あまり嬉しい話ではありませんが、不幸にも交通事故に遭ってしまい、治療が必要になると、仕事もままならなくなってしまいます。治療のために入院や通院で欠勤をすることになると、収入が激減してしまうことも考えられます。 ですが、その本来入るはずの収入は保険会社に休業損害として請求することができるのです。ですが、事故に遭ったのが専業主婦だったらどうでしょうか?仕事をしていないので収入はありません。休業損害はどうなるのでしょうか?
■休業損害とは
交通事故に遭った時にその損害を請求できる保険として、自動車賠償責任保険、通称で自賠責と呼ばれる保険があります。この自賠責には様々な保障があるのですが、その中に消極損害と呼ばれる損害があります。その中の一つが休業損害になります。 この休業損害は、交通事故に遭わなければ、本来得られていたはずの収入を損害として請求できるものとなります。事故に遭ってから治癒して仕事に復帰できるまでの損害が対象となります。 一般的な傷害であれば、仕事復帰までが対象となるのですが、後遺障害が残った場合はどうでしょうか。 後遺障害の場合は、完治が難しいということになります。この場合、後遺障害となるのは、病状固定の診断が出た時が治療の終了となります。病状固定というのは、これ以上治療してもよくはならないという診断となります。この時点で、傷害でいうところの仕事に復帰ということになります。 ですが、後遺障害が残っているので、今までどおりというわけには行かないかもしれません。病状固定になると、それ以降の休業損害は認められないのですが、後遺障害による逸失利益が認められれば、その逸失利益を損害賠償請求することができるのです。 死亡事故であった場合には、仕事への復帰はありませんが、事故から死亡までの間が休業損害の対象となります。これが即死であった場合には、休業損害は認められませんから、死亡による逸失利益のみが対象となります。
■家事労働は社会的にも金銭的に評価されます
専業主婦が交通事故に遭った場合はどうでしょうか?収入がありませんから、休業損害の対象にはならないのでしょうか? そんなことはありません。専業主婦による家事の労働は、金銭的に評価されるようになっているのです。 もちろん、専業主婦でなくてもパートタイマーでもきちんと評価されるのです。少し考えて見てください。自分で家事ができなければ、家政婦を雇うことになりますよね。 その家政婦さんにはきちんと給料が支払われるわけですから、家事の労働も金銭的に評価されて当然なのです。ですから休業損害を請求できるのは当然といえば当然のことなのです。 これを知らずに休業損害を請求せずに示談をしてしまうと、受け取れるはずのお金が受け取れなくなってしまうので、示談のさいの内訳はしっかりと確認してから示談を行なう必要があります。 加害者側の加入している保険会社の担当の人にもよりますが、仕事の内容や専業主婦であることの確認もきちんとしてくれるので、ほぼ請求し忘れというのは起こりにくくなってはいますが、年のためには確認をしておいて損はありません。 保険会社としては、できれば支払いたくはないですから、担当者によっても違ってくるのかもしれません。実際に最高裁の過去の判例でも家事に関する労働は金銭的に評価されうるものであるとあります。
■どのぐらい請求できる?
もし事故に遭ってしまい、しばらくの間働けなくなった場合、気になるのは休業損害の請求額がどれくらいになるかではないでしょうか? 自賠責による保険の基準としては、休日一日当たりの損害は5,700円となっています。8時間労働とすると、時間単価で712円程度となります。地域別に異なっている最低賃金を基準に考えて見ると、その最低賃金よりも低い金額となっています。 これだと、本来得られるべき収入よりも低くなってしまうことのほうが多くなってしまいますよね。 もちろん、一日の収入額がこれより大きくなる場合は、実際の金額を一日当たりの金額として計算できるようになっています。但し、上限は1万9,000円となります。 ですが、算定方法としては裁判基準や弁護士基準と呼ばれるものもあります。この場合は、一日当たりの基礎収入を基準として休業日数をかけて計算します。ここで問題となるのは、基礎収入をどうするかということになります。 サラリーマン等であれば、月額がそれほど大きく変わることがないので、算出方法はそれほど問題になることはありません。問題なのは個人事業主や、歩合制で働いている人の場合です。状況によって大きく収入が変動するため基礎収入の算出が難しくなってしまうのです。 専業主婦の場合は、家事が労働扱いとなるため、家事ができなくなると休業損害の対象となるのですが、実収入がないため、日額を算定するのが困難です。 そのため、厚生労働省がまとめている賃金センサスをベースにすることになります。これによると、毎年変動があるのですが、およそ1万円が日額となります。 パート勤務のある場合、フルタイムだと、サラリーマンと同様の計算になるようですが、収入状況によっては、保険会社のほうで、専業主婦として計算してくれることもあるようです。 ですから、示談の際は金額の内訳をしっかりと確認しましょう。場合によっては弁護士に相談するのも良い方法のひとつです。