マンガ『ウサゴク~極道、ウサギも極めます〜』(コンパス)を連載中の三上骨丸さん。ウサギと飼い主である極道のリアルな生活が描かれており、実際にウサギと暮らしている人たちからも大きな支持を得ています。それもそのはず、三上さんご自身がウサギのトリコになっているのだそう。
嘘みたいなウサギとの出会い
── マンガでも描かれていらっしゃいますが、最初、ウサギと出会ったのはどういうきっかけだったのでしょうか。
三上先生:
公園を歩いていたら、ウサギが柵にはまっていて、首だけ出した状態でいたんです。驚きました。動けないようだったので、カラスとかに襲われたら危ないな、と思って。近くにいたおじさんにも手伝ってもらって助けた、という感じですね。
── すごい状況ですね。
三上先生:
現実的じゃないですよね(笑)。僕自身も最初は「なんでウサギがこんなところに?」とびっくりしました。
そのあと、警察署や保健所に当たって迷子ウサギの届けは出てないか聞きました。ビラを配ったりもして、飼い主を探したんですが、特に反応はありませんでした。
おそらく捨てられたんだろう、と。かわいそうだなと思ったところもあって、そのまま面倒をみるようになったのが最初ですね。
そのときに、捨てられてるウサギが多いという話をいろんな人から聞きました。こういう現実があるのか、と。
ウサギのおかげで世界が更新された
── それまで生き物を飼われたことはあったんですか?
三上先生:
小さい頃、家に犬がいたんですけど、自分からはそんなに関わったことはありませんでした。その後はずっとひとり暮らしでしたし。
── そんな中、飼おうと決心したきっかけはどういったところだったのでしょうか。
三上先生:
一緒に過ごしてみたら、ご飯を食べる姿とか、家でリラックスしてる姿がやっぱかわいいな、と。
それから、保護した動物なので、何か病気をしていたらかわいそうだなと思って、動物病院に行ったんですけど、最初の動物病院で断られたんですよね、ウサギは診れないって。
── 小動物を診てくださる病院って限られているんですよね。
三上先生:
そうなんです。診れない動物病院があるということがすごく驚きでした。
それで、小動物を得意にしている病院が近くにあるから、と紹介していただきました。その病院で最初はウサギについていろいろ教えていただきました。
ウサギってにんじんやキャベツが主食だと思っていたんだけど、これから育ていくなら牧草を与えた方がいいですよとか、毎日の食事が大事だから普段、牧草をどれくらい食べているのか、糞はどうなのか、ちゃんと確認してあげてください、とか。
ウサギという生き物は知っていたけど、具体的なことは何も知らなかったんだ、という驚きがあったし、ちょっと面白かったというか。
こんなふうにこれまでの自分の世界が更新されることがあるんだ、と思ったんです。
そして、もっとウサギを知ることで、より強い絆が作っていけるのかな、と思ったのが一緒に暮らし始める大きなきっかけかもしれません。
一緒に暮らすシロちゃんは「お嬢様気質」
── いま、一緒に暮らしているウサギはそのときに拾った子なんですか?
三上先生:
最初に拾った子がモチちゃんと言って、その子が赤ちゃんを産んだんです。シロちゃんとクロちゃんっていうんですけど。ウサギに詳しい親戚にモチちゃんとクロちゃんは受け入れていただいて、僕はシロちゃんをそのまま育てています。
── シロちゃんと暮らす決め手はあったんですか?
三上先生:
シロちゃんがいちばん気難しかったからですかね…。何て言うか、手がかかるほどかわいい、じゃないですけど(笑)。
でも親戚のおうちによく連れて行ってモチちゃん、クロちゃんと会わせています。僕もクロちゃん、モチちゃんを好きなんで。
ただ、シロちゃんが場所の移動にストレスをいちばん感じるタイプなんです。僕のところで落ち着いてたので、負荷はかけたくないし、ウサギさん自身にもよくないだろうと思ったというところが大きいですね。
── シロちゃんはどんなウサギさんですか?
三上先生:
ものすごく撫でられるのが好きで、何時間でもなでろ、という感じです。同じ部屋で過ごしているんですけど、僕が仕事をしているスペースのうしろにケージがあって。ちょっと放っておいてるとチモシー(牧草)の入ってる器をガシャンガシャン!と音を立てて遊んでくれー!って意思表示をするんです。
で、「ごめんごめん」って言って撫でるっていう感じですね。結構、お嬢様気質なんです。
── シロちゃんのスペースは部屋でどれぐらい占めているんですか?
三上先生:
少し、ウサギの方を多めにとっています(笑)。8畳あって、6畳はウサギさんのスペースです。その中でへやんぽ(部屋の中でお散歩の意)してもらっています。
── 6畳だと、ほとんどシロちゃんのスペース!
三上先生:
そうですね。やっぱりある程度は走り回れるスペースは用意してあげたいな、と。
あと、僕は必要最低限のスペースで十分だったので。成長していくにつれて走り回るスピードやジャンプ力が上がってきて、「もうちょっと広い方がいいかな」ってちょっとずつ広げているうちに僕のスペースがなくなりました(笑)
── そのほかにウサギと暮らすようになって生活は変わりましたか?
三上先生:
ひとりで生活してると、なかなかメリハリをどうつけるか、というのがあったんですけど、今はうさぎの時間、その後、仕事、またうさぎさんと一緒に遊ぶ時間…というふうにすごくバランスがよくなりました。
ずっと家で漫画を書いているので、ウサギさんのことを常に見ていられます。不調があったらすぐ対応してあげられますし。漫画家は意外とウサギと相性がいい職業かな、って自分では思っています(笑)。
PROFILE 三上骨丸さん
漫画家。2007年にジャンプスクエアにて『罪花罰』で連載デビュー。LINEマンガにて『ウサゴク~極道、ウサギも極めます』を連載中。作品に『ほねまる劇場』、『お恥美容室 サロン・ド・キリヒコ』、『当方桃太郎、全パート募集中』など。
取材・文/ふくだりょうこ