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子どもの発達は本当に個人差が大きいものですが、中でも、言葉が話せるようになる時期や、どんな風に話しはじめるのかは特に差が大きく、子どもの数だけバリエーションがあると言っても過言ではないと思います。

 

「上の子は1歳代から話せていたけど、下の子はもうすぐ3歳なのにぜんぜん…」 「保育園のお迎えのとき、クラスの子がどんどんお話し始めてるのを聞くと焦る~!」

 

など、つい比較してしまいやすい部分だけに、悩んでしまうママも多いのが特徴。

 

実は、幼児が言葉を話すようになるまでのプロセスには、「思考」「行動」「コミュニケーション」の3つの要素があり、これらがともに発達してバランスがとれたとき、言葉での会話ができるようになると言われています。

 

今回は、それぞれの要素がどういう仕組みで成長するのかを分かりやすく解説していきます。

 

「思考」|見聞きしたことを理解して言葉に変換する力


まだまったく話せない赤ちゃんでも、「パパはどこかな?」と聞くとキョロキョロして探したり、「ゾウさんのぬいぐるみを取ってきて」と頼むとハイハイで持ってきてくれたりすることがありますよね。 これらは、まだ言葉は口から出てこなくも、脳内では少しずつ言葉の意味が分かってきていている証拠です。 ただ、単語の数や使い方は膨大なので、赤ちゃんや幼児が日常生活に必要な言葉を理解して使いこなせるまでには長い時間がかかります。

 

アメリカで、家庭で親が赤ちゃんにどのくらい話しかけているかを調査した研究の結果、「一日にほとんど赤ちゃんに話しかけない家庭と、よく話しかける家庭では、約670語~12000語と大きな差がある」ということが分かりました。そして、その後、子どもたちが2歳になったときの追跡調査では、よく話しかけられた子どもの方が言葉の数や会話能力が高いということが報告されています。 保育園に通っている場合、もちろん保育士さんたちも話かけてくれますが、やはり家でも、パパやママが「まだ意味が分からないだろう」と思わずまめに話しかけてあげることが必要ですね。

 

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別の研究では、9か月の赤ちゃんに、母国語(英語)以外に中国語も聞かせたところ、人が話しかけた場合は赤ちゃんは中国語も少しずつ理解できるようになったのに対し、ぬいぐるみの映像と音声だけを聞かせた赤ちゃんには何も変化がなかったということ。 忙しい毎日、ずっと相手をしてあげられないのは仕方がないことですが、言葉の発達の面からいうと、残念ながらテレビやスマホの動画は人の代わりにはならないようです。

 

また、これらとは別に、話しかけられたことがよく聞き取れていないという可能性も、まれにではありますが考えられます。乳幼児健診でも聴力検査は実施されますが、検診後に聴力が落ちてきたり、中耳炎など病気の影響で聞こえにくかったりという場合もありますので、疑いがあればその時点で診察を受けておくことをおすすめします。

「行動」|口から言葉を発するための動きとは


人から言われたことや自分がどうすればいいかが、頭の中ではしっかり分かっていても言葉だけがなかなか出てこない子もいます。特に男の子に多いと言われ、2歳後半を過ぎてもカタコトの数単語しか言えないままの状態が続くと、ママは心配になってきますよね。

 

思い通りの言葉を発音するには、脳の指令に従って、舌・唇・あご・喉などがスムーズに動かせる必要があります。この各器官の動きの発達にも個人差がありますが、多くは成長とともに話せる単語が増え、ある時から急にスラスラと話せるようになる子もたくさんいます。

 

一般的な目安としては、2歳から2歳半にかけて「ワンワンきた」などの2-3語文が話せる、 3歳頃には自分の名前が言えるなどの目安がありますが、ここから大きく遅れている場合、検診時に、「単純性言語遅滞」または「発達性言語発達遅滞」として、受診や療育(特性に応じた治療やトレーニングのこと)をすすめられることがあります。 ただ言葉の表出だけが遅れているのか、他に原因があるのかを確かめる手掛かりにもなりますので、すすめられたら受診するのがベストです。

 

「コミュニケーション」|心の発達とも関係が深い


子どもが言葉を話せるようになるには、「だっこしてほしい」「ジュースが飲みたい」といった要求や、「向こうにネコがいる」「バスが走ってきた」などの発見、「暗いところが怖い」といった感情などを伝えたいという欲求が後押ししている場合が多くあります。

 

しかし、生まれ持った障害により、他人に何かを伝えたい・他人の思いを知りたいという欲求が少ない場合では、あまり会話の必要性がなく、言葉の発達が遅れるのではないかと言われています。また、話せるようになっても、言葉を駆使してコミュニケーションを取るというよりは、一方的に話すだけだったり、オウム返しだったりということもあります。

 

こういった場合、言葉そのものの訓練だけをするのではなく、親子や先生・友達と触れ合って遊ぶことで相手への興味関心を育てたり、ペットの世話などを共有することでコミュニケーションの楽しさに気付いていくなどの働きかけをすることで、全体的な発達をめざすことが必要と言われています。

 

発達障害に関する診断や見分け方はインターネットでは解説することが不可能ですので、保育士さんともコミュニケーションを取りながら、専門家の意見を聞いてみることをおすすめします。

 

まとめ


なかなか言葉が出ない、お話ができない…という悩みは、急かさず声をかけ続けてあげることで「気づけばうるさいほどおしゃべりな子になっていた」という話がいくらでもあります。

 

その反面、なんらかの障害など(疑いも含め)がかかわっている場合、ママが一人で苦しんでいるよりも、専門家と力を合わせて、その子に合ったやり方を見つけることでぐんと成長できる可能性が高まります。

 

むやみに周りと比べるのではなく、子どもの気持ちを大切にしながらベストな接し方をしていきたいですね。

 

文/高谷みえこ

参考:スタンフォード大学研究論文