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「ママ、花火したい」「今はお昼だから無理よ」「なんで?」「明るいから、花火見えないでしょ」「なんで見えないの?」「…」「なんで?」

 

3歳から6歳ごろのお子さんを持つママは、一度はこの「なんで?なんで?」の質問攻めで困ったことがあるのではないでしょうか。連日これが続くと、「勘弁して~!」と叫びたくなりますが、実は、ここでどんな対応をするかで子どもの将来が左右されるかもしれないと聞くと、ちょっと怖くなりますよね。

 

今回は、そんな子どもの「なんで?」に対する正しい答え方を考えてみました。

 

「なんで?なんで?」は期間限定


児童発達心理学では、1~2歳頃は「これなあに?」と、モノの名前を知りたがる「第1質問期」または「命名期(ナニナニ期)」と呼ばれ、その後、3歳頃から「なんで?なんで?」と聞いてくる「第2質問期(なぜなぜ期)」に入るといわれています。

 

質問の内容は、はじめは「なんでママいないの?」「なんでワンワン鳴いてるの?」といった単純なものから始まります。

 

「何かを質問する」「答えてもらう」というやり取りを楽しんでいる段階の子も多く、同じことを何回も聞いたり、さっきと同じことを答えると「ちがう!」と別の答えを要求してくる子もいて、つねに正確な答えを求めているとは限らなかったりします。

 

その後、5歳前後になると、「なんでお月様は丸くなったり細くなったりするの?」「なんで電話のとき“もしもし”って言うの?」といった、自然現象のしくみや社会のルールなどに関わる本質的な質問をするようになってきます。

 

こうなると、聞かれた方も詳しく知らなかったり、仕組みは知っていても、5歳の子に理解できるように説明するのが難しかったり…という状況になってきます。

 

こういった、大人は当たり前だと思っていることに対していちいち「なんで?」と疑問を持つことは、実は、すばらしい感性を持っていることでもあります。英語で「Sense of Wonder(センス・オブ・ワンダー)」と呼ばれ、「不思議さを発見する才能」とでもいうのでしょうか。

 

少し離れて見るととても素敵なことなのですが、ママは家事も仕事も育児もフル回転。しかも、次の家事の段取りや年中行事の準備や園や役所に提出する書類の締め切りなどを頭の中で考えながら体も動かしているので、忙しさがピークの時に「なんで?」と質問攻めが始まると、正直、「そう決まってるの!」「ちょっと黙ってて!」と言いたくなってしまいますよね。

 

ただ、この「なんで?」には、必ず終わりがあります。

 

個人差はありますが、多くの子は上記のような経過をたどった後、6歳を過ぎたあたりで、ぱたりと「なんで?」「なんで?」と聞くのをやめ、普通の会話の中で時々「なんで?」とたずねるだけになっていきます。

 

期間限定と思うと、少し希望が見えてきませんか?

 

こんなNG対応をしてしまうと、けっこう怖い結末が…!


「なんで?なんで?」は期間限定、といいましたが、逆にこの期間によくない対応ばかりしてしまうと、その後の学校の成績や、なんと将来仕事に就いた時にまで影響してしまう可能性があるんです…!

 

「なんで?」ばっかり言っちゃダメ!と叱る

たしかに、毎日毎日の質問攻めに答えるのは本当に疲れます。でも、「ママそんなの知らないから」「なんでばっかり言っちゃダメ!」と叱ったり、嫌な顔をするのは、「知りたいことや分からないことを追求してはいけない」と教えているのと同じ。

 

2020年から新しくなる大学入試制度も、「これからの社会では、知識の量だけでなく、自ら問題を発見し、答えや新しい価値を生み出す力が重要になる」という国の方針によってつくられています。

 

「なんで?」って聞いちゃダメ、というのは、「自ら問題を発見」するのは悪いことと教えてしまっているようなものですね。

 

毎回、ただ答えを教えるだけ

これはパパにもよくあるケースですが、聞かれたらとにかく答える、教える…というもの。

 

パッと答えられないような質問でも、とにかく答えを用意しなければと思ってしまうのですね。

 

もちろん、よく知っていることならポンポンと答えてあげるのもOKなのですが、100%そうなってしまうと、子どもは「分からないことは誰かに聞けばいい」と学習してしまいがちです。

 

