赤ちゃん時代を過ぎ、子どもの性格や個性がはっきりしてくると、保育園・幼稚園でも小学校でも「意地悪な子」に遭遇することがあります。 どうして意地悪な子は悪口を言ったり嫌がらせをしたりするの?意地悪な子のターゲットになってしまったら、子どもにどう教えたらいい…? 今回はそんな「意地悪な子」への対策を考えてみます。
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わが子がされた「意地悪」体験
「意地悪をされた」男の子のママからは、次のような体験談がよく聞かれました。
- 理由もなく、ふざけてたたかれたりキックされる
- 遊びに割り込んでくる、邪魔される
- 共有の遊び道具(ボール、ブランコ、積み木など)を横取りされる
- 何人かで遊んでいる時に、「逃げろー!」と置いてきぼりにされる
いっぽう、女の子のママからは、
- きつい口調で指示される
- 持ち物や描いた絵などを「変なの」とけなされる
- 「バカじゃない?」などの悪口
- 友だちと一緒にいるとその子を連れていってしまう
なお、ここでは「意地悪」の例を挙げましたが、集団での無視や悪口、モノやお金を隠されたり壊されたりする、ケガはもちろん学校に行きたくない・眠れないといった心身のダメージなどがある場合は、「意地悪」の範囲を超えており、「いじめ」「傷害」なので話は変わってきます。その場合は一刻も早く学校へ連絡し、子どもの心のケアをはじめとした本格的な対応が必要です。
2~3歳児が意地悪をする理由
まず、2~3歳の子に多い、「遊んでいるとすぐにおもちゃを取り上げる」「イヤ!キライ!など意地悪なことをよく言う」「ちょっとしたことで押したり叩いたりする」などの行動については、意地悪とは一概に言えません。
この年齢では、単に自分の気持ち・欲求だけで行動し、相手の気持ちが想像できない子がまだたくさんいます。 保育園や幼稚園で、相手に嫌な思いをさせて泣かせてしまったり、大人から叱られたり諭されたり、自分も同じことをされて嫌な思いをしたり…という経験を重ねることで子どもは成長していきます。つまり、程度や時期の差こそあれ、むしろ必要な段階だといえます。
小さい頃「あの子は意地悪」と思っていたクラスメイトが、たくさんの経験をするうち、小学校に入る頃にはちゃんと相手の気持ちを考えられる普通の子になっていた…ということは珍しくないことなのですね。
4~5歳児が意地悪をする理由
しかし、4~5歳になってくると、「こんなことを言われたりされたりしたらイヤな気持ちになる」ということが分かったうえで、あえて意地悪をする・つい意地悪をしてしまう子が出てきます。
これにはいくつかの理由が考えられます。
1.支配欲が強い
きつい言葉でおとなしい子を従わせたり、気に入らない相手に悪口を言って悲しむ姿を見て満足するなど、ネガティブな手段で他人の心を動かし、支配欲を満たしているパターンです。 また、気にっている友だちを独占したいあまり、別に仲良しの子がいるのが許せず、その子に意地悪をして引き離すのも支配欲の一種といえます。
2.優位に立ちたい
人間は誰にでも「勝負に勝ちたい」という本能があり、生物学的には特に男性にこの欲求が強いとされています。 しかし、人にはそれぞれ得意なことや苦手なことがあり、いつでも勝てるはずはありません。 自分ががんばっても勝てない時に、他人を落とせば相対的に自分が優位に立つ…という考え方をしてしまう子がいます。
3.劣等感や自信のなさの裏返し
同じく、勉強・スポーツ・容姿などで、自分に自信がなかったり、勝ちたいのに勝てない悔しさや劣等感の裏返しで、自分より勝る子に意地悪したり、悪口を言ったりするケースもあります。
4.気持ちが満たされていない
意地悪や暴言がよくないことだと分かっていても、家庭の事情などで満たされない気持ちから、意地悪をコントロールできないこともあります。
例えば、おだやかだった子が、下の子が生まれた途端、園で荒れて大変…という話を聞いたことがある人も多いと思います。赤ちゃん返りの一種なので、いずれおさまることがほとんどですが、仲良しの子に急にきつく当たられてびっくりしたというお子さんもいますね。
意地悪な子の親ってどんな人?
わが子が意地悪されているのを目撃すると、「親の顔が見てみたい!」と思ってしまいますよね。 でも、参観や行事などで様子を見ても、いかにも暴力的ということは少なく、ごく普通に思えることがほとんどです。
成長の過程で意地悪したり・されたりはどんな家庭環境の子でもありうることですが、保護者が継続的に次のような接し方だと、子どもの心に影響を与えることがあると考えられています。
厳しすぎる
親自身が自分にも厳しく、子どもにもきちんとした態度を求めすぎると、親の前でだけいいコを演じ、外では乱暴にふるまうようになってしまう場合が。 時々、「○○くん、参観日はいつもと全然違うね」とクラスの子や他のママから言われているのを聞くことはありませんか?
