1979年の発売以来、価格据置きだった『うまい棒』がこの4月に「12円」に値上げされるなど、食料品や日用品の値上げが続いています。電気・ガス料金など生活に必要なコストも価格が上昇中。これらの「値上げラッシュ」が、私たちの消費行動に与える影響を経済アナリストの森永康平さんが解説します。
5月に物価が急上昇するカラクリ
4月22日に総務省が発表した2022年3月分の消費者物価指数をみてみると、総合指数は前年同月比1.2%となっています。
「前年から1%ちょっとしか物価上昇していないのか」と思うかもしれませんが、これは500以上の調査品目から算出した物価指数。
モノによってはもっと値上がりしているものもあれば、値下がりしているモノもあります。
ここで注意しなくてはいけないのは、菅前政権が昨年4月に携帯電話の通信料を大幅に引き下げた影響で、現在は物価全体が1.5ポイントほど押し下げられた数値だということです。
つまり、5月に発表される4月分の消費者物価指数では、携帯電話の通信料の大幅な引き下げから1年が経過するため、この特殊要因による物価全体の押し下げ効果が剥落し、あたかも4月から物価が急に上昇したように見えるのです。
そのため、5月に入ると表面上の数字だけが取り上げられ、“物価が急上昇”という報道が過熱すると予想されます。みなさんには冷静に受け止めて欲しいと思います。
とはいえ、物価自体がジワジワと上昇傾向にあることは間違いなく、賃金もあわせて上昇しない限りは、私たちの懐事情は厳しくなる一方です。
円安が値上げ圧力を高める
それでは、この値上げラッシュはいつまで続くのでしょうか。
日本銀行が発表している「生活意識に関するアンケート調査(2022年3月調査)」によると、1年後の物価について「上がる」と回答した人の割合が8割を超え、具体的な数値として平均で6.4%上がる結果に。
4月28日には1ドル=130円台と20年ぶりの円安水準となり、食糧やエネルギーの多くを輸入に頼る日本にとっては、円安が国内の値上げ圧力を更に高める可能性があります。
たとえば、物価が1年で5%上昇したとしても、賃金が5%以上、上昇するのであればそれほど問題はありません。
しかし、日本では賃金がほとんど上昇しないため、この物価上昇が直接家計にダメージを与えてしまうのです。
コロナへの警戒が解けたとき消費の回復が始まる
まん延防止等重点措置が全面的に解除され、すでに1か月以上が経過しました。国内経済にとって、消費が一気に爆発してくれればよかったのですが、そうはいってない様子です。
日本銀行が発表している「地域経済報告」を読んでみると、飲食店などは依然として客足が遠のいていることが報告されています。
その理由としては足元でも依然として新規陽性者数が高止まりしているため、大人数での宴会が自粛されていることなどが挙げられています。
行動規制が解除されたあとも、各個人がいまだに新型コロナウイルスへの警戒を解いていないなかで、これまで見てきたように物価上昇が更に消費を抑制することになります。
そのため、日本国内における消費の本格的な回復はまだ先になると考えます。生活必需品の値上がりが進むなかで、私たちは支出を見直すなど、家計防衛が重要になってくるでしょう。
文/森永康平
参考/総務省「消費者物価指数」https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」https://www.boj.or.jp/research/o_survey/index.htm/#p90
日本銀行「地域経済報告」https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/index.htm/