「5歳なのに、近所の人やお店の人に全然挨拶しない」「私(ママ)はいつも率先して挨拶して見本を見せているのに…」と悩んでいるママは意外とたくさんいるようです。 今回は、子どもが挨拶ができない意外な理由や子どもの感じていること、世間の反応は?などの疑問にお答えしていきます。
挨拶ができない子供の6つの理由
いつも挨拶の大切さを言い聞かせているのに、いざ保育園に着くと先生に挨拶ができない、近所の人に会うとママの後ろに隠れてしまう…こういう時、子どもの気持ちは「挨拶しない」のではなく、「しなきゃいけないとわかってるけど、できない」と言った方が近いでしょう。
できない理由としては、次のようなものがあります。
理由1.タイミングがつかめない
ママが、マンションのエレベーターで会った人に「こんにちは」と言った。僕もこんにちはを言わなきゃ…でも…今言ってもいいのかな…どうしよう…と思っている間に、ママとその人がお話を始めちゃった。またこんどにしよう…。
大部分の大人にとってはなんてことのない「こんにちは」も、慎重なタイプのお子さんや、挨拶に慣れていない子にとっては、大げさに言うなら「バンジージャンプ」と同じようなもの。
もし、ママがバンジージャンプを楽しそうに軽々と飛んでいても、子どもが同じように飛べるとは限らないのと同じで、できるようになるまでは大変な勇気が必要なこともあります。
可能であれば、向こうから知り合いが近づいてきた時点で、「こんにちはって言おうね」等と声をかけておくことで、多少心の準備ができるのでおススメですよ。
理由2.相手がだれか分かっていない
ママはよく知っている相手でも、子どもにとっては久しぶりに会ったため記憶になかったり、服装や髪型が違うために同じ人だと分からなかったり…という可能性も。
最近は、子供向けの知育教材や絵本などでも、「知らない人についていかない」というアナウンスがされているので、少し大きい子であれば、よく知らない人に対して警戒心を持つこともあります。
理由3.恥ずかしい、人見知り、内弁慶
家では元気に挨拶できるのに…という子でもっとも多いのがこのパターンでしょう。
保育園に着いたときや親戚に会った時など、注目が集まるような場面では、緊張したり恥ずかしくて声が出ず、なかなか「こんにちは」のひとことが言えません。
こういう子に強制したり強く叱っても、ますます次の時の緊張が高まり、挨拶に対してネガティブなイメージが強くなるので、まずは「ドキドキしちゃったね」「ちょっと恥ずかしかったね」などと声を掛け、できないことに共感してあげましょう。
なかなか声が出せない子には、まずはぺこりと頭を下げる「会釈」だけでも教えてあげると良いですね。
理由4.新しい環境に慣れるのに時間がかかるタイプ
新しい環境に慣れるまで時間がかかるタイプの子は、習いごとのコーチや受付のスタッフさん、小児科の先生などに「よろしくお願いします」「ありがとうございました」がなかなか言えないことも。
場の雰囲気に慣れるにつれ自然と挨拶できるようになることもありますので、気長に「ママと一緒に、よろしくおねがいしますって言ってみようか」と毎回促し、無理なら「今日はちょっと恥ずかしかったね。次がんばろうね」という程度にとどめましょう。
理由5.夢中で周りが見えていない
園バスに乗るとき、仲のいい子の姿が見えると挨拶も忘れて夢中で乗り込んでしまったり、数人でワイワイ誰かの家に遊びに行った時に興奮してあいさつを忘れてしまったり…というパターンもあります。
事前に子どもに言い聞かせるのはもちろんですが、日頃お邪魔することの多いお友だちのママなどには、「もしお邪魔しますって言い忘れたら遠慮なく注意してね」と、お互い方針を共有しておくのもいい方法です。
理由6.家族の前で挨拶するのが照れ臭い
小さいころは屈託なく誰にでも挨拶していたのに、5歳になったら急にちゃんと挨拶しなくなった、まじめに挨拶せずふざけるようになった…という声もよく聞きます。(どちらかというと男の子に多い印象です。)
4~5歳は、他人から見た自分を意識できるようになる年齢なので、これも成長の一段階とも言えます。
こういう子は、ママや家族の前では照れてしまう、言いなりになる自分が赤ちゃんみたいで恥ずかしいなどの理由で挨拶できなくなってしまうのですが、ママが見ていない所ではちゃんと挨拶できていることも多いのが特徴です。気になる場合は、保育士さんなどに日中の様子を聞いてみるのもいいですね。
世間の「挨拶できない子」への反応は冷たいのか
子どもがはきはきと挨拶できなかったり、恥ずかしさの裏返しで不愛想に通り過ぎたりすると、「親のしつけがなっていない」「将来子どもが困るから、もっと厳しくしつけるべき」という世間の声も気になりますよね。
ただ、すべての人が上のように思っているなんてことはありません。
中には、「恥ずかしいのよね」「気にしないで」と口に出して言ってくれる人もいますし、ニコニコと見守ってくれる人もたくさんいます。
私自身も、近所の小さいお子さんを連れたママと出会った時は、かわいくて、お子さんにすぐ「コンニチハ」と話しかけてしまいますが、たいてい「この人、見たことあるけど、だれ…?」というような顔でママにしがみついてしまう子がほとんどです。
でも、もちろん気を悪くしたりすることはなく、失礼だとも思いません。子どもなんだからそのくらいで普通だと思っています。逆に、そこでママが必死に「“こんにちわ”は?」と言わせようとすると申し訳なく感じてしまうほど。
「もっと厳しく」という世間の声に従って叱り続けると逆効果なこともあります。「5歳なのに挨拶もできないなんて恥ずかしいなー」と言われて俄然張り切る子もいれば、傷ついてしまう子もいます。
世間の声に耳を傾けることは必要ですが、振り回され過ぎず、お子さんの性格に合った方法で働きかけてあげてほしいと思います。
根気よく声をかけながら見守ろう
保護者と一緒に行動する幼児期はともかく、小学校入学後は子どもだけで行動する時間が少しずつ増えてきます。
道で出会った近所の人に挨拶する習慣があれば、万が一子どもが体調を崩したりトラブルに巻き込まれそうになったりした時、声をかけてもらえる可能性も高まります。
先輩ママや学校の先生などにお話を聞くと、小さい頃は本当に恥ずかしがり屋でどうしても挨拶ができなかったのに、中学校では見違えるように積極的になって文化祭の劇で主役をつとめた女の子や、小さい頃はいつもママの後ろに隠れていたのに、部活・就職先では元気に大きな声であいさつできている男の子など、「成長すれば大丈夫」という子の実例は数えきれません。
そのためにも、パパやママが日々お手本を見せていれば、子どもも、すぐにはできなくても、どうすればいいのかを覚えていってくれるはず。
けして焦らず、励ましたり手伝ったりしながら、少しずつでも挨拶ができるようになる日を待ちたいですね。
文/高谷みえこ