子どもが生まれて幼稚園入園を考える頃から、公立と私立、どちらの学校に進むかの選択を迫られます。以降続く節目ごとの進路選択で正しい判断をするには、教育費の“現実”を知っておくのはもちろんのこと、公的な支援制度や進学状況なども頭に入れておかなければなりません。事前にそういった調査をせずに、「公立に行っておけばよかった」「私立に行っておけばよかった」と後悔しても後の祭りです。無謀な選択をして家計の悪化を招かないために、また、子どもの明るい未来のためにも、教育費やそれに絡む情報にアンテナを張っておく必要があるのです。

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高校までの教育費は家計で賄うのが前提

 

「大前提として、高校までの教育費は家計の範囲内でやりくりすることを肝に銘じてください」

 

こう語るのは、個人家計の相談に乗り、教育費関連の著書も多いファイナンシャル・プランナーの竹下さくらさん。どういうことでしょうか?

 

「教育費がもっともかかるのは大学です。例えば、私立大学文系学部に自宅外から通う場合、初年度300万円、2~4年目は年200万円程度かかり、総額900万円を超えます(文部科学省などのデータをもとに試算)。ここまでの大金を家計だけでは賄えないため、別途大学のお金を貯蓄などで備えるご家庭が大半だと思います。一方、高校までの教育費は、そこまで大きな金額はかかりません。別途貯めておく必要性は低いので、家計をやりくりして賄うことになるのです」

 

日々の生活費に加えて教育費となると、家計が回っていくのか心配する人も多いと思います。その不安を取り除くには、高校までの教育費をあらかじめ把握しておくことが第一です。また、公立と私立の金額の差を認識しておくことも大切です。

 

下のグラフは、幼稚園から高校まで、1年ごとの学習費(学校教育費+学校教育費+学校外活動費)を公立と私立に分けて示したものです。文部科学省の最新データを引いています。まずはしっかりご覧ください。

竹下先生グラフ

 私立幼稚園に通うなら「私立幼稚園就園奨励費補助金」の活用を

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では、幼稚園から順に教育費の現実やその他、進路選択に必要な情報を解説してもらいましょう。 「共働きで保育園に通わせない場合は、3歳から幼稚園に通わせることになります。とにかく安く抑えたいなら公立。私立に比べて1年あたりの学習費は約半分ですみます。ただし、地域によっては倍率が高く、公立に行きたくても行けないケースも少なくありません」

 

幼稚園は公立よりも私立が全体の約6割と多数を占めます。また、子どもが小さいうちは比較的家計にゆとりのある家庭が多いため、「幼稚園なら私立でも払える」と考える傾向が強いといいます。 「私立を望むなら、1年あたり約50万円程度の学習費を見込んでおけば安心です。あわせて、『私立幼稚園就園奨励費補助金』という公的な支援の利用をおススメします。これは私立幼稚園の月謝、入園費を補助するもの。経済的に苦しい中で私立選択を余儀なくされた家庭などは保障が手厚いので、ぜひ活用すべきですね」

 

次は小学校。私立1年時の学習費が約184万円と跳ね上がっていますが、実際に私立に進学するのはレアケース。

 

「私立小学校は全体の1%にしかすぎません。公立に進学するご家庭が大半なのです。公立小学校の学習費は学年によって多少の差はあるものの、年3040万円程度を見込んでおけばいいでしょう」

 

 

中高一貫校を目指すための塾代は3年間で200万円超

 

中学校も私立は全体の7%にすぎず、大半の家庭は公立に進学します。ただし、大都市圏では事情が異なり、近年、首都圏を中心に中学受験に関心を寄せる家庭が増えているといいます。私立の中高一貫校を目指すケースです。 「東京大学など上位大学の進学実績を見ると、中高一貫校の出身者が多数見られます。そのため、中学受験を上位大学進学のパスポートと捉えている親御さんが多いのです」

 

しかし、誰もが中高一貫校を目指せるわけではありません。私立中学校の1年時の学習費は約157万円と、公立の3倍以上です。2年時、3年時の学習費も私立は年100万円を超えています。これだけのお金を家計から捻出できる家庭は限られるでしょう。

 

また、中学受験に向けた歩みは小学校4年生からスタートします。中高一貫校を目指す場合、中学受験専門の塾に小4から3年間通うのが一般的です。 「塾代は毎月の月謝と夏期講習などを含め、小4で年4050万円程度、小5で年6070万円程度、小6で年100万円超と年々アップしていきます。その負担も加わるわけです」

 

我が家が中学受験OKの限れた家庭かどうかは、どのように判断すればいい? 「あくまで目安ですが、小6のときの年100万円超の塾代が無理なく払える家庭なら、私立中高6年間の経済的な心配はクリアできると思います。逆に、小4でなんとなく塾に入ったものの、小5、6に上がるにつれて家計がきつくなってきたら、早めに収入アップの手立てを探すか、中学受験に見切りをつけることも検討すべきです」