また、パパやママ自身が分からないことをスマホで調べること自体は良い姿勢ではあるのですが、調べてハイ、とただ答えを教えるだけだと、その時は分かったような気になっても、後々まで定着しにくいと言われています。

 

質問を笑う、バカにする

小さな子でも、自分の言ったことを笑われるのはとてもプライドが傷つきます。私自身も、幼稚園の頃、親戚一同が集まった席で、一生懸命考えて発言したことを笑われ、大人たちにはまったく悪気がなかったのは分かっていても、恥ずかしくてこの場から消えてしまいたいと思ったことを今でも覚えています。

 

一度恥ずかしい思いをすると、また笑われるのではないかと心配になりますよね。小学校に入り、授業参観で「うちの子全然手を挙げて発言しないのよね」と思っていたら、小さい頃のそんな体験がもとになっているのかもしれません。

 

正しい対応はコレ!


それでは、子どもの「なんで?」に対して、どう答えればいいのでしょうか?

 

まずは一回子どもに考えさせる

答えをポンと渡すのも悪くはないですが、可能であれば、「あなたはどう思う?」と一度聞いてみましょう。

 

まず自分はどう思うか、どこまで考えてみたか聞き、その後ママの意見や知識を伝えて、最後に一緒に確認してみるといいですね。

 

さまざまな可能性を検討し、正解を見つけ出す作業は、一生役に立つスキルとなります。

 

しくみ・原理が知りたい場合と、結果・目的を知りたい場合を見分ける

「電車はなんで走ってるの?」と子どもが聞いてきた場合、「どういう仕組みで進むのか」が知りたくて聞いている時と、「なんのために電車があるのか」を聞いている時があります。

 

前者なら「電車はエネルギーがないと動けないんだけど、電車のエネルギーって何かな?」「○○くんのエネルギーはごはんだよね?」などと聞いてみて、「上に電線があるよね。あそこから、走るエネルギーをもらって、車輪を回してるんだよ」などと説明し、家に帰ったら図鑑などで確認する…という流れが理想的です。

 

後者の場合、「電車の中を見てみて。たくさんの人が乗ってるね。」「でも、運転手さんってどこにいるのかな?」「車だったら、みんな自分で運転しないといけないね。」等と、公共交通機関の必要性やメリットを話してあげることができます。

 

質問の意図がどちらなのか見分けるのは、毎日一緒にいるパパやママこそ一番得意だと思いますので、ぜひお子さんの意図を汲んであげて下さいね。

 

ときには時間かせぎのテクニックも

「なんで?なんで?」期の子に、ひとことで答えると、さらに次々と質問が飛んでくる場合があります。時々はこんな時間かせぎのテクニックを使うのも、イライラせずに過ごせるコツですよ。

 

「ネコはなんで体中に毛があるの?」と聞かれた場合、「ほんとだね。○○くんやママはそんなに毛が生えていないよね。」と、共感的に繰り返してあげるといいですね。

 

さらに、「犬はネコと一緒で体中に毛があるよね。じゃあ他の動物はどうかな?」と聞いてみると、「お馬さんは毛がある!」「ワニは毛がない!」「ゾウさんは…?」といった調子で、かなり話を広げることができます。

 

他にも、「どうしてだろうね~?ママ、考えてみるから、その間にネコさんの絵を描いてくれる?体中に毛を描いてあげてね」などとリクエストすると、喜んで描いてくれることもあるので、その間にさっと用事を済ませて少し付き合ってあげましょう。

 

また、何回も同じことを聞くときは、2~3回は答えてあげて、さらに同じことを聞いてきたら、いちど「ママ、さっき何て答えたんだったかな~?」ととぼけてみると、意外とちゃんと理解していて、意気揚々と教えてくれたりしますよ。

 

まとめ


子どもの質問攻めに答える方法、なかなか難しい…と思われるかもしれません。 でも、子どもが大きくなって、部活や職場の後輩・自分の子どもに何か聞かれた時、こんな風に答えられたら素敵だなと思う姿を思い浮かべてみて下さい。 その「お手本」をママが演じるつもりで答えれば、難しく考えなくても自然と正しい対応ができると思います。 「なんで?なんで?」期はママも成長できるチャンス!どうか楽しみながら乗りきって下さいね。

 

文/高谷みえこ

参考:筑波女学園大学「教育心理学と日常生活関係の理解」