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「自家中毒」。縁のない人には耳慣れない言葉かもしれませんが、一度発症すると完治まで時間がかかることが多く、頭を悩ませているママも多い子どもの病気です。


環境の変化や、行事前の緊張、疲れなどさまざまな理由で発症し、本人も大変苦しい思いをするので、看病しているママも辛いですね。「成長とともに落ち着いてくる」とは言われていますが、長い付き合いを覚悟しなければならない場合もあるようです。 今回は、どの子もかかる可能性がある「自家中毒」の基礎知識や、家庭でできる対応、完治した例などを集めてお送りします。

 

自家中毒とはどんな病気?


「自家中毒」は、「周期性嘔吐症」または「アセトン血性嘔吐症」とも呼ばれる子ども特有の病気です。頻繁に嘔吐を繰り返し、数時間から数日間嘔吐を繰り返しますが、それ以外の期間はまったく何の症状もなく元気に過ごせることや、発熱・下痢などの症状を伴わないこと、吐き気止めの薬が効きにくいことなどが特徴です。 発症するのは2~3歳から12~13歳が多く、特に5~6歳が発症のピークといわれます。

 

通常、子どもが吐くのは、ロタウイルス・ノロウイルスに代表される胃腸炎などの感染症や、食中毒・異物の誤飲など有害物質の摂取、食べ過ぎなど胃のトラブルによるものなどが原因です。 しかし、自家中毒では、外部から何かが入ってきたからではなく、子どもの体内で異変が起きて嘔吐が起こります。 詳しくいうと、私たちは通常、肝臓でブドウ糖を燃やして(=代謝して)エネルギーを作っていますが、子どもは肝臓の機能や自律神経の調整が未発達なため、ふとした拍子に、ブドウ糖でなく「脂肪」を燃やしてエネルギーを作るよう切り替わってしまうことがあるそうです。 肝臓で脂肪を燃やすと、その燃えカスのような存在である「ケトン体」が大量に生成され、それが全身に回ることで、脳の嘔吐中枢などを刺激して吐き気・頭痛・腹痛などが現れます。 引き金はさまざまで、風邪などによる体調不良・疲労・発表会前などの強い緊張・遠足前などの興奮・ストレスなどが挙げられます。 病院を受診すると、症状や前後の状況と合わせて、尿の検査でケトン体が見つかることで「自家中毒ですね」と診断がつきます。 「自家中毒」という呼び名は、「外部からの物質ではなく、自分の体内でできた物質による中毒症状」ということを分かりやすく伝えるために日本の医師が考えたそうです。

 

子どもが自家中毒のときに家庭でできること


自家中毒には現在特効薬が確定されておらず、小児科や病院でも、薬(飲み薬・座薬・点滴)などで吐き気を抑え、頭痛や腹痛を和らげる痛み止めなどの対症療法が中心となります。

 

家庭でママがしてあげられることは、一番はやはり水分補給。医師の指導に従うことが原則ですが、基本的には固形のものは食べさせず、常温のスポーツドリンクや果汁・経口補水液など、糖分のあるものを一口・二口ずつ、10分おきなどこまめに飲ませます。水分を摂ることで脱水症状を防ぐほか、おしっこと共に吐き気の原因であるケトン体が体外に排出されるので、早く症状が治まることが期待できるそうです。

 

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また、頻繁に吐くことで歯が胃酸でダメージを受け虫歯になりやすくなりますので、吐いた後や甘い飲み物を飲ませた後は、できるだけ水でブクブクして洗い流すようにしましょう。

 

自家中毒は、何かのきっかけで何度も同じ症状が現れます。逆にいうと症状が出る前後の状況を記録しておけば、一定の前兆や発症パターンを発見できる可能性も。 子どもが苦しんでいる最中には難しいことですが、少し症状が治まった後や眠っている間など、覚えているうちにメモを取っておくと、「冷たいアイスやかき氷をたくさん食べると症状が出やすい」「朝起きて、頭が痛いと言ったらその日は嘔吐する可能性がある」などが分かり、対策が立てやすくなります。

 

また、最近の研究では、子どもの自家中毒と、成人の片頭痛の起こる仕組みに共通点があることが分かってきているそうです。一部の医療機関では、自家中毒で頻繁に嘔吐が起こる子どもに対し片頭痛の薬を処方したところ症状が軽減、予防効果もあったとのこと。 現在、自家中毒で小児科に長期間通院していて、なかなか改善がみられない場合、医師にこのことを伝えて相談してみるのも一つの方法ではないでしょうか。

 

ほかの子は何歳くらいで完治した?


お子さんが自家中毒と診断されたママ何人かに話を聞いてみると、「小学校入学ごろ」「小学校高学年」など、ほぼ全員が小学校を卒業するまでには症状が出なくなったと話しています。 子どもは消化器系が未発達なことから、自律神経のゆらぎが「嘔吐」として表れると言われているので、消化器系が安定してくれば、同時に自家中毒も起こりにくくなるのではないでしょうか。

 

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もう一つ印象的だったのが、初めて自家中毒を起こした当時に、お子さんに「強いストレス」がかかるようなことがあったかどうかという質問にたいし、複数のママが「トイレトレーニング」を挙げていたことです。 ですが、自家中毒の初発年齢(=初めて起こった年齢)が2~3歳代ということを考えると、ちょうどトイレトレーニングの時期と重なりますので、一概にそのせいとは言えないのかもしれません。 また「魔の2歳児」「3歳はモンスター」などと言われる時期なので、トイレトレーニングが重なって、パパやママもつい、きつく叱ってしまう機会が増えている可能性も。 いずれにしても、完璧を目指しすぎず、少し逃げ道のあるような接し方をしていくことが予防の一つになるかもしれませんね。

 

まとめ


実は、私の弟も幼い頃よく嘔吐が止まらなくなり「自家中毒」と診断されていました。 弟が5歳のころ、私と下の妹が二人そろって風邪から気管支炎→肺炎と悪化して入院したことがあるのですが、弟は風邪はなんともなかったにも関わらず、心配と環境の変化から自家中毒を起こしてしまい、家族じゅうが大変だったと聞きました。 弟の場合は5歳から7歳頃までしばしば症状が出ていたようですが、小学校入学あたりから症状が出ることもなくなり、すっかり完治しています。 お子さんもママも症状が続く間は辛いですが、少しでも早く良くなるように応援しています!

取材・文/高谷みえこ