3年ぶりに行動制限のないゴールデンウイークが過ぎ、マスクを着用しないでいい場面が政府から示されるなど、徐々にコロナ前の生活風景が戻りつつあるように感じます。経済が正常化していくかと思ったら、ロシアのウクライナ侵攻を背景にインフレ(物価上昇)へ。私たちの消費環境はどうなるか?インフレから家計をどう守ればいいのか?経済アナリストの森永康平さんが解説します。
いまだに回復しない日本の消費
私たちの「消費」について経済指標をみてみましょう。総務省が発表している家計調査は執筆時点で2022年3月分が最新のデータになります。3月というと21日にまん延防止等重点措置が全面解除された月です。
二人以上の世帯における消費は1世帯あたり30万7261円となっており、物価の変動の影響を考慮した実質ベースで前年同月比−2.3%となっています。
このデータを見ると、3月時点では依然として私たちの消費は冷え込んだままであることが分かります。
それでは、何に対する支出が低調なのでしょうか?コロナ前の2019年3月と比較しながら、消費支出の内訳をみていきたいと思います。
目立つのは飲酒代です。19年同月比−80.3%と大幅なマイナスに。
その他にはパック旅行費が同−64.7%、航空運賃が同−61.3%で、やはり3月時点では旅行に行ったり、居酒屋で飲んだりする消費行動はほとんど行われなかったことが分かります。
一方で、チューハイ・カクテルが同+50.8%、冷凍調理食品が同+42.8%と大きい伸びを示していることから、いわゆる「おうち時間」は依然として多く、各自が自宅でお酒を楽しんだり、手軽な自炊をしていることも分かります。
コロナが収束してもインフレで経済は低迷が続く
前述の通り、3月下旬にまん延防止等重点措置が全面解除されたため、消費のデータ自体は弱い数字となっていますが、4月以降のデータはそれなりに回復を示す結果となると考えます。
これは皆さんの体感としても、4月、5月と徐々に飲み会の機会が増えたり、近場に小旅行にいったりするなど、経済活動が再開した実感はあるかと思います。
しかし、このままコロナ前の状態まで一気に回復するとは考えにくいです。なぜなら、2月24日にロシアがウクライナへ侵攻したことを受けて、エネルギーなどの資源価格や、食料品価格が上昇しているため、全面的な値上げが家計を直撃しているからです。
総務省が発表した2022年4月の消費者物価指数は天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が前年同月比+2.1%となり、消費増税の影響を除けば13年7か月ぶりの水準となりました。
今回の物価高の主な要因であるエネルギー価格を除いても同+0.8%とプラス圏に浮上しました。せっかくコロナ禍の終わりが見えてきて消費が回復するかと思いきや、今度はインフレという別の問題が生じてしまったのです。
家計防衛にはプライベートブランドの活用を
それでは、どのように家計を守ればいいのでしょうか。コロナ禍、ウクライナ侵攻、上海のロックダウンなど物価の上昇圧力になりうる事象が多く、少なくとも年内は物価上昇が収まることは考えにくいため、給料が上がりにくい現状では家計に厳しい期間が続くことになります。
そこで注目したいのが、あらゆるモノが値上げされるなかで価格の据え置きを宣言しているプライベートブランドの存在です。
西友のプライベートブランド「みなさまのお墨付き」は食料品や日用品の約1200品目の価格を6月末まで据え置くと発表していますし、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」も食品、日用品の約5000品目の価格を同じく6月末まで据え置くと発表。
経済全体のことを考えれば、家計が節約に走ることは必ずしも望ましい行動ではないですが、家計防衛という観点からはこれらの企業努力の恩恵を甘受するのもひとつの選択肢となるでしょう。
文/森永康平
参考/総務省「家計調査」2022年3月分 https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html
総務省「消費者物価指数」2022年4月分 https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html