いまや私たちにとって、身近な存在となったK-POP。メロディがなんだか頭に残って、気づけば鼻歌で歌っていたり、友達がK-POPアーティストのイケメンを推していたり、小学生の娘がK-POPダンスにハマっていたり。なぜ、そこまでブームとなったのか?

じゅりっこ

今回お話をお伺いしたのは、K-POPアーティストの振りつけ練習動画で人気急上昇中のYouTuber・じゅりっこさんです。

K-POPには、ちゃんとした「ハマる訳」がある

—— K-POPはなぜこんなにブームになっているのでしょう?

 

じゅりっこさん:

K-POPはメロディーがキャッチーで、覚えやすくつい口ずさんでしまいます。YouTubeでミュージックビデオを観ると、その曲ごとにわかりやすいコンセプトがあって、見ていてすごく楽しいです。

 

K-POPのミュージックビデオには「沼落ち」する要素が豊富にあると思います。例えば曲の中に急にラップパートが入ってきたり、 間奏でまったく違うメロディーが入ってきたり。邦楽よりも尺が短い曲の中にいろんな展開が盛り込まれているから、飽きずに最後まで観てしまうんです。

 

そして、映像もすごく作り込まれています。CGをたくさん使っていたり、衣装も一曲の中で何度も変わったり、セットがころころ変わったり。情報量の多さに「何があったんだろうこの瞬間に?」と思って、もう一回観てしまう。そうして2〜3回観ているうちに、曲にもハマっていって…。という感じで、みなさん沼落ちしていくのでしょうね(笑)。

じゅりっこ

—— ダンスもかっこいいですものね!

 

じゅりっこさん:

そうなんです、K-POPは歌もダンスもとてもレベルが高いので、ついぽ〜っと見入ってしまいます。かっこいいですよね。その一方で、ライブ配信などアーティストの素の姿が見えるコンテンツも多く、オンとオフのギャップにハマっちゃうんですよねぇ。気がついたら推しを見つけて追っかけてた、っていう人も多いのではないかと思います。

K-POPダンスは、今ドキの子ども達の「体験遊び」

—— キッズの間でもすごく流行っていますね

 

じゅりっこさん:

子どもたちが楽しむのは、純粋に「好き」なことだと思います。ごっこ遊びやなりきるのも好きですよね。例えば仮面ライダーが好きな子がベルトして「変身!」と遊んでいるように、K-POPを踊ってK-POPアイドルになりきることも、ひとつの遊び。なりきり体験ができるので、子どもたちにとって心が動くんだと思います。

じゅりっこ

—— 今の時代、ミュージックビデオなど手軽に観られますよね

 

じゅりっこさん:

SNSが普及して子どもたちがミュージックビデオに触れられる機会も増えて、より本格的になりきることができる時代になりましたね。お母さんたちにかわいい衣装を買ってもらって、画面の中のK-POPアイドルと同じような服を着て同じ曲を踊ることで、まるで自分がアイドルになって気持ちで踊れるっていうのが、子どもたちにとってはとても楽しいと思います。この小学生たちが大人になったら、どんなダンサーになるんだろう、と楽しみです。

K-POPダンス好きに人気のYouTubeチャンネル「じゅりっこ ダンス部」人気のヒミツ

—— じゅりっこさんはいろいろなジャンルのダンスの経歴をお持ちですが、なぜK-POPだったのでしょう?

 

じゅりっこさん:

K-POPダンスの振りつけが、とても魅力的だったから。実際に踊ってみると、K-POPのダンスがいちばん自分が「映える」振りつけだな、このダンスを踊ってる自分ってかわいいな、と思えて。

 

—— 同じジャンルの練習動画がたくさん出ていますよね、練習動画で差別化していることや気をつけていることはありますか?

 

じゅりっこさん:

私は動画を「とにかくダンスを楽しんで欲しい」という思いであげています。気をつけていることは、大きく3つあります。

1)楽しく観られること

2)見やすくすること

3)完璧であること

1つ目については、動画は画面越しになりますが、実際にこうやってお話しているみたいに、カメラの向こうに聞いてくれている人がいるイメージをもって発声をしたり効果音を入れたりして、楽しく観られる工夫をしています。「踊るんるん♪」「おつぷり!」など、合言葉を決めてみたりとか。ただ真面目に練習するだけじゃ、楽しくないじゃないですか。子どもたちやダンスをあまり踊ったことない人でも、楽しんでゲーム感覚で踊れるように工夫しています。

じゅりっこ

—— じゅりっこさんの動画、すごくわかりやすいです!

