梅雨時のこの時期はニュースを見ていたら、雨風の猛威に不安になることも…。「その影響で避難所に行くなんて、考えたこともない」という声も聞かれます。避難所生活で困らないためにどんな服装で行って、何を持参するといいか、知っておきたい情報をママ防災士の上沢聡子さんが解説します。
女性が避難所に持ち運べるのは13~20キロ
雨が降りしきるなかで避難するには、身軽なほうが安全です。持ち出すものを増やすより、早めの避難をこころがけましょう。
基本的な考えは、「1泊分の着替えや軽食・飲料、必需品を持ち出す」ことです。
女性が持ち運べる重さは13~20キロまでと言われています(女性労働基準規則によると、成人女性が継続作業できる重量は体重の24%までか、20キロ未満。30代日本人女性の平均体重54~55キロより計算すると13キロまで)。
子どもを抱っこするなら、その分の荷物を減らす必要があります。両手が空くリュックは、お子さんと手をつなげるのでおすすめです。
ふだんのマザーズバックの中身をリュックに移し替えて、そこに追加で必要なものをたすイメージです。濡れて困るものは、ビニール袋で密閉しましょう。
イヤフォン、タオル、耳栓が欠かせない理由
リュックひとつに入る量を目安にすると、そう多くは持ち出せません。では、どういう基準で持ち物を選べばよいのでしょうか。
まずは、生活に必要なもの(1~2回分の軽食、着替え、歯ブラシセット、ウェットティッシュ、消毒液など各自の状況に応じて)。
次に、避難所では入手しづらいものを優先します。例えば、オムツやおもちゃが挙げられます。
以下、多くの人と過ごし、夜間も電気が完全には消えない環境を想定し、避難所で快適に過ごすためのグッズを対策ごとにまとめました。
電源・夜間対策:フル充電済のモバイルバッテリー、両手を空けるためのヘッドライト
子ども対策:おむつ、離乳食・ミルク、動画視聴のためのイヤフォン、音の出ないおもちゃ(ゲーム、折り紙、シールブック、本、あやとり、トランプなど)、抱っこひも、タオル数枚(寒さ対策、水を含ませて暑さ対策、アイマスク、寝冷え防止、汗取り、枕がわりなど使用方法は多岐に渡る)
安眠対策:耳栓、アイマスク
貴重品対策:斜めがけのバックやウェストポーチ、ポケットの多い服(常に貴重品を身につけるため)
防寒対策:上着やストール・タオルなど(最近の避難所はコロナ禍のため換気が推奨されていて、夏でも夜間は冷える)
健康管理のために母子手帳やお薬手帳を
短期間の避難とはいえ、慣れない場所でのストレスにより体調を崩すことがあるかもしれません。
体調不良への備えとして、常備薬、健康保険証、母子手帳、お薬手帳が手元にあると便利です。
特に、乳幼児の薬の処方量は体重によって決まるため、お薬手帳があるとスムーズです。
スマートフォンで母子手帳の分娩時の記録・予防接種歴やお薬手帳の最新ページを撮影・保存しておくと、受診時に参照しやすいです。
また、災害に伴い保険証を紛失または自宅等に残して避難する場合、健康保険証を提示できなくても加入している医療保険者情報(被用者保険の場合は事業所名、国民健康保険の場合は住所及び組合名)を伝えれば、保険診療を受けることができます(令和元年台風19号は発災当日に厚生労働省が通知)。
さらなる大規模災害の場合は、自己負担分の減免・免除措置がとられます。
通帳がなくても一定額まで預金は引き出せる
もし自宅が大きく浸水し、すぐに戻れない状態になると当面の生活資金が必要ですが、突然の避難の場合、通帳やキャッシュカードを持ちだせないことも多いでしょう。
大規模災害時は、災害救助法をもとに「金融上の特別措置」がとられ、顔写真付きの身分証で本人確認できれば通帳やキャッシュカードがなくても預金を引き出せます。
ゆうちょ銀行は1日20万円まで引き出せます。その他多くの金融機関も一定金額まで引き出せるところが多いのですが、対応については個別に確認が必要です。
何よりも命が大切です。通帳類を自宅に取りに戻って、洪水に巻き込まれては意味がありません。
ほとんどの書類は再発行可能なので、安全な場所への移動を最優先しましょう。
PROFILE 上沢聡子さん
小学1年生の子どもがいる防災士。「赤ちゃんとママの防災講座」主宰。大阪で阪神淡路大震災を経験。「第9回健康寿命をのばそう!アワード」母子保健分野団体部門厚生労働大臣賞優秀賞を受賞。
文/上沢聡子 イラスト/pum