叱らなさすぎる
叱りすぎるのはもちろん良くありませんが、成長の過程で、「ここはしっかりと叱るべき」という場面も当然出てきます。叱るのにも大きなエネルギーがいるので、そこを面倒がって見て見ぬふりをしたり、迷惑をかけた相手に我慢してもらったり…を繰り返していると、子ども自身にも何がよくて何がよくないのかの判断基準が育ちにくいということがあります。
無関心
親が子どもに無関心すぎるのも原因の一つと言われています。これは、実際に子どもにかけてあげられる時間の長さではなく、子どもに関心があるかどうかが重要で、「フルタイムで共働き」「シングルマザー」「病気」などが問題だということではありません。
条件付きの愛情
いつもきょうだいや他の子と比べられてきた子や、親の期待する結果を出した時だけほめられたり、「一番でなければ意味がない」と言われたりして育ってきた子は、自分の一番を阻害する子(しそうな子)を攻撃してしまうことがあります。
意地悪な子への対策
それでは、意地悪な子と日常的にかかわることになってしまったら、どうすればいいでしょうか?
園や学校に対して
子どもから、「○○ちゃんにこんなことを言われた、された」という話を聞いたり、実際に意地悪されているのを見た場合、まずは担任の先生に様子を聞いてみましょう。
本人どうしのトラブルというより、席が隣というだけでちょっかいをかけられることもあるので、席替えなどの対応をしてもらうだけでぐんと改善する場合もあります。
保育園や幼稚園では1学年1クラスしかないこともありますが、小学校で複数クラスがある場合、来年度のクラスを配慮してもらえる可能性もあるので、苦情・クレームという形ではなく、情報の共有という形でまめに連絡が取れるといいですね。 ※繰り返しますが、「いじめ」に該当すると思われる場合はもっと早急で本格的な対応が必要です。
相手の子や親に対して
特定の子に意地悪されている場合、相手の親子と面識がない場合はもちろん、もとは仲良しだったとしても、一番に相手の子の親に苦情を言うのは避けた方が無難です。
親は自分の子どもの言うことを信じるのが普通ですから、親同士で話し合ってもスムーズに解決するのは非常に難しく、あとあとまで関係がこじれてしまう可能性もあります。
最終的に親同士で話し合う必要が出てくるとしても、まずは、両方の姿を見ている保育士さんや担任の先生に事情を話し、様子が分かればその段階で解決したり距離を置いたりできる場合も多くあります。
相手の子本人が家に来ている時などに「寂しさからこういう態度になるのかな…」と思える様子であれば、話しかけたり、「おやつ運んでくれる?」などと手伝いを頼み、やってくれたら大いにお礼を言う…という働きかけで意地悪な行動が減った、という体験談もあります。
反対に、これは注意するべき!と思ったら、目を見て(低学年なら手も握って)「こういうことは絶対にダメだよ?!」と迫力を込めて言うと効果があった!という体験談もありました。 この方法でも、わが子から他の子にターゲットが移るだけで根本的な解決にはならない可能性はありますが…。
子ども本人にどう話す?
意地悪なことをされたときの対策として、子どもにはどうアドバイスすればいいでしょうか?
王道は「意地悪なこといわないで」と言うこと…ですが、性格的に優しくおっとりした子には簡単なことではありません。
そういう子は、友だちが失敗した時にからかったりせず、意見が合わなくてもキツイ言葉を口にしないなど、素晴らしい個性の持ち主なのですが、そういう子が意地悪のターゲットになりやすいのも事実です。
そこで、意地悪されて落ち込んでいる子へ、実際にパパやママが言ったことをまとめてみました。
- 「つぎ、嫌なことをされたら、暴力を振るったり泣いたりせず、強めに「やめて!」「やめろ!」と言うんだよ」
- 「意地悪な子に言い返せる強い子はクラスにいる?明日は一緒にいてもらえないか聞いてごらん。」
- 「みんなと仲良くしようねって教えられたかもしれないけど、できない時は無理にしなくていいからね。分かってくれる子がいるならそれで十分。」
- 「意地悪なこと言われて、イヤだったね。他のお友だちにそんなこと言わない○○(子どもの名前)は本当に偉いと思う。」
- 「ママとパパはいつでも味方だからね。いつでも話を聞くよ。」
ママ自身が小学生時代に意地悪をされて泣いて家に帰った時、母親からの「どんなことがあってもあなたの味方よ」という言葉にとても励まされた、という声もありました。
まとめ
今回は「意地悪な子」への対策を考えてみました。 意地悪されない・意地悪に負けないというだけでなく、わが子が「意地悪な子」になってしまわないようにも時々気を配っていきたいですね。 参考になれば幸いです!