 

じゅりっこさん:

ありがとうございます。2つ目にあげた見やすくするため、という部分ですが、反転スローという方法を採用していて。通常ダンスの練習動画でよくあるのは、ダンススタジオで鏡の前に立って、カメラを斜め後ろから構えて映り込みを撮影するスタイルです。ただ、鏡越しの後ろからの映像だと反対側が死角になってしまう…。

 

当時、自粛で外になかなか出づらかったからこそ、どうにかしてダンスをみんなに伝えたい!という思いで、考えに考えた末に思いついたのが、反転スローでした。ちょっと大変ですが、同じ踊りを2回撮影して、前向きと後向きの2画面設定にしています。画面の向こうの人が、ちょうど鏡を見て踊っているようになると、練習しやすいかなとあみだした方法です。

じゅりっこ

—— ほんと、細かい部分まで解説してくださる印象です。そういうところも気をつけられたりしてますか。

 

じゅりっこさん:

はい、それが3つ目の「完璧であること」です。やっぱり本家のアーティストさんをコピーしたいって気持ちがみんないちばん最初にあると思うので、それを叶えてあげたくて。私も本家さんのことをすごくリスペクトしていますし、練習するみんなのこともすごく大切に思ってるので、それをうまく繋いであげたらなと思って、めちゃくちゃ細かいところにこだわっています。

 

完璧であることに関しては、本当に自信を持って、解説動画を作っています。

 

自分のダンス動画を披露しているだけのときは、ひたすら自分の感覚だけで踊っていました。それが練習動画を作るとなると、分析して、人に説明しなくてはなりません。自分の体の中に何が起きていて、どこに意識が向いていて、を人に教えるときは考えるんです。

 

覚え方も、まずは目でみて頭のなかで記憶して、記憶から司令をだしてあげると、脳に回路ができるんですって。右・左・上・下をひたすら覚えて、かたまりごとを合体させる。

 

例えば、電話番号をいきなり8桁覚えるのではなく、かたまりで覚えて最後に合体させる感じ。そうすると、比較的覚えやすいし間違いなく覚えられる…とか。自分なりのセオリーを、視聴者のかたにわかりやすく伝えたいなと思っています。

じゅりっこ

 

—— オンラインで教える大変さはありますか?

 

じゅりっこさん:

そうですね、人は背を向けられると集中力がきれちゃうと思うんです。だから、鏡に映り込みスタイルではなく、見ている人がまるで鏡を観ているように、対面式で振り付けを教えています。だから、反転スタイルになるわけです。反転スタイルと正転スタイル、どちらも覚えなくてはいけないので大変といえば大変なんですけどね(笑)。

 

—— ダンスはどうやって覚えているのですか?

 

じゅりっこさん:

ミュージックビデオはもちろん、ダンスの練習風景を載せてくださってる動画、さらに歌番組の動画を何個も観ます。 何個もある動画を自分の頭の中でどんどん組み合わせて、見えている部分を繋ぎ合わせて振りつけを覚えていきます。

 

とても地道で、時間のかかる作業です。K-POPの振りつけはすごく細かいので、指の形だったりとか、ちゃんと一つひとつに特徴があって。そこも、完璧に再現したいんです。 指1本でも違えば、本家さんと変わっちゃうんで。そういった細かい振りつけをちゃんと見るようにしています。

じゅりっこ

 

—— 努力の上で成り立っているのですね

 

じゅりっこさん:

そうですかね、ありがとうございます!

 

私はすごいこだわりが強いので…。ちょっとでも角度がヘンだと、何度も撮り直しをします。ダンス練習動画はひとりで撮影し、ひとりで編集をしているので、最初はかなり時間がかかっていました。今でこそ、少し慣れてきましたけれど。自分がよく踊れた瞬間をよく見せたり、解説動画もこう伝えたほうがわかるな、とか。なるべくダンスをやったことがない人にも楽しんでほしいので、たとえ話をいれたりとか。何をどういうふうに伝えたらわかりやすいかなと考えてながら、撮影しています。

 

それこそ、最初のころは「自分がかわいく見られたい」という気持ちが強かったから、解説動画を撮影するときにかわいいブラウスを着たりしていて。でも、ダンスを踊りたい人ってダンス自体を見たいのかな?と考え直しました。

 

最近では、髪の毛はまとめて、衣装はTシャツにジャージ。そして観ている人も自宅で練習しているだろうから、私も裸足で踊る。そういう細かいところも、飾らずに等身大で。とにかく、みんながふらりと動画を見つけてくださって練習しやすいような存在になれたら、という思いで作っています。

 

PROFILE じゅりっこさん

じゅりっこ

1996年生まれ。ダンス歴は20年(ジャズ20年、クラシックバレエ15年、ヒップホップ7年)。YouTubeチャンネル「じゅりっこ ダンス部」の登録者は13万人。流行のK-POP曲をほぼ全てレッスン動画にて公開し、反転と後ろ向きの2画面切り替えでとても分かりやすいとじわじわ人気に急上昇中。

取材・文/松崎愛香 写真/田尻陽子