子供たちが勝敗のある遊びやスポーツをした時、負けてもあっさりした反応の子もいれば、泣いて悔しがる子もいます。
勝ち負けにこだわるのは悪いことではありません。
でも、かけっこで負けそうになったら途中で泣いてやめてしまう、すごろくをひっくり返す、勝つまで何回もやり直するなど、強すぎるこだわりはママやパパも困ってしまいますし、周囲から孤立してしまうのでは…と心配になりますよね。
そこで今回は、4歳から5歳頃に特に多いといわれる「勝ち負けにこだわる子」の心理や、おすすめの対処法などを紹介します。
勝ち負けにこだわるのは悪いこと?
「勝ちたい」という気持ちが強いのは、スポーツをはじめとする競技・競争においてはモチベーション(やる気)が高まり練習を続ける原動力にもなるので、一概に悪いこととはいえません。
ただ、そのこだわりが強すぎて集団生活の中でしょっちゅうトラブルを起こしてしまうと、成績や評価が下がったり、周囲から避けられたりしてさみしい思いをするかもしれません。
また、本来は楽しいはずのゲームや遊び・スポーツなどが、負けるのがイヤという理由でまったく楽しくないものになってしまうのは本人にとっても辛いことですよね。
3歳・4歳・5歳児が勝ち負けにこだわる理由
子供の「勝ち負け」についての理解を「じゃんけん」で見てみると、平均的にグー・チョキ・パーの手の形を理解して作れる年齢は2歳7か月頃で、早い子は3歳台から勝ち負けの概念が理解できるといわれます。
一方で「負けてくやしい」という感情のコントロールや「自分が勝つまでやりたいけど、みんなは次の遊びもしたいから…」と他人の気持ちを考えた行動ができるようになるのは、個人差もありますが、おおよそ5歳頃までかかると考えられています。
そのため、トランプで負けそうになると放り投げてしまう、負けてかんしゃくを起こす…といった行動が3歳・4歳・5歳頃の子にもっともよく見られるのです。
「どうしても負けたくない」子供の心理とは
勝ちたい・負けたくないのは多くの子供に見られることですが、そのせいでいつもゲームや遊びに参加できなかったり、勝った相手に怒ったり、途中でやめてしまったりして成り立たないことが続くと心配ですよね。
こういうときの子供の心理としては次のようなものが考えられます。
- 先の見通しが苦手で「負けた場合」を予想できないため、いざ負けるとパニックになる
- 負けをゲームや遊びの範囲内だと捉えられず、自分の全人格がダメだと感じてしまう
- 気持ちの切り替えが苦手で、いつまでも悔しい気持ちが残っている
- 以前に負けた時の記憶が強く残っていて、同じ思いを味わいたくない
いずれも通常は成長とともに改善していきますが、他の子と比べて程度が強いと目立つため、親としては心配になってしまうかもしれません。
勝敗にこだわる子へのおすすめの接し方
勝ち負けがどうしても気になってしまい、周囲とのトラブルになりがちというお子さんには、どのような声かけや対応をしていくと良いのでしょうか?
おすすめの方法をいくつか紹介します。
まずは共感する
「1回負けただけだよ」「また次勝てるように頑張ろう」といった励ましの言葉はもちろん正しいのですが、勝負に負けてひどく怒ったり泣いたりしているときにはすぐに受け入れられないことも。
まずは「勝ちたかったんだね」「負けて悔しいんだね」と、泣いたり怒ったりしている子供の気持ちを肯定・共感する言葉を先にかけてあげるのがおすすめです。
その後「でもすごくがんばっててかっこよかったよ」などの言葉をかけ、落ち着いてからであれば上記のような励ましも受け入れやすいでしょう。
負けたときの見本を見せる
身近な大人が、負けてしまったときのお手本を見せるのも良い方法です。
「負けちゃったけど楽しかった!」
とゲームや遊びそのものを楽しむ姿勢を見せたり、
「Aちゃん強いね、また今度一緒にやろうね」
と相手をほめるなど、負けてもこんな風に言えばOKという姿を見せてあげられると良いですね。
ほめ方を変える
今まで、勝ったときにだけほめていた……という場合は、少しほめ方を変えてみるのもいい方法です。
勝った時だけではなく、投げ出さずに最後までできたときや、負けてもかんしゃくを起こさなかった時に
「怒らずにがんばったね」
「最後までできてかっこよかったよ」
などの言葉をかけるのがおすすめです。
始める前にルールを説明する
遊びやゲームを始める前の気分が乗っているタイミングで、次のようなルールを伝えておくのも効果的です。
- みんなが「勝ちたい」と思っているんだよ
- 勝つときも負けるときもあるよね
- 負けて悔しいのはみんな同じだよ
- だから負けても怒らないようにしようね
- 勝ったときも、喜ぶのはいいけど、いばらないようにしようね
どうしても無理なら
もちろん、上記でもなかなかおさまらない子もいます。
またASDなどの発達障がいの診断を受けているお子さんでは、医師やカウンセラーから「こうでなければならない」というこだわりが強く0か100かで物事を判断しやすい特性を説明された人もいるかと思います。
こういう子に無理に競争させて負けに慣れさせるのは難しいばかりか、逆効果になってしまうことも。
本人の意向を聞いてみて、例えばカルタなら札を読む係をしてもらうなどの対応をしながら、様子を見て少しずつ勝ち負けのある遊びを増やしていくという方法もあります。
おわりに
感情のコントロールがまだまだ発展途上の子供たち。
家族でトランプやすごろくをしていて、負けそうになり泣き出してしまったり、札をぐちゃぐちゃにしてしまったりはどこの家庭でも一度は経験しているのではないでしょうか。
年齢や発達に合わせて適切なサポートをしながら、相手との勝負だけでなく、自分に勝つことの大切さも身につけていってほしいですね。
文/高谷みえこ
参考/独立行政法人国立特別支援教育総合研究所「発達検査」 http://forum.nise.go.jp/soudan-db/htdocs/index.php?block_id=477&page_id=0&action=multidatabase_view_main_detail&multidatabase_id=21&content_id=440
厚生労働省「幼児におけるじゃんけんの勝敗判断に関する発達段階の評価」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdp/30/3/30_142/_article/-char/ja/