学校から出される定番の宿題といえば、ドリル。積極的に取り組めないお子さんには、どんなサポートをしてあげればよいのでしょうか。教育家・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生に聞きました。 

Q】学校の宿題をやりたくない子どもへの対処法

小学校低学年の子どもが、学校の宿題をやりたがりません。宿題は漢字ドリルと計算ドリルが中心で、頑張れば15分くらいでできてしまいそうな分量です。漢字ドリルは何度も同じ字を書くところが嫌で、計算ドリルは1ページの計算の量が多く、ゴールが遠くて面倒に感じているようです。椅子に座らせてもなかなか取り組みません。

 

宿題は勉強習慣をつけるためのもの、と聞きますし、せめて15分くらいは机に向かってほしいと思うのですが。学校のドリルが嫌ならば、他の市販の教材を用意して習慣づけたほうがいいのでしょうか。

計算ドリルは小分けにして「できる体験」のサイクルをつくる

宿題をスムーズに取り組むようになるには、「何とかなりそう」だという予感を持たせてあげることが大切です。

 

計算ドリルは、きっと見通しが立たなくなっているのでしょう。自分から取り組めない子はおそらく、今まで「できる」と思える体験を積み重ねることができなかった子。その「嫌だな」という感情の記憶を「大丈夫」という感情記憶で上書きしてあげることがポイントで、そのためには親御さんの関わりに少し工夫が必要です。

 

まず、1ページを1回でやりきるものと思い込まず、23回に分けて進めてみてください。例えば、最初は計算問題を2つだけ解いてみて、正解のときは丸をつけて「できてるね!次は3つ解いてみようか」と、少しずつ量を増やしながらテンポよく進めていく。不正解のときは「気をつけようね。次は1つ解いてみようか」と少しハードルを下げて丸をつけてあげる。

宿題に取り組む子

そんなふうに、3つ連続なら解ける、4つ連続なら解けると、「これならできる」というサイクルをつくってあげるのです。こうした関わりを1週間も続ければ、1ページを2回に分ければなんとか解けそうといった、見通しが立つようになると思います。

 

慣れてきたら「少しずつ丸をつけるのと、1ページ終わってから丸をつけるのと、どっちがいい?」とお子さんに聞いてみます。「1ページ終わってからでいい」と言い出したら、本人が自分で丸つけする練習を始めてみるのもいいと思います。

漢字ドリルは子どもの不快感に合わせた「努力の設計」を

漢字ドリルは少し悩ましいですね。お子さんに取り組む意思がないのではなく、何度も書く疲労感や不快感など、過去のネガティブな感情記憶がブレーキをかけている可能性があります。お子さんが大丈夫だと感じられるよう、切り替えてあげる必要がありそうです。

 

その際、どんなことが不快になっているのかを踏まえたうえで、対応してほしいと思います。子どもから発せられる「書くのが面倒」という言葉の裏には、さまざまな原因があるからです。

 

例えば、視覚機能が優位な子だと、漢字を見れば覚えられるから書くのを繰り返したくないのかもしれません。そんな子が、1行に何度も同じ漢字を書く宿題を出す先生にあたると大変です。

 

その場合は、例えば1行の真ん中に線を引いてあげましょう。同じ漢字をその線まで繰り返し書いたら、2行目にいって次の漢字をまた線まで書き、すべての漢字を書けたら最初の漢字に戻って2週目をこなす。そんな2段構成のイメージで進めるのです。変化をもたせることで気持ちの切り替えにつながり、記憶にも残りやすくなると思います。

漢字ドリル

身体感覚が強い子であれば、小さなマスに書き続けることがしんどいのかもしれません。こうした子はけっこういて、マスを大きくしてあげると気分良く書き始めてくれることも多いものです。

 

まずおうちで、マスがない白地のノートなどを使って本人に、思うがままのサイズで漢字を書いてみてもらってください。いくつかの文字を書いているうちに、お子さんがラクに書ける字のサイズがわかってくるでしょう。そのサイズに合わせたマス目を作ってあげれば、漢字の字体も意識しながらの練習がやりやすくなります。そうした見通しが立ちそうなら、担任の先生に「マスに収めるのが難しいようなので、段階的にマス目のノートに書けるよう家でも対応しますが、当面は白地のノートで練習させてもいいですか」と相談されるといいと思います。

 

このように漢字練習を嫌がる子には、その子なりの事情が隠れているものです。ですから、くれぐれも強制的に訓練させて習慣づけるという発想をしないこと。学習を強要する関わりは必ず失敗に終わります。お子さんが「やってもいいかな」と思える方法を探っていきましょう。

 

それを甘やかしだと言う人もいますが、決して甘やかしではなく、これはお子さんの立場に立った合理的な努力の設計です。設計が実行を生み、実行が達成感の体験記憶をつくり、その体験記憶が次の行動を生んでくれます。このサイクルを理解することが大切です。

 

先生からトメハネの指摘が入ると、真面目な親御さんほど早く修正しなければという焦りから、「ちゃんと書きなさい」とお子さんを叱ってしまいがちですね。その結果、漢字が嫌いになったという子は枚挙に暇がありません。先生の指摘は指摘として、お子さんにとってすぐに修正実行可能なのかどうかという「見守り」の視点は忘れないでください。

 

いきなりの改善は難しそうなら、おうちでは専用のノートで漢字練習に取り組み、成長が感じられる字が書けたなら、先生基準ではバツでも、親御さんの視点で「OK」を出してあげればいいでしょう。「だんだん丸をもらえるように一緒に頑張ろうね」と寄り添うところから始めることが大切です。

 

先生の赤が入った答案やノートをお子さんが持って帰ってきたら、「残念!来週は2つ赤が減るよう頑張ろう」と一緒に悔しがり、励ましてあげる。そして、赤入れがいっさいない答案やノートが帰ってきたら一緒にお祝いしましょう。そうやってチーム戦で対応すると、乗り越えやすいですよ。

 

トメハネについて先生とご家庭の方針が合わない場合、こだわりの強いタイプの先生だと相談してもお子さんの立場にたった指導修正はしてもらえないことも多いでしょう。トメハネについて厳密でありたい先生の考えにも一理あるのですが、すぐに完璧に書けるようになる子は限られています。先生を否定せず、「ママはOKだけど先生は違うんだね。いろんな考え方があるんだね」と言って、家庭では段階的な成長を認めてあげましょう。

 

PROFILE 小川大介さん

小川大介先生
教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。

取材・構成/佐藤ちひろ