「妻が専業主婦なら、夫は外で家族のために稼ぐのが育児である」「だから夫は帰宅後や休日に家事や育児をする必要はない」という主張がSNSを中心に物議をかもしています。

 

これに対して賛否両論、さまざまな意見がありますが、結論からいうととてもシンプルなたった1つの結論に集約されるのではないでしょうか。その答えを紐解いてみました。

そもそも「外で稼ぐ=育児」論とは?

いま日本では核家族化が進み、家族で住んでいる世帯のうち80%以上が核家族(親子2世代のみ)となっています。

 

近所に頼れる実家がない場合、必然的に「夫婦2人で助け合って子育てをしていくもの」と多くの人が考えるでしょう。

 

しかし最近、

 

「専業主婦なら家事育児は妻の担当で、夫は外で稼ぐことがすなわち育児である」

 

という主張がSNSなどで時々見られるようになりました(一部では夫と妻が逆のパターンもあります)。

 

この「外で稼ぐのが育児」論に対して「それは違うのでは?」「もっともだ」など、いろいろな意見が出ています。

「外で稼ぐ」のは育児?育児中のママ・パパたちの声を聞いてみた

今回はこの「外で稼ぐ=育児」論について、現在育児中のママ・パパたちにアンケートを実施し、どう思うかを聞いてみたところ、以下のような声が寄せられました。

 

「子供がいてもいなくても外で働きますよね。もし夫が育児のつもりで外で働いてるとすれば、子供がいなかったら就職せず家にいるんでしょうか?」(Oさん・会社員・6歳児のパパ)

 

「なかなか育児に関われなくてごめんという夫に対して、妻が稼ぐのも育児のうちよ、とフォローするのは分かるけど、夫の方から堂々と言ったり、それを理由に育児から逃れたりするのは違うんじゃないかな」(Tさん・パート・3歳児と1歳児のママ)

「夫婦の合意で役割分担するのは自由だと思います。ただ、それなら、平日は夫は外で稼ぎ妻が家事育児をする、そして土日は2人で家事育児をする…じゃないとおかしいですよね。そうしないと夫週休2日、妻週休0日になっちゃうし」(Wさん・公務員・5歳児と2歳児のママ)

 

「育児というからには、子供がどう感じているかが大事ですよね。もし週末に、パパ公園に連れてってと頼んだとき、パパは外で稼いでるからね~という理由でスマホいじって相手せず、仕方なくママが連れて行く…みたいな繰り返しだったら、それで育児していると言うのは無理があるのでは」(Jさん・専業主婦・3歳児のママ)

「外で稼ぐのだって育児」の背景にあるもの

ところで、この「外で稼ぐ=育児」発言の背景にあるのはどのような心理なのでしょうか。

 

出産は女性の身体に交通事故で重傷を負ったのと同じレベルのダメージを与えるといわれます。

 

そんな中で、忙しくても睡眠不足でも子供には精一杯笑顔で対応して、フラフラで家事育児をしてもひとことも感謝やねぎらいの言葉がなかったらとても悲しいですよね。

 

同時に、職場で理不尽なことで責められたり重圧のすごい仕事を担当して逃げ出したくなっても、家族のために耐えてがんばっている夫も、ひとことも感謝やねぎらいの言葉がないと思わず「自分だって仕事という名の育児をしているのに」と言いたくなってしまうのではないでしょうか。

 

もちろん中には、内心「家事育児は正直面倒だから妻に任せたい」と思って、仕事を理由に休日何もしなかったり、平日飲み歩いたりしている夫もいるでしょう。

 

また、専業主婦の妻が育児をしてくれるからこそ、自分は急な子供の熱で大事な会議や出張を取りやめることもなく仕事に専念できる…という事実を忘れている夫もいるかと思います。

 

子供にお金の大切さを教えるとき、「パパが一生懸命働いたお金だからね」と言うママは多いと思いますが、同じように「ママがおうちのことをやってくれるからパパも安心して働けるんだよ」と、パパも折に触れて子供に伝えるようにすると、子供もバランス良く理解できるのではないでしょうか。

結論:外で稼ぐのは「育児の一部」

さて、では結局「外で稼ぐ」は育児といえるのでしょうか?

 

いろいろな意見がありますが、育児か・そうでないかという二元論ではなく、外で稼ぐのも育児の「一部」と考えるのが一番シンプルだと思います。

 

夫婦で話し合い、給与収入を得る役割と育児を担う役割を分担したのであれば、子供の成長に不可欠なお金をきちんと稼ぐことはもちろん育児の一部だといえます。

 

ただ、それだけで100%とは決して言えません。

 

子供の気持ちを置き去りにせず、直接触れあって、この子はどんな遊びが好きなのか、何をしたら喜ぶのか、最近どんなことができるようになったのか…などをいつも気にかけてこそ「育児」ではないでしょうか。

 

もちろん、パパの仕事がハードなときは休日も無理せず休む、ママが疲れたときはパパが率先して子供と遊んだり世話をする、元気な時は全員で遊ぶ…というように、いつも家族のようすをお互い思いやりながら連携して子供の方を向くようにできれば、「外で稼ぐのも育児のうち」という言葉に対する違和感も消えていくのではないかと思います。

文/高谷みえこ
参考/厚生労働省 「政府統計 グラフでみる世帯の状況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h28.pdf