子どもの視力の低下は、毎日の生活の中でママやパパ、保育士さんが気付くこともありますし、自治体の乳幼児健診や就学前検診で行われる視力検査で指摘されることもあります。 視力が弱く矯正が必要となった場合、通常は眼鏡(メガネ)を使用しますが、成長につれ、スポーツ時にケガをしないためや、特に女の子であれば見た目の問題などから、コンタクトレンズの使用を検討することが出てくると思います。 今回は、コンタクトレンズにして大丈夫?何歳から使ってもいいの?などのママの疑問にお答えします。
子どもの視力の低下は見つけにくい
生まれたばかりの赤ちゃんの視力は、0.01~0.02ほどしかないそうです。そこから少しずつ自分の手の届く範囲や世話をしてくれる大人の表情などが見えるようになり、6歳頃までに視力に関わる神経回路ができあがると言われています。
幼児の視力の異常が大人と違うのは、大人の場合、以前のよく見えていた状態と比較ができるのですが、子どもの場合、「前は見えていた」という段階がないので、気づきにくいという特徴があります。 しかも、弱視の子には、片方は普通に見えている「片眼性弱視」の割合が多く、見える方の目である程度カバーしてしまうため、周りの大人も気付きにくいのです。
検診時、きちんと片方ずつ視力検査が実施できれば、この「片眼性弱視」を早期に発見できますが、現在、多くの自治体で、3歳児検診での視力検査は時間がかかるため、「あらかじめ家でやってきてください」と言われることが多くなっています。家庭でどこまで正確に測定できているか…という疑問も残りますね。
また、幼稚園や保育園で行われる視力検査は、小学校の授業で黒板の字が見えるかどうかに合わせて、5mの距離が主流でした。しかし、遠くを見る時と近くを見る時の目のしくみが違うため、5mの視力検査で問題がなくても、近くの文字が見えにくい子もいることが分かってきています。
今後、読書などはもちろん、タブレットやパソコンでの授業が増えると、本当は視力の問題なのに、「集中力がない」「学力が低い」と思われてしまう子が出てくることも懸念されています。
小学校でもコンタクトレンズはOK?
それでは、眼鏡が必要と診断された場合、いつ頃からコンタクトレンズに変えても大丈夫なのでしょうか? 現在、小学校4年生の男の子がいるAさんは、このように迷っています。 「幼稚園の頃から、やや視力に不安があったのですが、小学校2年生で両眼0.7を下回ったので、眼鏡の使用をすすめられました。息子はスポ少でサッカーを続けていて、眼鏡が取れないようにゴムバンドを使用していますが、これまでに何度か練習中や試合中に眼鏡を落としてしまい、買い直したこともあります。今までは低学年でしたが、これからだんだん練習も本格化して動きも激しくなるので、壊れた拍子に目を怪我したり、他の子を怪我させてしまうのが心配で…。コンタクト、早いですかね?」 サッカーのルールには、 『競技者は、自分自身または他の競技者に危険な用具を用いる、あるいはその他のものを身につけてはならない(あらゆる装身具を含む)』 というものがありますので、眼鏡をしていると試合に出られない可能性もあるそうです。 「スポーツゴーグル」といって、強化レンズを使用して安全性を高めたゴーグルもありますが、視界が制限される・曇るといったデメリットもあり、あまり広まっていないのが現状です。
小学校5年生の女の子がいるWさんは、 「3年生から眼鏡を使用していますが、かなり見た目が気になるようで、ときおりコンタクトレンズはダメなのかと聞いてきます。私も目が悪いので、遺伝かな~と申し訳なく思っていますが…。しっかりしている子なので、手入れなどはちゃんとできそうなのですが、コンタクトにして目への悪影響はないのでしょうか?」 と心配しています。
今回、数十件の眼科のホームページを確認してみたところ、コンタクトレンズを使ってもよい年齢は医師により「中学生以上」「高校生以上」と意見が異なりますが、共通しているのは、やはり「小学校の間はコンタクトレンズを使用しない方がいい」という見方でした。
理由としては、子どもは眼球が未成熟なので、市販のレンズとサイズや形状が合わないことや、コンタクトレンズのメーカーが意図しないトラブルが起こる可能性があることが挙げられています。
非常に視力が低く眼鏡で矯正しきれない場合や、左右で視力が大きく異なる場合など、眼科医がすすめる場合を除き、できるだけ小学生のうちは眼鏡の方が安心のようですね。
判断基準は年齢だけじゃない
ただし、中学生・高校生など一定の年齢になれば、誰でもコンタクトレンズを使用してOKかというとそうではありません。
以下のような条件が守れていて初めてコンタクトレンズを検討できると言われていますので、いちどチェックしてみて下さいね。
「眼鏡も持っている」
コンタクトレンズは眼鏡と比べトラブルの起こる確率が高いため、短時間の使用にとどめて眼鏡を併用した方が目の健康には有効です。また、目の調子が悪い時のためにも、眼鏡は持っていることが必要と言われています。
「処方、定期検査に親も付き添える」
正しい使用法や使用時間、お手入れなどを親も理解していないと、日頃、子どものコンタクトレンズの使い方やケアができているかどうか分かりません。
「急なトラブル時に正しい対応ができる」
コンタクトレンズ使用中、突然目にゴミが入ったなどの場合、こすらずに手を清潔にしてから取り外すなど、冷静に判断できることが必要です。
急なトラブル時の対応はその子によって個人差が大きいので、一番身近なママがしっかり見極めてあげたいですね。
まとめ
現在、小学生が「多焦点コンタクトレンズ」を装着することで、近視進行の抑制効果を調べる研究などもおこなわれています。 医学の進歩で、いつか近視・弱視が治るようになってほしいですが、それはまだ少し先になりそう。 できるだけ視力のトラブルに早く気付き適切な対処をすることで、子どもに少しでもストレスの少ない毎日を送らせてあげたいと思います。
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文/高谷みえこ
参考資料 :「学びのセーフティネッ ト構築の一環としての視力検査の充実に関する研究」 https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20180330020541.pdf?id=ART0010435903
京都府立医科大学眼科学教室「コンタクトレンズによる小学生・近視進行予防トライアル被験者募集」 http://www.ganka.gr.jp/cl_kinshi_trial.htm