「子どもの睡眠」の第2回目は、ぐっすり朝まで寝てくれるために避けて通れない睡眠の“土台”のお話。

 

寝てもすぐ起きちゃう、寝ぐずりが激しいなどのトラブルは、そもそもこの“土台”が整っていないせいかもしれません。なかでも子どもがどんな部屋や状態で寝ているかなど、「睡眠環境」については、まだまだ間違った知識が多いのだそう。この機会に、最適な「睡眠環境」を知っておきましょう!

 

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お話をうかがったのは愛波 文(あいば あや)さん 子どもの睡眠コンサルタント。APSCアジア/インド代表。IMPI日本代表。Sleeping Smart®代表。慶應義塾大学卒業。 2012年に長男出産。夜泣きや子育てに悩んだことから子どもの睡眠科学の勉強をはじめ、アメリカで米国IMPI公認資格(国際認定資格)を日本人で初めて取得。2015年に次男を出産。2人の男の子の子育てをしながら、子どもの睡眠に悩む保育者のコンサルティングや個別相談、日本人向けに子どもの睡眠教育プログラムを提供。IMPIと提携し、妊婦と乳幼児の睡眠コンサルタント資格取得講座の講師も務めている。初の著書『ママと赤ちゃんのぐっすり本』(講談社刊)を出版。 ホームページ https://sleepingsmartconsulting.com/ Instagram https://www.instagram.com/aya_aiba/ Twitter https://twitter.com/sleepingsmartjp

 

前回の記事はこちら▼
【子どもの睡眠①】 寝かしつけがラクになる「ねんねメソッド」って⁈

子どもは寝ていても環境の変化に敏感!

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冬には風邪をひかないかと毛布を1枚増やしたり、夏にはクーラーで冷えすぎないかと設定温度に気をもんだりと、どこの親も子どもの健康や快適さに気遣ってはいます。でも、それが果たして本当に正しい知識をもとにした正しい方法なのかと問われると、途端に自信が持てないですよね。なんとなく「そういうものかな」と思ってやっているだけ…。

 

「子どもの睡眠環境について、まだまだ昔からの習慣が根強く、正しい知識がゆきわたってないと感じます。でも、そのせいで赤ちゃんもママも苦しんでいるのはとっても残念。ぜひ、次の5つの項目を意識して、睡眠環境を整えていくことをおすすめします」。

 

そう言って愛波さんが挙げてくれた5つのチェック項目が以下です。

  1. ① 光 
    ② 音 
    ③ 部屋の温度と湿度
    ④ 寝るときの服装
    ⑤ 安全性

 

さらに、愛波さんは、整えた環境を変化させないでキープすることがポイントだと言います。

 

「この5つの項目どれに関しても言えることですが、赤ちゃんは“寝ついたときと同じ環境が起きる時間までずっと続いている”ことがとても大切なんです。睡眠が浅くなった瞬間に、寝ついたときと違う環境だと気づいてしまうと、不安になって起きたり、泣いたりしてしまいます。お母さんが添い寝で寝かしつけるにしても、寝ている間にお母さんがいなくなったりすると、子どもにとっては手をのばしてそこにいるはずの人がいなくなったことで不安になってしまいます。添い寝自体が悪いわけではありませんが、ぐっすり眠ってくれるようにとやったことが、逆効果になってしまうのです」。

 

それでは、この大原則を頭に入れたうえで、整えたいポイントを詳しく見ていきましょう。

朝の日光浴がぐっすり睡眠のベースに

「光」の項目で最も実行したいことは、「朝15分の日光浴」とおっしゃる愛波さん。就寝時の明るさのコントロールが大事なのかと思いきや、「それよりも、朝、太陽の光を浴びることがよい眠りへのスタートとなります。これでメラトニンという睡眠ホルモンが夜に分泌され、質のよい睡眠が可能になるという研究成果もあるくらいです」。

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遅くとも朝10時までに浴びたいとのことですから、気をつけたいのは休日。家族で朝寝はうっかりやりがちですが、それが平日の寝かしつけや夜泣きに影響が出るのなら、すすんでやろうとは思いませんよね。


もちろん、夜の明るさコントロールにも配慮は必要。天井の電灯は消し、できれば遮光カーテンにして真っ暗な状態で起床時間まで眠らせるのが理想です。

 

最近はスマホやタブレットの普及もあり、寝る直前まで見ているという子どもも多いようですが、「ブルーライトは脳の活動を活発化させ、寝つきが睡眠の深さに影響を与えることがわかっています。理想的には就寝2時間前、それが無理ならせめて1時間前には避けたいですね」。寝ぐずっているからタブレット、はまったくとんちんかんな対策だったわけです。

暑さ対策は重要!突然死のリスク管理にも

梅雨が早々に明け、寝苦しい時期に突入しましたが、暑さは大人以上に赤ちゃんには大敵。


「寒くないように、寝冷えしないようにという気持ちが強く働く親が多いのですが、じつは赤ちゃんがぐっすり眠れる適温は20〜22℃。寒い!と感じると思います。目安として、大人が寝室に入っていき肌寒いぐらいが最適な温度になります。さらにこの時期に添い寝してしまうと、暑さは倍増してしまいます」。

 

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とはいえ、エアコンをこの温度に設定すると大人が寒すぎてツライ…。その場合、赤ちゃんの平熱や状態にもよりますが、ぐっすり眠れていて寝汗をかいていないようなら25℃くらいで様子を見ても大丈夫だそう。室温は、冬になったからといって上げていいわけではありません。

 

「日本では、かけ布団セットなどが一般的に使われていますが、じつはおすすめできません。熱がこもりやすいし、寝返りなどで布団が顔にかかってしまったら、とても危険! 安全性から言っても2歳までは使ってほしくはありませんね。寒いときの調節は、おくるみやスリーパーという洋服タイプの寝具を着せるのがおすすめです」。

 

また、暑さは寝つきや睡眠の深さだけでなく、じつは乳幼児突然死症候群(なんの予兆もなく健康な1歳児未満の乳幼児が突然死する疾患)に発生にも深く関わっているのだそう。


「厳密には原因不明とされていますが、親としてできるのは睡眠環境を整えること。赤ちゃんの体温が高くなりすぎないこと、ぬいぐるみやかけ布団、枕などは近くに置かないことなどは、知っていればすぐにできます。アメリカでは乳幼児突然死症候群の発生率が高く、そのせいもあって啓もう活動が盛ん。不幸な事態を避けるためにも、知っておいていただきたいなと思います」。

 

◆次回は、よい睡眠のためのもうひとつの“土台”、「生活リズムの整え方」について。時間のないワーママにもできること、お伝えします!

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ライター:のざわやすえ
出版社での編集を経てフリーに。ライター・エディター活動の一方で、主婦雑誌で培った知識をもとに「暮らし方アドバイザー」として、整理収納や家事タスクのアドバイスでも活動中。また、趣味のソーイングではオーダー業も。働きながら育てた一男一女は、この春から高2、高1に。

◆シリーズ連載【子どもの睡眠】
【子どもの睡眠①】 寝かしつけがラクになる「ねんねメソッド」って⁈