寝るまでは、子どもとの時間をたっぷりと楽しみます」

 

 

 

仕事・家事・育児を円滑にまわすために欠かせないモノ


めまぐるしい1日を過ごすワーママにとっては、効率をはかるためや、テンションをあげるために、なくてはならないツールやグッズが必ずあるもの。

 

西さんの場合を聞きました。

 

「買い物に行く時間ももったいないので、食材の宅配サービスにはお世話になっています」

2
▲毎週 種類の異なる12 種類の野菜が届きます。スーパーではなかなか買わない野菜が入っていることも多く、楽しみ。こちらは今週入っていた珍しい野菜、コールラビ。

 

「さらに、私にとって欠かせないのは音楽。やる気がうまく起こらない朝に気持ちを盛り上げるツールです。子どもを送って保育園の門を出たら、イヤフォンで音楽を聴いて切り替え。海外ドラマ『glee』のアルバムは、聴いているだけでパワーアップできるのでおすすめです」

 

転職で「ママであること」を不利にしないために、何をすべきだと思いますか?


「子どもがいると、いくら万全な体制を準備していても急な遅刻や早退、欠勤でメンバーに多少なりとも迷惑をかけてしまうことは避けられません。実際に転職活動をしていると“子どもがいる”と伝えた途端に、話を聞いてもらえないような面接を何度も経験しました」

 

迷惑をかけてしまうリスクが高い現実を、しっかりと自覚し、相手の反応に一喜一憂しないことが大切。

 

「また、子どもがいる身で転職活動を行うと、“残業はできない”“休日出勤はできない”など、つい“できない”アピールに終始してしまいます。正直に自分の希望を伝えることは大切ですが、“できない”一辺倒ではなく、代わりに“自分は何ができるのか”を考え、行動することは、もっと大切だと思います」

 

そして採用してもらえたら、そのことへの感謝を忘れず、期待に応えるべく一生懸命働くこと。ときには業務の幅を超えて自分にできることを考え、行動でみせることをした。

 

「社労士事務所勤務時代には通常業務に加えて、出産前の企画職で得たスキルや自身の強みを活かし、自社営業資料の作成や、クライアントが社内文書で使用する文書フォーマットの提案など積極的に行っていました。今でも毎日遅くまで残業ができない分、思い切りやる日と早く帰る日を業務の繁忙の波によってメリハリをつける努力をしています」

 

未経験職種にキャリアチェンジして、よかったですか?


未経験職種へのキャリアチェンジは、積み上げたキャリアをゼロから作り直すというよりは、「キャリアを縦横に広げ強化するもの」だという。

 

「出産というきっかけがなければ、同じ職種のなかで高みを目指してキャリアを築く人生もあったかもしれないですが、産後から3社を経験したことで、多くの経験や知識、そして素晴らしい人々との出会いを得ることができました。結果、よかったです!」

 

転職し、一度は、非正規雇用へキャリアダウンとなりましたが、大変ではなかったですか?の問いには……

 

「転職活動は、思い出しても辛くて心が折れる経験もたくさんありました。でもその分得たものも、これから得るものも大きい、と私は信じています。職域が限定的であり収入も不安定である非正規雇用を経験したからこそ、正規雇用(キャリアアップ)へのこだわりは強くなりました。そして今、正規雇用で働けている有難みも感じながら、働くことができています」

 

PROFILE 西さん33歳)

育休中に勤めていたイベント会社を退職。出産後は未経験職種である人事のフィールドへ転職を果たす。企業人事、社会保険労務士事務所を経て、現在は株式会社ルクサの人事部にて、労務分野を担当。5歳の息子を含む4人家族。最近の趣味は、息子と飼っている7匹(!)のカブトムシを観察すること。

 

<特集「働くママの転職」TOPに戻る>

 

取材・文/松崎愛香